うたかた

Mayuko Ukawa

空を見上げると
季節の移り変わりを感じる。

夕暮れに佇む都会の街並みは
ドラマチックに思えたし、
そういうものが好きだった。

けれどビルの隙間から垣間見える空は小さく、
主役を引き立てる背景紙のようなものでもあった。

数年前に海辺の街に移り住み、
海から徒歩数分の場所で暮らしている。
もちろん高層ビルなどはない。

自然に寄り添う暮らしは非常に興味深く、
私にとっては驚きの連続であった。

砂浜から見る空と海はあまりにも広く、
圧倒的だ。

寄せては返す波の、不揃いなリズム。
水面に揺れる光の筋が現れては消えていく。

私は、その光景を飽きることなく
眺めていられる。
波は遠いところから届くエコーのよう。

私たちがかつて羊水のなかで
見ていた光のような_
波間に揺らぐ記憶の断片を、
そのまま写し撮りたいと思った。

海の上に芒洋と横たわる空間が
刻々と表情を変えてゆく。
そこには昼の終わりと夜の始まりが
同時に存在していた。

どんな言葉を並べても陳腐に感じてしまうから、
私はいつもの場所からいつものようにシャッターを切る。
空は、それ自体は何の物質でもない空っぽな器にすぎない。

そのたおやかな造形美が、
自然が織りなす様々な要素によって
生み出されているならば、
自分という存在もまた
似たようなものかもしれない。

海辺を散歩しながら そんな事を考えている。

鵜川 真由子

鵜川 真由子

⼤阪府出⾝。広告や雑誌など商業写真の分野でポートレイト撮影を中⼼に活動する他、レビュアーや審査員も務める。またパーソナルワークとして都市と⼈との関わりに着⽬し作品制作を続けている。個展やグループ展など多数開催。主な作品に・個展『Out of the Garden』 (キヤノンギャラリー / 2013年)・ 個展『Rhapsody in Blue』(キヤノンギャラリー / 2017年)・個展『LAUNDROMAT』(富⼠フイルムフォトサロン /2021年)・新鋭展『WONDERLAUND』 (⼊江泰吉記念奈良市写真美術館/ 2022年)・個展『PORTRAITS』(PLACE M / 2023年)・個展『海辺のカノン』(ふげん社 / 2025年)・個展『組曲』(Creative Space Akademeia Harajuku21 / 2025年)、写真集に『WONDERLAUND』(私家版 /  2021年)・『海辺のカノン』(case publishing / 2025年)などがある。