NiSi V6 エクスプローラーND1000 / SONY α7R III, SONY FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS SEL100400GM, 74sec., F11, ISO 100
お話を伺った人:打矢晶一さん
北海道在住の打矢晶一さんは、釧路を中心に風景写真を撮影する写真愛好家。ご自身が「朝活」と呼ぶ、出社前の早朝撮影など積極的に活動しています。当初はスマートフォンで記録する程度だったという打矢さんが、様々なフィルターを使いこなすようになるまでの過程をお伺いしました。
フィルターを使い始めたのはどんなきっかけでしたか? また最初は何のフィルターを選びましたか?
北海道在住なので、きれいだなと思った景色をスマートフォンで撮ることはありました。あるとき、友人に鶴居村(タンチョウヅルで有名)に天の川を撮りに行くからと誘われて出かけたんですが、そこにはカメラでなければ撮れない世界が広がっていました。
これはカメラを買わねば!
そう思ったときに、何年もカメラをやっている友人に「どうせ買い換えることになるのだから、最初からいちばんいいのを買えばよいのだ!」と背中を押され、SONY α7R IIIを買いました。
当時は、カメラを2台持って撮影している人を見ても、その意味がわからなかったんです。でも友人には「必ず2台、3台目が欲しくなる」と言われて。いい友人なのか、悪い友人なのかわからないですね(笑)
でも、実際に写真を撮るようになってみると、朝はどんどん陽が昇って、夕方はあっという間に陽が沈んでしまう。レンズを交換していては間に合わないんです。やっぱりカメラ2台は必要ですね。
そうしてカメラを持って写真を撮るようになり、友人がNiSiのソフトGND8をよく使っていたことで興味がわいて、明確な目的はなかったのですが、まずはV6ホルダーキットを購入しました。
フィルターワークはどのように身に付けましたか?
実は、買ったはいいものの最初は使い方がわからなくて、見よう見真似でフィルターワークを始めました。ソフトGND8はとても使いやすく、ミラーレス機ではすべての設定が反映された像を見ることができるので、朝日や明暗差の大きなシーンでも最初からイメージ通りに画を作り込むことができます。最初はこのGND8をかなり使いましたね。初心者でもあまり深く考えずに使えるくらいに使いやすいので、常に使っています。
最初の数ヶ月は使い慣れていないせいもあって、現場でホルダーをレンズに装着するときにさえ慌ててしまい、落としてしまったことも何度もありました。夕陽のロケーションで、フィルターの濃度を変えるとき、テンションが上がりすぎたせいで手元が狂い、目一杯高くした三脚からND64が落下……。割れなかったけれど、周りが振り向くくらいの音でした。幸運なことに、いまも使えているんですよ。
実際に撮影した画を見たときの感想を教えてください。
NDフィルターを使った長時間露光は、肉眼で見ている風景とは違った光景を作ることが可能で、「誰も見たことのない景色」を表現することができることに感動しました。フィルターを使って、この感動を味わったことで撮影にますますハマっていきましたし、これまでなら晴れた日を選んで出かけていましたが、あえて曇天を狙うようにもなりました。いまでは荒天の方がワクワクします(笑)。何も見えないんじゃないかと思うようなシーンでも、トライするようになりましたね。
NiSi V6 エクスプローラND64+GND8 / SONY α7R III, SONY FE 24-70mm F2.8 GM SEL2470GM, 20sec., F22, ISO 100
現在よく使うフィルターは何ですか? また、どんな風に撮影していますか?
いまではソフトGND8の調整で、ND64、ND1000を使うようになりました。
これまでなら、こんなときには撮らなかっただろうなという曇天でも、フィルターを使うことで雲が流れ、長時間露光にすっかり魅了されてしまったんです。朝活で撮影に出たら、練習をかねてずっと撮影していました。
昨年から月に一度くらいの頻度で出かけていた朝活も、今年に入ってからは出勤前に行ける朝4時、3時台後半の日の出を狙って、週に数回出かけています。
曇天を選んで出かけても、摩周湖などで雲海が出る条件は厳しく、通わなければ撮ることはできません。0時に起きて身支度をし、深夜2時前に着いて撮影を開始します。4時半から5時くらいには一度帰宅して、それから出勤。遠いところへ撮影に行った場合、そのまま出勤することもあります。いわばエクストリーム出勤ですね(笑)。
毎回アタリが引けるわけではありませんが、次はどんなすごい光景が待っているのだろうと思うと、また通ってしまう。撮影がうまくいけばそのテンションで1日調子もよく、私は「仕事もはかどるNiSiフィルター」と呼んでいます。
撮影した写真はどのように公開していますか?
撮った写真はコンテストに出すこともありますし、それ以外の写真はTwitterに投稿しています。
自分がとても気に入ったものは大伸ばしのプリントにするのですが、実は昨年、地元のフォトコンテストに応募するために初めてプリントしたんです。それまではプリントのことを考えておらず、自分の構図で目の前の光景を撮っていただけだったのですが、プリントすると周辺がカットされてしまうということを学び、プリントも考慮した撮影をするようになりましたね。
これから挑戦してみたい被写体や撮影方法はありますか?
今年は北海道の冬のジュエリーアイスの撮影をしたいと思っているんです。昨年はそんなにジュエリーアイスがあがらず、二度しかチャレンジできなかったので、波打ち際をなめるような構図で長時間露光にチャレンジしたいですね。やはりそんなときにフィルターは必須です。
北海道の冬は、撮るものがたくさんあります。冷えてさえくれればなんでも被写体になりますから。昨年は気づくことができなかった冬の被写体たちに今年は積極的にトライしていきたいです。
私自身の撮影は、摩周湖のような景勝地だったり、有名な場所が多いのですが、誰でもいける場所、誰でも知っている場所で、私の写真を見た人を驚かせるような景色をとらえることができたらいいなと思います。さらに北海道の魅力を感じてもらい、行ってみたいなと思ってもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。
使用機材
カメラはSONY α7R IIIとα7R IV使用。100mmシステム V6ホルダーキットと100mmシステムの組み合わせで使用している。エクスプローラーGND8、ND64、1000をメインに、リバースGNDやナチュラルナイトも併用する。
打矢晶一 Uchiya Shoichi
北海道釧路市出身。事務機器販売店に勤務する傍ら、出勤前の「朝活」で積極的に撮影活動を行う。日々の写真をTwitter(@ucchi946)にアップし、フォトコンテストでの受賞も多数。