NiSi V6 Reverse nano IR GND8 / Nikon D850, TAMRON 17-35mm F/2.8-4 Di OSD Model A037, 10sec., F11, ISO 100
お話を伺った人:横田進士さん
長野県在住の横田進士さんは、山岳・風景写真、動画配信など幅広く活動されています。カナダ・バンフ国立公園を収めた風景写真を見たときの感動を胸に、カナダでのワーキングホリデーを経験した横田さんは、そこでNiSiのフィルターと出会い、写真で「表現」することに目覚めたと言います。そんな横田さんにお話を伺いました。
山岳写真を中心に風景を撮影されていますが、フィルターを購入したきっかけはどんなことでしたか?
カナダの写真家・Paul Zizka氏の写真に憧れがあり、ワーキングホリデーに行く際に行き先をカナダに決めました。
それまで、旅行先でのスナップ撮影など、趣味として写真は撮っていましたが、 Paul Zizka氏がどんな風に撮影しているのか、深く考えたことはなくて、その美しい風景を撮るにはテクニックが必要なのだろうなと漠然と思っていました。
カナダ滞在中、レイクミネワンカに出かけたとき、フランス人の写真家のふたり組が、三脚を立てて、じっと動かず水面を撮っていたところに出くわしました。
一体何をしているかなという好奇心に抗えずに声をかけたところ、撮影したものを見せてくれました。そこには、鏡面のようにフラットで美しい水面に、ただじっと佇む流木が写っていたんです。
正直言って、衝撃を受けましたね。
それまで何の知識もなかった僕は、自身の腕やカメラのポテンシャルの限界かと思っていたのですが、彼らが収めた風景はフィルターなしでは撮ることができないものだと、彼らからNDフィルターというものの存在を教えてもらったんです。
雲や水の流れ、フラットな水面。
長時間露光で撮影されたその風景は、僕にとって、とても大きなインパクトを持っていました。
帰国後、フィルターを買おうとお店に行きましたが、当時は店頭に商品が並んでいなくて、インターネットを検索しました。いくつかの選択肢があるなかで、デザインと自分自身のインスピーレーションを信じてNiSiのフィルターを海外から取り寄せました。
その後、風景写真を意識して撮るようになったのですか?
実際にしっかり撮り始めたのは、カナダから帰国したあとです。僕は長野県出身で、自分の周りに被写体として素晴らしい景色がいくらでもあるんだなと気づきました。上高地や白馬あたりは、カナダのバンフにとてもよく似た雰囲気を持っていて、僕自身の故郷への愛着もあり、これはもう風景写真を撮らない理由はないなと思ったんですよね。
実際にフィルターを使って撮影したとき、まず何を使いましたか? また、撮影してみてどんな風に感じましたか?
最初はNDフィルターから始めました。フィルターを使った撮影を始めてから、写真のうえで時間の流れを自由に操れるようになったと思いました。
撮った写真を見て、「雲が流れてる!」という純粋に感動しましたね。
それからは、すっかりハマってしまって、ただそれを撮るためだけに撮影に出かけていました。
当時、ブラケティング撮影を行ったうえでブレンドするような、HDRなどの撮影テクニックについて知識がなくて、風景を撮っても輝度差があると空が白飛びしてしまったり、うまくいかないこともありました。
そういうときにはGNDフィルターを使うと悩みが解決され、とてもナチュラルな写真が撮れるようになって、本当に感動しましたね。「表現の幅が広がる」ということが単純にとても楽しかったし、それまであきらめていたシーンにトライできて、いままでできなかったことができるようになって、表現の選択肢が増えるのを実感しました。
実は、使い始めたばかりのころは、携行時にフィルターを割ってしまうという失敗もしました。カメラバッグに入れて帰ってきたときに「ジャラジャラ」と音がして……。ND1000が粉々になってしまったんです。本当にショックでした……。でも、そのときの自分にとってどうしても必要なものだったので買い直し、いまはボックスタイプのケースに入れて携行しています。
フィルターを使った撮影というのは、通常の撮影にプラス、フィルターをセットする時間があるために、もちろん面倒くさい部分もあります。でも、その面倒くささが「楽しさ」でもあって、そういったところも含めて僕自身はとても楽しんで撮影していますね。
NiSi V6 Landscape NC CPL / Nikon D850, TAMRON 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD Model A035, 2sec., F10, ISO 100
フィルターを買う前と後で変わったことはありますか?
フィルターを使った撮影を始めた当初は、滝などの水場や渓谷などでの撮影が多かったのですが、フィルターを使い始めて、さまざまな撮影をするなかで、撮影スタイルにも変化してきましたね。いまはPLフィルターを使うシーンの撮影をすることが増えてきました。
森のなかや、夕暮れどき、朝の霧が立ち込めるようなシーン。 PLフィルターで光をコントロールする撮影です。
森は木の葉の一枚ずつに光の反射があって、いかに光のグレアをコントロールして、葉の色味とキラリとした反射を残しつつ、自分好みのテイストにするか、そこが楽しいですね。
もちろん長時間露光も続けていますが、雲の動き、どういう軌道が描かれるのかを現場で見たときに判断して、シーンを選べるようになりました。それはなりふり構わず長時間露光をしていたあのときの経験があったからこそかなと。
現在は100mmのCPLキットをメインで使っています。
装着した状態で携行していて、この状態で持ち歩けるのがとても気に入っています。キャップがあるのでとても重宝していますね。さまざまな製品を使ってみましたが、角型フィルターが常に必要ではない場合には、V6 アルファホルダーのように必要に応じてホルダーを装着すればいいというのはとても効率がいいんです。撮影のときは「待っていられない」シーンもありますからね。
NiSi V6 Landscape NC CPL+Nano IR ND64 / Nikon D850, TAMRON 35-70mm F3.5 Model 17A / 1.3sec., F22, ISO 31
これから、フィルターを使ってどんな撮影にチャレンジしてみたいですか?
フィルターを使うようになって、自分の写真表現の幅が広がり、これからはICM(Intentional Camera Movement)のような、よりアブストラクトな写真にトライしていきたいと思っています。
スローシャッターの応用でいろんなことができ、抽象画のような写真を作ることができるんです。デジタルならではの表現方法のひとつだと思います。
さまざまなシーンを撮影してきましたが、「どこで撮ったか」という情報ではなく、よりエモーショナルな部分が大事だなと考えるようになりました。広角レンズを使ったワイドビスタの風景写真ではなく、山の一部に光が当たっているところを切り取ったり、自分自身に鋭く刺さってくるようなところを撮るようになってきて、場所の情報を作品として知らせるのではなく、自分がいちばん感動した景色を撮りたいと思うように撮影スタイルが変化してきました。
ある意味ではスローシャッターに戻ったわけですが、よりアブストラクトな世界、ファインアートを突き詰めていきたいです。
そのためにはPLフィルターが大きな鍵を握っていて、PLフィルターでいかに立体感、空気感を出せるかが大切になってくると考えています。
僕にとって、安心、そして確実に使えることがNiSiの製品を選ぶ理由です。
使用するためには少し面倒なところがあるかもしれません。でも、「確実」であることが良い結果を生んでくれますし、同じ機会が二度とない撮影環境のなかでは、信頼できる製品を使うことの安心感はとても大事だと思っています。
使用機材
カメラは「安心・信頼感」を優先し、Nikon D850をメインに、ミラーレス機のZ 7を使用。100mmシステム V6キットとの組み合わせで使用している。角型フィルターは必要に応じて装着し、ホルダーを装着した状態で携行する。
横田進士 Yokota Shinji
1989年 長野県出身。
2012年からカナダでのワーキングホリデーを経験。帰郷後、本格的に写真の道へ。風景写真家として国内の山々やアイスランドの風景を撮影。撮影した写真を発表するだけでなく、自身が運営するYouTubeチャンネル「fotoshin channel」において、撮影の様子や編集テクニック動画などを配信している。
関連商品
NDフィルター
スローシャッターにすることで水や人の軌跡を描いたり、肉眼では見ることができないような描写を写真表現に取り入れることができます。光の量をコントロールすることで露出、シャッタースピードの選択に柔軟性を与え、写真表現の幅を大きくひろげてくれます。
GNDフィルター
角型フィルターの上半分がND、下半分が透明になっていて、朝日や夕陽のようなダイナミックレンジが広い場面で、空と地上の明暗差のバランスを取るために使います。構図に合わせてフィルターをかける位置を調整することができるため、表現の幅をより一層高めてくれます。
PLフィルター
被写体表面の余分な反射やグレアを抑制したり、太陽光を偏光して大気のカスミを除去することで、より明瞭な像を得ることができます。水面や窓ガラスの反射を消したり強調したり、青空や霞んで見える遠景をより鮮明に写したい時などに使います。