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オールドレンズで「寄って」撮るテーブルフォト

オールドレンズで「寄って」撮るテーブルフォト

PENTAX K-1MarkⅡ, Super Multi Coated Takumar 50mm F1.4, 1/80秒, F2.8, ISO400, クローズアップレンズ使用

目次

お気に入りの3本のオールドレンズ

「テーブルフォト」は卓上に様々なものを置き、小さな世界を作り出して表現する「テーブル・トップ・フォト」の一般的な呼称です。スタイリング次第で自由に表現を盛り込むことができるのが楽しいところです。スタイリングと光の見極めさえうまくいけば、基本的にカメラとレンズは何でもOK。私はオールドレンズの空気感がとても好きなので、それを生かしたテーブルフォトも撮影しています。ボケや描写の荒さ、褪せた色合いや滲みなど、現行の高精細なレンズでは出すことのできない独特の雰囲気を醸し出せるのがオールドレンズの魅力です。

作例

オールドレンズは10本ほど持っていますが、とくにお気に入りなのは、

  • Carl Zeiss JENA Biotar 58mmF2(一番使用頻度が高いレンズ。少し青みが出る描写)
  • Super Multi Coated Takumar 50mm F1.4(王道オールドレンズ。黄色被りが特徴)
  • CANON FD 50mm F1.8(優等生レンズ。比較的スッキリした写り)

の3本です。しかしこのオールドレンズ、「寄れない」のが大きな難点……。組写真などにする場合、小物の一部にグッと寄ったり、引いて全体像を捉えるなど、緩急をつけた表現が必要になってきます。そこで威力を発揮するのが「クローズアップレンズ」。物にぐっと寄るにはマクロレンズが必要ですが、拡大鏡のクローズアップレンズをつけることで、オールドレンズをマクロレンズのように使用することができます。「お気に入りのオールドレンズで2つの画角を使い分けたい!」という欲張りな願いを叶えてくれるというわけです。

テーブルフォト撮影の基本的な流れ

テーブルフォトを撮るときは、基本的に次のような流れで撮影します。

STEP1 仕上がりのイメージを決める
いろいろなサイトや本などを見て蓄積したスタイリングイメージから、どのような雰囲気で撮るのか方向性を決めます。全体の印象を左右する「色」の組み合わせが重要で、ベースとなる背景色やスタイリングするものの色味をある程度決めてから、レンズを選びます。たとえば黄色被りしやすいSuper Multi Coated Takumar 50mm F1.4はアンティークな雰囲気が似合う、Biotar 58mmF2は少し色褪せたノスタルジックな描写になる、などレンズ毎に特徴があるためどの方向性に持っていくかで使うレンズも違ってきます。

STEP2 光を見る
基本的には窓際の自然光を使うことが多いです。しかし、もっとも見せたい場所に光を当てたくても自然光メインではうまく当たらないこともあるので、その場合はストロボを補助で追加することもあります。

STEP3 スタイリングをする
最初からキッチリとスタイリングを決めるというより、バランスを見ながら少しずつ調整していきます。イメージに合いそうな小物をかき集めておき、まずはボードの上でメインとなる被写体を中心に配置の大枠を決めてから、小物を足したり引いたりして構図を詰めていきます。小物の「質感」も重要で、スプーンやフォークなどのカトラリーをマットにするか光沢にするかで仕上がりの印象はかなり変わってきます。

STEP4 クローズアップレンズを使う
クローズアップレンズをつけない状態で引きで全体を撮影してから、魅力的な部分を見極め、クローズアップレンズをつけて寄ってみます。

スタイリング別/オールドレンズ+クローズアップレンズの撮り方

シーン1 アイスをBiotar 58mmF2でノスタルジーに切り取る

ガラスの器にアイスを入れて、ピンク系でスタイリング。溶けたアイスを散らして夏を表現しました。

作例

PENTAX K-1MarkⅡ, Carl Zeiss JENA Biotar 58mmF2, 1/160秒, F4, ISO400, クローズアップレンズ使用

スタイリングは最初からバッチリ決まるわけではなく、少しずつ足したり引いたりしながらベストな写真に詰めていきます。

1 ピンク系でスタイリングして撮ってみる

作例

PENTAX K-1MarkⅡ, Carl Zeiss JENA Biotar 58mmF2, 1/250秒, F4, ISO400

くすんだピンクの色が可愛らしかったので、背景紙も淡いピンクに。同系色を組み合わせるとふんわりした感じにまとまります。スタイリングに使ったカトラリーは、アイスより目立たないよう光沢のないマットな質感のものを合わせました。あえて1粒アイスを溶かし、それを紙の上で散らすことによって暑さの要素もプラスしています。
レンズはBiotar 58mmF2を使用。このレンズは豪快なグルグルボケが特徴です。そのグルグルボケをテーブルフォトで使うのは難しいのですが、Biotarはボケが硬く少し色味が青く出るのでスッキリした写りになると考えました。

2 クローズアップレンズを装着して撮ってみる

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次に、クローズアップレンズをつけて撮影しました。Biotar 58mmF2の最短撮影距離は約60cmですが、クローズアップレンズをつけることで、被写体ギリギリまで寄ることができました。どこかノスタルジックな浅い色合いに、溶けたアイスの儚い雰囲気が相まって何とも切ない感じです。

3 クローズアップレンズでガラスの容器の縁にピントを合わせてみる

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さらに最短まで寄ってみると、普段このレンズでは見ることのできない世界が見えてきました。繊細な弧を描くガラスの縁が美しい……。

ONE POINT クローズアップレンズのピントの合う範囲をチェック

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クローズアップレンズを付けてレンズのピントリングを無限遠位置にし、ピントが合わせられる広角側ギリギリの画角で撮影した写真。クローズアップレンズを付けると無限遠にはならず、ピントが合う範囲が限定されます。このくらい引いて撮るのも表現の一つ。

シーン2 スイーツをSuper Multi Coated Takumar 50mm F1.4でレトロに切り取る

ババロアとカットフルーツをガラスのお皿にのせて、透明なガラスのカップ&ソーサーと組み合わせました。Super Multi Coated Takumar 50mm F1.4で黄色味がかったアンティークな雰囲気に仕上げました。

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PENTAX K-1MarkⅡ, Super Multi Coated Takumar 50mm F1.4, 1/50秒, F2.8, ISO400, クローズアップレンズ使用

全体をスタイリングした時に、ソーサーの曲線の美しさが目にとまりました。寄り引きの両パターンを撮っておくと、バリエーションが広がります。

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PENTAX K-1MarkⅡ, Super Multi Coated Takumar 50mm F1.4, 1/80秒, F1.4, ISO400

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PENTAX K-1MarkⅡ, Super Multi Coated Takumar 50mm F1.4,1/80秒, F2.8, ISO400, クローズアップレンズ使用

1 アンティークにスタイリングして撮ってみる

Super Multi Coated Takumar 50mm F1.4は黄色く色被りする傾向にあるので、アンティークなテクスチャのボードを背景に選び、その雰囲気を活かせるグッズを組み合わせています。背景には同系色の布を配置。全体的に少しくすんだ色合いの中でキラッとしたアクセントになるようにカトラリーは光沢があるものを選びました。
全体カットのメインに置いたババロアとカットフルーツは、クローズアップした時のシズル感が欲しかったので、あえて形を崩して盛り付けています。撮影中ある程度時間が経っても乾燥せず、溶けていくことによってシズル感を増してくれる冷凍フルーツを組み合わせたのもポイントです。

2 ガラスのソーサーの模様に寄ってみる

全体を撮影した中で、魅力的に見えた部分の一つがソーサーの曲線でした。50mm画角だと主役になりにくい小さな被写体でも、クローズアップレンズをつけて違う視点から撮影すると主役にすることができます。最初はサブの被写体として組み合わせたティーカップでしたが、クローズアップレンズで寄ることで組写真にしてもアクセントになる1枚になりました。

シーン3 FD 50mm F1.8 で女子の小物をクリアに切り取る

祖父から受け継いだFD 50mm F1.8 は、スッキリした描写の優等生レンズ。自然光と戦いながら、女性が使うものを集めたキラキラしたスタイリングでまとめました。

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SONY α7RⅢ, Canon FD 50mm F1.8,1/1600秒, F2, ISO100, クローズアップレンズ使用

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SONY α7RⅢ, Canon FD 50mm F1.8, 1/500秒, F2, ISO100, クローズアップレンズ使用

窓際に小物を置いて自然光ライティング。光の位置に注意しながら、魅力的な部分を見極めていきます。

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1 SONY α7RⅢ, Canon FD 50mm F1.8, 1/500秒, F1.8, ISO100

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2 SONY α7RⅢ, Canon FD 50mm F1.8, 1/1600秒, F2, ISO100, クローズアップレンズ使用

1 自然光とアクセサリーのキラキラからゴールドをベースカラーに

アクセサリー類などの細かいものは、レンズのボケ方によっては画角内で目立ち過ぎてしまい、視線が引っ張られてしまうことがあるので、スッキリした描写のFD 50mm F1.8 を選びました。自然光、ピアスのキラッとした感じ、時計のブレスレットの輝きから、メインカラーはゴールドに。ピアスの色に合わせて、ブルー系と赤系のネイルを取り入れました。この日は曇ったり晴れたりの天気で、自然光との戦い! 窓の格子が斜めに入る時間帯を狙って撮影しています。

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自然光と窓の格子の影がうまく入る時間帯が勝負。撮影と位置調整と画角決定のスピードが大切です。見せたい部分に光が当たるように位置を調整します。繊細なアクセサリー類を邪魔しないシンプルなグレーのボードを背景に選びました。

2 クローズアップレンズでそれぞれの小物に寄る

2の写真では、クローズアップレンズをつけてピアスとネイル、ヴィンテージの時計にそれぞれ寄って撮影しました。見せたい場所に自然光が当たるよう意識して位置を調整しています。変なボケの主張もなく、スッキリしたカットに仕上がりました。


ニシダ ヨリコ

フリーランスフォトグラファー。写真館で6年間勤務しながら写真の基礎を学び、その後独立。キッズ、ライヴ・舞台撮影の他、ストロボライティングの講師でも活動中。趣味では創作ポートレートやコスプレ撮影なども行なっている。

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