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フォトグラフィックモーションの撮り方  第2回

水滴が揺れる、その一瞬に時間を足す | 鎌田風花さん

目次

写真の静けさと、動画のわずかな動きをとらえた表現、フォトグラフィックモーション。
カメラを構えて、世界の「かすかな変化」に集中する。そこに写るのは、風の気配だったり、光や水のゆらぎだったり、時間の流れだったり。動画ではあるけれど、フォトグラフィックモーションは「写真」の延長にあります。
フォトグラフィックモーションの魅力を探り、撮り方をお伝えするこの企画、第2回は、鎌田風花さんがマクロレンズでとらえた水滴の世界をお届けします。

写真に写らない揺らぎに、時間を足す 

−撮影のきっかけ
撮影場所は、よく訪れる神戸の布引ハーブ園です。撮影時は時折雨が降っていて、撮影にはあまり向かない天気でした。せっかくなら雨らしいシーンを撮りたいと、マクロレンズで水滴の写真を撮影していると、レンズ越しに玉ボケがきらきらと揺れていることに気づきました。その揺らぎをファインダーにおさめるには、一瞬を切り取る写真ではどうしても伝えきれず、構図はそのままにして、数秒だけ動画を回してみました。「動画を撮る」というより、「写真に少しだけ時間を足す」という意識で撮影しています。

静止画の延長にあるフォトグラフィックモーション

−撮影の考え方とポイント
水滴のマクロ撮影から数秒動画を回した形なので、写真撮影時と機材は同じ。Nikon ZfとNIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sで撮影しました。動画撮影はシャッター速度が速すぎると動きがカクカクしてしまうので、表現で絞りを開けたいときは、露出をおさえるためにNDフィルターが必要になります。三脚は使わず、すべて手持ち撮影です。

天気は曇ったり光が差したりと明るさがコロコロ変わり、風も少しある状況でした。絞りはかなり開けて蜘蛛の巣の水滴が作る玉ボケに大きさの違いを作り、奥行きが感じられるように。また、正面からではなく斜めの角度から狙うことで、前後に距離が生まれて玉ボケが立体的に見えるようになります。写真として成立する構図を大切にしながら、動きが加わったときに、より揺らぎが感じられる画面を意識しました。
電子手ブレ補正は歪みやクロップが出やすいためオフにし、ボディ内手ブレ補正のみを使用しています。安定させるために息を止めて撮ることが多く、三脚を立てる時間がない一瞬のシーンこそ大切にしたいと感じています。

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三脚を使わず背の低い植物を撮影するときは、しゃがんで膝を使い腕を固定するとブレにくいです。

〈撮影設定〉

動画モードで撮影しています。前回撮影した動画の設定が呼び出されるので、ほぼカメラ任せ。静止画と動画の差は、NDフィルターをつけるくらいです。

カメラ Nikon Zf
レンズ NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S
撮影モード 動画モード
動画ファイル形式 H.265 8-bit (MOV)
縦位置で撮影 (3840×2160(16:9))
フレームレート 60p
シャッタースピード 1/125秒
F値 F4.5
ISO感度 200
撮影秒数 9秒
撮影 手持ち撮影
手ブレ補正 ボディ内手ブレ補正のみ
電子手ブレ補正 オフ
ピクチャーコントロール カメラ内設定(N-Log・RAW未使用)
フィルター 可変ND使用(NiSi / True color ND VARIO)

ワンカットの動画を整える

−編集と仕上げ
複数カットをつなぐ場合はダビンチ・リゾルブを使いますが、フォトグラフィックモーションのようにワンカットの場合は、SDカードからパソコンに移し、そのままSNSに投稿することも多いです。ただ今回は、揺らぎのスピードを少し落ち着かせたかったことと、写真と一緒に投稿するため雰囲気を揃えたかったことから、インスタグラムのEditsで軽く調整しました。
速度は0.7倍にして、繰り返し見られるよう約5秒のループ前提の尺に整えています。露出やコントラスト、彩度は微調整にとどめました。リールではなく通常投稿を想定し、事前に3:4で切り取りをしています。音については、園内のBGMなど入ってほしくない音があったためミュートしました。無理にBGMを付けず、映像そのものをしっかり見てもらうことを優先しています。

Editsで仕上げる、最小限の編集

Before|編集前
玉ボケがきらきらと揺れていることは感じられますが、揺らぎのテンポがやや早く、視線が落ち着かない印象も残ります。

After|編集後
揺らぎの速度を少し落とし、繰り返し見られる約5秒のループに整えました。写真と並べたときに違和感が出ないよう、明るさや色味はごくわずかに調整しています。

編集の流れ

① Editsに動画を取り込む
Editsアプリを開き、編集したい動画を選んで取り込みます。

②「切り取り」で3:4にする

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動画は16:9なので、サイズを揃えます。リール動画ではなく通常投稿をしたかったので、3:4で切り取り、バランスを整えます。


③ 速度変更(スロー)

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揺らぎの落ち着いた雰囲気を出すために、少しゆっくり目の0.7倍速に。繰り返し見られるように5秒の動画にします。


④ 「調整」で調子を整える

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インスタグラム投稿の際、2枚目に写真も一緒に載せたかったので、雰囲気が揃うよう調整。元動画だと少し暗めに感じたので、露出、コントラスト、彩度を調整します。


⑤ 保存する

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完成したらエクスポート。このままインスタグラムにシェアするとリール投稿の画面にいってしまうので、一度デバイスに「ダウンロード」して投稿しています。

ワンカット動画は、ストーリー性のある映像に比べると反応が少ないのではと感じることもありますが、ループ再生を前提にすると、途中で終わらない心地よさが生まれます。長い尺で見せるよりも、構図が崩れない短い時間に、小さな動きだけを閉じ込める。その感覚は写真ととても近いと感じます。何度も試しながら、「惹きつける瞬間」を選んでいくところに、フォトグラフィックモーションの面白さがあると感じています。


鎌田風花

兵庫県神戸市在住。2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、日々の小さな幸せを写真で表現することを大切にしている。家族写真の出張撮影や写真セミナーの講師、レンズのカタログ撮影など広告撮影も手掛ける

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鎌田風花