夏場の硬い光をやわらげる / Allure Soft
どちらも「ソフトフィルター」にカテゴライズされる「ブラックミスト」と「Allure Soft」。効果としては近しいものの、写真表現におけるその違いは小さくありません。女性ポートレイトや家族写真をはじめポートレイトで幅広く活躍する写真家・コハラタケルさんに、2つのフィルターを比較しながらAllure Softについて解説していただきました。
「Allure Softが気になるけど、ブラックミストとの違いがわからない」
ブラックミストに比べ、Allure Softに関してはまだまだ認知度が低く、どういう効果があるのかわからないという意見を聞きます。
そこで今回はブラックミストとAllure Softの比較作例を見せるとともに、僕が好きなAllure Softの特徴と使い方について解説していきます。
実は事前にTwitterでアンケートを取ったところ、ほぼ同票という結果になりました。1枚目と3枚目がブラックミスト1/4、2枚目と4枚目がAllure Softです。
※返信の写真を見て欲しいです。
— コハラタケル (@takerukohara) August 1, 2021
ソフトフィルターを2種類使用しています! あなたはどちらの写真のほうが好きですか?
— コハラタケル (@takerukohara) August 1, 2021
もちろんこの投票だけで判断するのは難しいのですが、認知度が高いブラックミストと同じぐらいAllure Softの表現も好きな人がいることを確認することができました。
しかし、人というのは自分が知っているものに安心感を覚えるもので、認知度が低いAllure Softよりもブラックミストを使う人が多い傾向にあります。
フィルターなし・ブラックミスト 1/4・Allure Soft 比較作例
解説する前にまずは効果の違いを写真で見ていただいた方が早いと思います。F値、シャッタースピードなどのカメラの設定はもちろんのこと、現像も露光量やハイライトの数値など同じ設定にしています。
フィルターなし
ブラックミスト 1/4
Allure Soft
フィルターなし
ブラックミスト 1/4
Allure Soft
フィルターなし
ブラックミスト 1/4
Allure Soft
フィルターなし
ブラックミスト 1/4
Allure Soft
どうでしょうか。まだ違いがわかりづらい人もいると思いますので、もう少し細かく解説します。
ブラックミスト 1/4
Allure Soft
僕がふたつのフィルターを使っていて感じる違いは下記の通りです。
こうして見てみると、意外と両者が大きく違うことがよくわかります。
先ほどの比較写真を見ていただけるとわかるようにコントラストが違います。ブラックミストは弱く、Allure Softは強いです。強いとだけ書いてしまうと、語弊があるので補足するならば、Allure Softは”コントラストを維持”してくれます。服の色を見てください。ブラックミストのほうが青色が薄く、Allure Softの方が濃く出ています。グロー効果に関しても、髪の毛の部分や顎から首のラインを見ていただけるとわかりやすいのですが、Allure Softのほうが強い輝度部に対して効果が強く出ています。また、シャドウ部分に関しても、Allure Softは黒が引き締まったままです。僕はコントラストが強い表現が好きなので、Allure Softを使う機会のほうが多いです。
強い逆光ではなく弱い逆光を狙う
僕が意識しているのがAllure Softを使っているけれど、その効果を大きく出さないような撮り方にしています。ソフトフィルターは基本的に光源が画面に入っていると、その部分に効果が現れやすいです。とくにAllure Softは光源周辺のハレーションが目立ちます。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F2.8, 1/90秒, ISO800
僕はAllure Softを使用してはいるのだけど、効果そのものは弱く写真に影響するようにして撮影する場合が多いです。上の窓の外の光源がたくさん入っている写真に比べ、下の写真は窓の外の光源を画角に入れないことで、Allure Softを使っているんだけど、ハレーションの演出を写真に出さないようにしています。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F4.0, 1/90秒, ISO800
意図的な演出で夏の蒸し暑さを表現
先ほどの話とは矛盾しているように聞こえる人もいるかもしれませんが、僕はAllure Softの効果を強く出さないのが好きだからといって、効果が強く出ている撮り方をまったくしないわけではありません。
Allure Softに限らず、各種フィルターがもたらすメリットは取り付けるだけで写真の表現を変えることができることです。
僕は写真というのは1枚で見せるより、組みで見せるようにしています。写真を写真集のように組みで見せたい場合は単調にしないことが重要です。バストアップだけを撮るのではなく、手元や足元、人物だけでなく風景やブツ撮り、そして、”写真そのものの見せ方を変えること”が求められます。
ハレーションを使った表現はあまり使わないのですが、時と場合によります。下の写真は敢えてハレーションを出すことで、夏の蒸し暑さを演出しました。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F3.4, 1/90秒, ISO800
このようにパッと見た瞬間、違う雰囲気の写真を作ることができます。
逆光よりも順光
僕はAllure Softを”逆光よりも順光”で使用する場合が多いです。先にも話したように「逆光 + 強い光」だと、ハレーションが強く出てしまうため、誰がどう見てもソフトフィルターを使っている表現に見えてしまいます。こちらの写真は7月の14:00頃に撮影したものですが、光が強く、ハレーションが広く出ています。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F2.4, 1/500秒, ISO100
次に下の写真をご覧ください。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F4.8, 1/500秒, ISO100
逆光で撮影した写真のときよりも効果がわかりづらいですが、真夏の硬い光にも関わらず、肌がやわらかい雰囲気に仕上がっています。夏場の硬い光が苦手という人にも、一度、試して欲しいです。
また屋外・室内に限らず、硬い順光でAllure Softを使うのも良いのですが、僕がみなさんにもうひとつ試して欲しいのは弱い光での撮影です。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F2.4, 1/60秒, ISO100
一見、Allure Soft効果が出ていないように見えますが、左側の小窓を見るとハレーションが出ています。また、肌もやわらかく写っていますね。ディテールやコントラストを維持しつつ、肌をやわらかく写せるのがAllure Softの好きなところなんです。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F2, 1/60秒, ISO400
ストロボの光を僅かにディフューズさせる
僕は個人的にストロボの直当てによる硬い光が好きなのですが、自然光で撮ることが多い人はストロボの硬い光が苦手という人もいるのではないでしょうか。僕はそういう人にもAllure Softをオススメしたいです。例えばこちらの写真。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F11, 1/180秒, ISO200, Allure Soft
Allure Softはソフトな描写を出しつつもコントラストを維持してくれます。この写真に関しても僅かではありますが、光がディフューズされ、やわらかくなっています。この僅かな差が僕にとっては大切です。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F8, 1/180秒, ISO200, Allure Soft
下の写真はベランダにストロボを配置し、窓ガラスを透過させた光を当てつつAllure Softも使用しています。
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F2.8, 1/180秒, ISO100, Allure Soft
LEICA M10-R, アポ・ズミクロンM f2.0/50mm ASPH. | F4, 1/180秒, ISO200, Allure Soft
どうでしょうか。光がやわらかく見えませんか?
このように夏場のロケの硬い光だけでなく、ストロボを使うときにも試して欲しいソフトフィルター、それが Allure Soft なんです。
まとめ
- フィルターの効果を過度に出さないようにして撮る
- 逆光よりも順光での使用がオススメ
- 夏場の硬い光やストロボの直当ての光を僅かにやわらげる
作例
end