若手フォトグラファー5人がアルーアソフトで描く「光の世界」 ―後編
撮影:風花
撮影:Yuri
ナチュラルに光を拡散するアルーアソフトフィルターを使って、人気の若手フォトグラファー5人が、それぞれのフィールドで撮影。フィルターの使用感や撮影のコツについて語ってもらいました。後編は鎌田風花さん、Yuriさんにお話を伺います。
—まず、お二人は普段どんなフィールドで、どんな被写体を撮影しているか、簡単にご紹介ください。
風花 私は「日常の光」をテーマに撮影していて、愛猫や植物、普段見過ごしてしまうなんでもない風景を撮ることが多いです。2年半程前に古いマンションに引っ越したのですが、よい光が入るので、いつでも撮影できるようリノベーションして、イギリスのアンティークの家具を思い切って買い揃えました。
Yuri 私は旅先で風景や花や撮影することが多いです。住んでいる大阪にはない、海や空が広がる開けた景色を求めて、北海道や離島に出かけたりしています。あとはかわいいものが好きで、色や形のかわいい建物などもよく撮ります。風花さんもよく旅に行きますよね。
風花 先日も伊豆大島に行ってきました! 夫とは写真がキッカケで出会ったので、夫婦で旅行に行くときはいつも撮影優先、食べ物は二の次です(笑)。
Yuri わかります。私も風花さんと一緒で、夫とは写真つながりで知り合いました。旅といえば撮影ですよね。
—今回、アルーアソフトを使って撮影していただきましたが、ファーストインプレッションを教えてください。
風花 アルーアソフトは、やさしい世界観にしつつ、自分が本当に写したいものの邪魔をしないのがいいなと思いました。ソフトフィルターはいろいろなメーカーのものを使ったことがあるのですが、色が薄くなったり色自体が変わってしまったり、シャープネスが著しく落ちてしまうものが多かったんです。でもアルーアソフトは発色のよさは変わらず、シャープさも残してくれるので、私が求める優しくて透明感がある世界観を後押ししてくれるフィルターだなと思いました。
Yuri 私はソフトフィルターは使ったことがありませんでした。ボヤッとしているのはあまり好きではなく、シャドウは引き締まっているほうが好みなので、自分の作風には合わないと思っていたんです。でも、アルーアソフトはコントラストを落とさずにやわらかくなってくれるので、一般的なソフトフィルターの印象とちょっと違うなと思いました。とくに夕陽が沈む前の強すぎる光はコントラストが強すぎて苦手だったのですが、アルーアソフトをつけるとフレアが出たり、雲の間からの光が拡散したりと、とてもやわらかい雰囲気になって夕陽を撮るのが楽しくなりました。自分の写真と相性がいいなと感じています。
「ヴィンテージ家具と猫。アルーアソフトは何気ない日常を彩ってくれる」 風花
—では、実際に撮影されたお写真を見ながら撮影のコツを教えてください。まずは風花さんからお願いします。
何かを見つけて耳が立ったところ。この後ろ姿が大好き
陰影の強い西陽のシーンも光と影をほどよく調和してくれる。
風花 まずは愛猫を写しました。西陽が入る部屋で、夕方にブラインド越しの窓の光が入ってきている状態です。見る人にどんな表情をしているのかな、と想像してもらえたらと思って、あえて猫の表情が見えない写真を選びました。
Yuri 2枚目の写真は、ピントが猫じゃなくておもちゃなのが風花さんらしくていいですね〜。
風花 ぬいぐるみに当たっている光が拡散されて、モコモコした感じが出てくれるかなと思って撮りました! 光と影の明暗差が大きいときはやわらかい雰囲気にしにくく、編集で被写体と背景のレイヤーをわけて明暗差を埋めたりするのですが、アルーアソフトをつけて撮ると簡単にシャドウが持ち上がり、複雑な編集をしなくても好きな感じにもっていきやすかったです。
Yuri 室内の猫撮影では、焦点距離はどのくらいで撮ることが多いですか?
風花 50mmが多いです。近くなりすぎず、遠くなりすぎず、生活感をある程度消してくれるんですよね。広角だと部屋の様子が入りすぎるので。
鏡に映り込んだ愛猫。なめらかな黒の背景と、少し青みがかった透明感のある光が鏡の中の世界を彩っている。
風花 これは鏡の中に映り込んだ日常を写した1枚です。背景が暗く落ちるように露出を落として、部屋の光だけで撮りました。黒が真っ黒ではなくなめらかで、猫の毛並みの1本1本のやわらかさが表現できたと思います。ハイライトに少し青みがのってくるので、毛に透明感が出るにもお気に入りです。
イギリスアンティークのエクステンションテーブル。アルーアソフトが黒を持ち上げるから、テーブルが暗くなりすぎない。
椅子とブラインドの影が落ちる壁を低い位置から撮影。切り取り方でグラフィカルな1枚に。
風花 西陽が差し込む時間帯、壁に落ちる椅子とブラインドの影。写真を撮るのが好きだな、と改めて思うのは、こういうなんでもない一瞬だなと思って撮りました。壁に吊るしたオブジェに光が当たってフワッとなり、アクセントになりました。ヴィンテージと部屋は、アルーアソフトととても相性がいいです。
はじめて出会った朝露。低い位置の太陽が水滴を照らし、無数の宝石のようにキラキラと輝かせていた。
風花 これはYuriさんと小春ハルカさん、tomosakiさんと一緒に群馬の桜を撮影しに行ったときに撮ったものです。草はどこにでもあれど、朝露に出会う瞬間って今までなかったんです。たまボケがキラキラに輝いて、逆光の草の影も明るくまとまりました。
Yuri 朝露にテンションが上がっている風花さんがかわいかったです。
風花 朝露にアルーアをつけたらどうなるかな〜とワクワクしながら撮りました(笑)。「どんな表現になるかな」と想像するにも楽しみ方のひとつですよね。
フレアが出る位置を探りながら撮影。オールドレンズっぽい描写が癖になる。
風花 逆光の木漏れ日を撮影しました。光を主役にした露出で撮ると、黒い部分はもっとつぶれてしまうと思うのですが、アルーアソフトをつけたことで陰影がやわらぎ、全体的にやさしい写真になりました。また、光の周りに円のフレアを出せるのが気に入っています。
アルーアソフトの光のとらえ方は、フィルムやオールドレンズに似ているなと思います。オールドレンズの描写が好きでよく使うのですが、拡大すると解像が甘くてアラが出てしまうこともあります。でも、アルーアソフトは現行レンズのクリアさや解像感をちゃんと表現しつつ、オールドレンズのようなやわらかさやフレアを出せるのがいいですね。
Yuri わかります。オールドレンズの描写で、「もうちょっと解像度よくシャープに撮りたい」を叶えてくれますよね。高画質なのにオールドレンズっぽい表現もできるのが嬉しいです。
「南国の強い光をやさしくとらえるアルーアスナップ」 Yuri
―では、次にYuriさんお願いします。
苦手意識のあった強い逆光も、朝の低い太陽とアルーアソフトの組み合わせで好きな被写体に。
海面のキラキラの表現を取り入れたくて狙った1枚。ワンポイントの足跡の「消え具合」が物語を紡ぐ。
Yuri 今回は、宮古島とハワイで「旅先で見かけたやさしい景色」をテーマに撮り下ろしをしてきました。上の写真は、宮古島で朝日を見たくて6時くらいにビーチに行ったときに、雲の隙間から溢れた光を撮った1枚です。ちょうど砂浜に着く頃に、雲の隙間から光が漏れるタイミングに遭遇してシャッターをきりました。アルーアソフトをつけないとコントラストが強くて苦手なシーンですが、淡くやさしい私好みの感じに仕上がって嬉しいです。
風花 足跡の写真、Yuriさんの足跡なのかな、どこに行くのかな、とか、いろいろな物語を想像しちゃいます。
Yuri 私の足跡です! そのままだと足跡がクッキリ残りすぎたので、一度波がさらった後に少し消え掛かったところを狙いました。ある日の海の記憶という感じになったかな。
Yuri 南国らしいヤシの木。葉の間から光が漏れているのがかわいいなと思って撮影しました。ヤシが揺れると漏れる光も変わるので、ちょうどいい入り方を探りながらシャッターを切りました。アルーアソフトを使ったほうは光の滲みやフレアが生まれるのが楽しく、目で見ていた眩しさに近い感じに撮れたかなと思います。
南国はコントラストの強い鮮やかな写真になりがちだけど、太陽が低い朝の時間帯とコントラストを和らげるアルーアソフトの組み合わせで、やさしく表現できる。
Yuri こちらはハワイの朝のマーケットで撮影した1枚。ハワイは太陽の光が強いので、光と影のコントラストがパキッと強く、色もかなり鮮やかになります。それが、アルーアソフトをつけたことで陰影が和らぎ、色合いもやさしくまとまりました。
ビビッドな色合いのブーゲンビリアは、光の位置が低くなる夕方に逆光でアルーアソフトをつけて撮影すれば、落ち着いた色合いにもっていける。
Yuri 宮古島で夕方に撮影したブーゲンビリアの花は、下のほうにフレアが入って、オールドレンズのような描写になりました。花が逆光で透けてやさしい感じになり、撮って出しでもいい感じになるのが嬉しいところです。
ごちゃごちゃしがちなスナップも、水しぶきを手前に入れることで適度に情報量を落としてくれる。
バスの窓に雨粒がついて、光が差し込んでいた。アルーアソフトが光を受けた雨粒をフワッと表現してくれる。
Yuri ハワイで見かけたスプリンクラーの水しぶき越しのスナップは、情報量の多い景色を水しぶきが適度に隠して整理してくれました。
風花 これはいい意味で、Yuriさんらしくなくて、とっても新鮮だと思いました。アルーアソフト×Yuri の融合っていう感じで、すごくステキです!
Yuri 自分でも普段なら撮らない被写体だなと思いました。アルーアソフトをつけると、新しい表現が見つかるんですよね。窓の写真はバスの中から撮ったもの。太陽が出ているのに窓に雨粒がついていて、思わずシャッターを押しました。アルーアソフトをつけていなければ、通り過ぎてしまった景色です。
Yuri 夜にアルーアソフトをつけたらどうなるかなと、ハワイで日が沈んだ後のブルーアワーに撮った写真です。これもアルーアソフトがなかったら、撮っていなかったシーンの1つ。電気の部分がフワッと拡散して光が主役になるから、撮ってみようかなと思うんですよね。アルーアソフトをつけていると、光のある場所を探すようになります。
風花 新しい表現が生まれる、そんなフィルターですね。
―最後に、はじめてアルーアソフトを使う人への使い方のアドバイスをお願いします。
風花 まずはどんなシーンに合うか、常用でプロテクター代わりに使ってみるといいと思います。光がある空間では、雰囲気を変えられて楽しいですよ。私はとくに部屋撮りをおすすめしたいです。窓際の明るい半逆光など、陰影が強い場所の影を和らげてくれるので、やさしい感じになります。真逆光だとハレーションや白飛びの調整が難しく、一発ではなかなか決まりませんが、同じシーンでつけたり外したりしながら癖を知るのがいいと思います。
Yuri 光が弱すぎる時間帯は効果も弱すぎてわかりにくいのですが、光が出てくるとおもしろいです! 今回は南国の光が強い場所で撮影してきましたが、太陽の光が強すぎる場合は風花さんが言うようにハレーションの調整が必要になってくるので、葉っぱや水しぶきなど、被写体を絡めて調整するといい感じにまとまると思います。
Koichi
岐阜県高山市出身のフォトグラファー。東京を中心に活動。主に風景の中に人物を入れた情景写真やPhotoshopを使ったアート作品を得意とし、「心に響く写真」をコンセプトに日常を切り取る。最近はフィルムカメラを通して写真の楽しさを伝える活動にも取り組んでいる。
小春ハルカ
1995年生まれ 群馬県在住。2015年に初めての一眼レフカメラを購入し、写真を撮る楽しさに目覚める。2023年にフリーランスとして活動を開始。淡く華やかな世界をコンセプトに自然風景や季節の花、何気ない日常のシーンなど「心が動く瞬間」を撮影。イベントや旅の取材撮影、写真系メディアの記事執筆、写真講師など幅広く活動している。
tomosaki
2020年にコロナをきっかけにカメラを本格的に始める。地元福井を背景に青春や物語を感じる写真をSNSに投稿。2022年「あの頃にみた青は、」をKADOKAWAより出版。2023年に看護師を辞め、フリーランスフォトグラファーへ転身。 地方創生やウェディング撮影など幅広く活動している。
鎌田風花
兵庫県神戸市在住。2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、日々の小さな幸せを写真で表現することを大切にしている。家族写真の出張撮影や写真セミナーの講師、レンズのカタログ撮影など広告撮影も手掛ける。
Yuri
大阪を拠点に活動するフォトグラファー。「ふんわりかわいい写真」をテーマに、風景や人物の写真を中心とした作品制作に取り組む。観光プロモーションに関する撮影や出張撮影、書籍・広告の撮影、写真セミナー講師、映像制作、記事執筆など、幅広く活動中。