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若手フォトグラファー5人がアルーアソフトで描く「光の世界」 ―前編

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撮影:Koichi

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撮影:小春

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撮影:tomosaki

ナチュラルに光を拡散するアルーアソフトフィルターを使って、人気の若手フォトグラファー5人が、それぞれのフィールドで撮影。フィルターの使用感や撮影のコツについて語ってもらいました。前編はKoichiさん、小春ハルカさん、tomosakiさんの3名にお話を伺います。

後編
目次

—みなさんは普段どんなフィールドで、どんな被写体を撮影しているか、簡単にご紹介ください。

Koichi 風景と人物の両方が引き立て合うような創作写真を撮っていて、「日本」をテーマに本土をひたすら車で走り続けています。最近は日本の伝統文化を和服という衣装で表しながら、海外の景色と組み合わせた作品も撮り進めています。また、地元の岐阜・飛騨高山の写真をたくさん撮って、観光を呼び込みたいなと思っています。

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小春 私はお花を中心に撮影しています。日常の中のときめきをテーマにしていて、風景や日常の中にある何気ない花のシーンを切り取ってます。コンセプトは「淡く華やかに」。決して派手ではないけど、日常の中に彩りを見つけることを心がけています。基本的には地元の群馬、関東近郊で撮影することが多いですね。

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tomosaki 僕の写真のテーマは、青春や物語を感じるシーン。懐かしさや思い出を感じる写真を目指しています。田舎の無人駅や田園風景、河川敷など、学生時代によく見ていた景色を見て、懐かしさを感じてもらえたらと思って撮っています。知らない場所を宝探しみたいに開拓していくのが好きで、地元の福井で撮影することが多いです。

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―みなさん、アルーアソフトを最初に使ってみてどんな印象を持ちましたか?

Koichi 一般的にソフトフィルターは全部がやわらかくなってしまいますが、アルーアソフトはピント面から背景にかけてちゃんと解像感を保ちつつ、さりげなくフィルター感を出せるのが魅力ですね。夕焼けの空や雲、波などの柔らかい雰囲気は強調されるのに、質感は残る。モデルの髪の毛などの細かいディテールも輪郭がしっかりと残ります。あまりにも使いやすすぎて、常用のNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sにつけっぱなしになっています。最新のレンズは写りが良すぎてカリカリの描写になりがちですが、アルーアソフトは見たままの視界に近い雰囲気を再現してくれるので、一度使うと外したときに物足りなさを感じてしまって。

小春 そうそう。シャープに写りすぎるレンズもアルーアソフトを使うと全体的に柔らかい雰囲気になるので、とても使いやすいです。ナチュラルな写りで、いい意味で癖がないと思いました。ソフト系のフィルターはソフト効果が強く出すぎるのであまり使ったことがなかったのですが、アルーアソフトはピント面の芯をちゃんと残してニュアンスを加えてくれる。花にアルーアソフト、使わない理由がありません。

tomosaki フィルターの効果の印象は、Koichiさんと小春さんと同じ意見です! 加えて、僕は入道雲をよく撮るのですが、順光で撮るとのっぺりしてディティールが出にくいときがあるんです。それが、アルーアソフトを使うと雲のきめ細やかさを保ちながら、背景と被写体をうまくにじませてくれて。最初に使ったときに描写が良すぎてびっくりしました。窓から入る光などもハレーションが強調されて思い出のワンシーンのようになります。  
あと、みなさんにお聞きしたいのですが、グロー効果が強く出るシーンでは、ハイライト部分に青みがのりませんか? 作品によっては幻想的な効果をもたらしますが、好みが分かれるかもしれませんね。僕は「青春の青」っていう感じがして、このテイストめちゃめちゃ好みでした!

 Koichi わかります! 反対にブラックミストフィルターは全体にアンバー系になるので、好みで使い分けるとよさそうですよね。

「一度使ったらやめられない。アルーアソフトは、弱い光をフワッと表現してくれる」 Koichi

―では、実際に撮影した写真を見ながら、説明をお願いいたします。Koichiさんからどうぞ。

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刻々と色が変わる江ノ島の夕暮れ。太陽が沈んだ直後のやわらかい光がアルーアソフトに合う。

Koichi まずは江ノ島で夕焼けを狙った写真から。夕焼けは湿度が高いほど焼ける可能性が高いので、梅雨時の雨上がりは焼けの狙い目です。雲や水しぶきの質感の描写にアルーアソフトの効果が合うと予想して撮影してみたところ、光の強い部分は綺麗にソフト効果がかかり、波の表情はシルキーな描写になってくれました。日が沈んだあと、逆光で直射光が画角に入らないシーンはとてもいい感じにまとまります。

作例

奥の提灯、モデルを照らす街灯と提灯の「街中多灯ライティング」。

作例

街灯の下に神輿が来たときを狙って撮影。スポットライトを浴びたように、白い晒がやわらかく光っている。

Koichi 次のシーンは、夜の光にアルーアソフトがマッチするかなと思い、祭りを撮影しました。提灯の光が当たっている顔の質感や、晒の白い部分など、弱い光が当たった部分の階調がとても綺麗。現像すると、黒から白へのグレーの階調がじんわりと持ち上がってくれたのが感動でした。

小春 提灯を持っている女性の写真、光も構図も完璧です!

Koichi これは一番アルーアソフトがバチッとはまった手応えがありました。後ろの弱い光がフワッと華やかに広がり、手前の強い街灯がモデルさんを照らしているので、ストロボで多灯ライティングを組んだような状況でした。道の中でも、モデルさんの立ち位置を工夫することで、ストロボで作り込んだような写真にできるのも楽しいですね。 
それと、アルーアソフトをつけてファインダー覗くと、映画とかドラマの世界に入ったようでテンションがあがりました!

電球や看板の光がフワッと滲み、マジックアワーの街に彩を加えてくれる。夕暮れの路地とアルーアソフトは相性がいい。

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8割の写真は50mmF1.2で撮影。開放で撮ったときの世界は格別。

枝の位置とモデルに落ちる影がベストな状況で入るよう、ボートをオールで固定しながら撮影。腹筋で支えるモデル、シャッターチャンスを逃さないカメラマン、ボートを固定する友人のチームワークの賜物。

Koichi これは、桜が少し散り始めつつ、枝には桜が残っている絶妙な時期を見計らって弘前に撮影に行ったときの写真です。パソコンで拡大してみると、着物の黒のディテールがすごく出ていてびっくりしました。黒潰れしやすい黒い衣類は、アルーアソフトをつけることで繊細な階調が出ます。

tomosaki 制服も黒のスカートと白いシャツで明暗差が大きくて難しいのですが、アルーアソフトをつけたら満遍なく階調をとらえてくれました。それにしても桜の写真、パーフェクト……。枝のシャープな感じや人物の求心力、写真をやっている人が憧れる1枚です!

「フィルターをちょっとずらしてオールドレンズのように。アルーアソフトの新しい楽しみ方」 小春

―続きまして、小春さんのお写真の説明をお願いします。

グロー効果で低い位置の夕陽がアクセントとして入り、神々しい雰囲気に。花の間から漏れる光を微調整するのがポイント。

小春 日が沈む瞬間に、グロー効果を狙ってネモフィラを撮影しました。私はたくさんの花の中でも、一輪の花に焦点を当てて撮るのが好きで、これを「擬人化」と言っています。このときも一輪だけ飛び出しているネモフィラにフォーカスしつつ、その間からこぼれる光の神々しさを表現しようと、自分で動いてカメラの位置を調整しながら、一番いい光がこぼれるところでシャッターを押しました。オレンジとブルーの反対色を強調できたかなと思います。

Koichi 木漏れ日の大きさと位置の調整、これはなかなか難しいのでは……。

小春 1枚撮って諦めず、ベストな光を調整できるまでかなり粘りました!

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小春 この写真は右下に虹のフレアが出ているのですが、アルーアソフトを装着しているときに、虹色がチラリと入ったので、レンズの前にアルーアソフトをかざして角度を調整しながら光を取り込んでみました。これはなり低い位置からチルトで撮影しています。

Koichi 虹色を出すのはどうがんばっても撮れなかったので、すごいなぁ。フィルターを浮かすと二重の像になってしまうので、調整が難しいですよね。角にちょっとだけ、アクセントに入っているのが素敵です。

tomosaki オールドレンズで撮ったみたいですよね。

小春 そうなんです、オールドレンズの描写はとても好きなのですが、もう少し被写体がシャープに写っているほうがよく、かといって現行の最新レンズだと写りすぎるので、その間があれば良いなと思っていました。アルーアソフトは写したい被写体はシャープなのに、フワッと馴染んで両方のいいとこどりという印象です。オールトレンズを1本買うのは躊躇するけど、フィルター1枚で効果を楽しめるのがいいですね。

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下方のボケは、アルーアソフトに反射した藤の花。撮影中の発見が新しい作品を生み出すのも楽しさのひとつ。

小春 この藤の花も、アルーアソフトの正しい使い方ではないのですが……。レンズの下方にアルーアソフトを置いて鏡のように使い、藤の花を反射させて取り入れました。こういう使い方って、してもいいのでしょうか。

NiSi 素敵だと思います! ちょっとした発見を作品に取り入れていく発想こそ、写真の楽しさですよね。

作例

西陽の入る室内で撮影。紫陽花の鉢を移動すれば、自在に光が入る位置を調整できるのが部屋撮りのいいところ。

小春 この写真、じつは自分の部屋で撮影した紫陽花の鉢なんです。西陽が入る時間帯を見計らい、霧吹きをかけて水滴をつけて撮影しました。窓を通した西陽がやわらかく広がって、やわらかい描写になりました。右端の黒っぽい部分は部屋の壁。適度に暗い部分が入るので写真が引き締まります。自分の家だと光の入り方もよくわかるし、ゆっくり撮影できるのでおすすめです! 部屋と花と水滴とアルーアソフト、とっても相性がいいなと思いました。

「なんでもないあの日のワンシーンを彩ってくれる、青春のアルーアソフト」 tomosaki

―最後にtomosakiさん、お願いします。

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雨をもたらす黒い雨雲と、光が当たった入道雲の明暗差も、ほどよく調和してくれる。

tomosaki このとき、嵐が迫っていて後ろは真っ暗で、この入道雲にだけ光が当たっていたんです。土手の下から、横顔が雲の多い部分に入るよう調整して撮影しました。入道雲のもくもくとした綿のような質感は際立っているのに、人物や手前の草は輪郭がシャープで、画面を確認して「おおっ、すごい!」と思わず声が出てしまいました。そして、じつはこのモデルさん、小春さんなんです。

小春 そうなんです! 制服を着る年齢ではないのですが(笑)。

tomosaki 小春さんは完璧な18歳でした!

作例

無人駅にて昼前ぐらいに撮影。斜陽が駅舎の中に入り、やわらかい光が回ってくれた。

作例

モデルの小春さんが背負っているのはカメラバッグ。「電車が来ます」の看板を入れ、誰もが見たあの日のホームを演出。

tomosaki 駅舎の写真は、室内でアルーアソフトを使ったときの効果を試したくて撮影しました。古い窓とアルーアソフトのグロー効果で窓の光が滲み、ハイライト部分に少しシアンがのって幻想的な光が回りました。この日は天気が悪かったのですが、窓から見える空はあえて白飛びさせて、天気の悪さを感じさせないようにしています。 
ホームの写真は、サイド光で背景の山の色や空の青がやや出にくいのですが、アルーアソフトをつけたことで理想の青がのってくれました。

Koichi 「電車が来ます」という文字が視認できるぼかし具合なのも、見ている人の視線を追体験しているようで、懐かしさを感じますよね。

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太陽が真上に上がり、局所的に細い光が入る。わずかなスポットライトも、アルーアソフトがしっかりとらえてくれた。

tomosaki 駅舎から廃校に移動して撮影した写真です。小春さんにはやっぱり「花」が合うと思い、白い花を持ってもらいました。窓辺に5cmほど入るスポットライトが入っていて、その光に白い花が当たるように調整しました。部屋の中に入るスポットライトを探して、光で遊ぶのも楽しいですね。

テーマは光の中でダンス。写真に動きを出したくて、踵をフッと浮かしてもらった。影と足元というシンプルなシーンにもドラマが生まれる。

―最後に、はじめてアルーアソフトを使う方への注意点やアドバイスをお願いします。

Koichi 強い逆光のシーンではフィルター効果をコントロールしにくいのでので、弱めの光源で使うのが良いと思います。夜景なら、グラウンド照明の煌々とした強い光ではなくて、商店街のやわらかい電球の光が向いています。弱い光を華やかに彩るのがとても楽しいので、ぜひ夜の街などで試してみていただきたいです。

小春 効果のかかり具合は、天候やロケーションでけっこう違ってきます。晴れた日の、日が低くなってやわらかい光になる時間帯は効果がわかりやいのですが、曇りの日などはナチュラルすぎて、はじめて使ったときは違いがわからないかもしれません。フィルター効果をしっかり感じたい場合は、まずは「夕方の逆光」で使ってみるとテンションが上がって楽しいと思いますよ。


tomosaki 順光や曇りの日など効果がわかりにくいシーンでは、パソコンのモニターで見てはじめて「あぁ、見たときの光の印象だな」とわかる感じがしました。かなり写真を見ている中級者以上の方も、わずかな描写の違いを楽しめると思います。 
まずは常用のフィルターとして装着して、さまざまなシーンでスナップ的に使ってみるといいと思います!


Koichi

岐阜県高山市出身のフォトグラファー。東京を中心に活動。主に風景の中に人物を入れた情景写真やPhotoshopを使ったアート作品を得意とし、「心に響く写真」をコンセプトに日常を切り取る。最近はフィルムカメラを通して写真の楽しさを伝える活動にも取り組んでいる。

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小春ハルカ

1995年生まれ 群馬県在住。2015年に初めての一眼レフカメラを購入し、写真を撮る楽しさに目覚める。2023年にフリーランスとして活動を開始。淡く華やかな世界をコンセプトに自然風景や季節の花、何気ない日常のシーンなど「心が動く瞬間」を撮影。イベントや旅の取材撮影、写真系メディアの記事執筆、写真講師など幅広く活動している。

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tomosaki

2020年にコロナをきっかけにカメラを本格的に始める。地元福井を背景に青春や物語を感じる写真をSNSに投稿。2022年「あの頃にみた青は、」をKADOKAWAより出版。2023年に看護師を辞め、フリーランスフォトグラファーへ転身。 地方創生やウェディング撮影など幅広く活動している。

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鎌田風花

兵庫県神戸市在住。2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、日々の小さな幸せを写真で表現することを大切にしている。家族写真の出張撮影や写真セミナーの講師、レンズのカタログ撮影など広告撮影も手掛ける。

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Yuri

大阪を拠点に活動するフォトグラファー。「ふんわりかわいい写真」をテーマに、風景や人物の写真を中心とした作品制作に取り組む。観光プロモーションに関する撮影や出張撮影、書籍・広告の撮影、写真セミナー講師、映像制作、記事執筆など、幅広く活動中。

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