パパとママ、異なる視点で撮る子どもの成長動画
お子さんの成長を撮影した動画を編集してインスタグラムで公開、魅力あふれる表情や美しい景色の作品が人気のFancykyonさんご一家。伸び伸びと子育てしたいと、バリに移住して1年。現地での日常を撮影し、編集した動画について撮り方のポイントなどをうかがいました。
撮影スタイルと機材・設定
パパは構図、ママは表情
違う視点だからおもしろい
――まず、お子さんの動画を撮り始めたキッカケを教えていただけますか?
ママ 長女が生まれてからスマホで毎日写真や動画を撮っていたのですが、2年後くらいにもっと写真をキレイに残したいと、SONY α7ⅢとFE85mmF1.8をセットで買ました。最初は写真だけ撮っていたのですが、そのうちに動画にも興味を持つようになり、なんとなく動画を検索するようになりました。でも、自撮りしながら喋るVlog的な撮り方は自分には向いていないな……と思っていて。
パパ そんなときに、TwitterでAuxoutさんの動画を見て衝撃を受けたんです。同じα7Ⅲでこんなにステキな、シネマティックな作品を撮れるんだ!と思ったのがキッカケです。
――動画はパパとママのどちらが撮っているのですか?
パパ 2人で撮っています。僕はジンバルを使って娘たちに合わせて動きながら撮影することが多くて、広角で構図も意識して撮っています。
ママ 私は構図とかは後回しでいいから、とにかく子どもの表情をかわいく撮りたいんですよね。だから、ほとんど中望遠の単焦点レンズで撮っています。
パパ 視点が違うので、2人で撮影した動画を組み合わせると、それだけで変化が出るんですよ。
――現在は、どんな機材で撮影されているのですか?
パパ ボディはSONY α7sIIIです。日本にいるときはα7IIIとα7sIIIの2台持ちで夫婦で1台ずつ持って撮影していたのですが、バリに移住するときに1台にしたので、今は交代で使っています。
僕はジンバルを使うので、レンズは軽くて安定のいいFE 20mm F1.8Gをつけっぱなしにしています。子どもたちのかなり近くまで寄れるので、会話をしたり遊びながら撮影でき、自然な笑顔が引き出しやすいんです。画角が広いと旅行やお出かけ先の景色や情報も一緒に映るため、後から見返したときに場所の思い出も蘇ってきます。
以前はSIGMA35mm F1.4 DG DNも使っていたのですが、大きくて重いのでジンバルにつけて子どもを追いかけるにはしんどくなってしまいました。描写は素敵だったのですけど、やはり機動性は大事です。
パパはジンバル+広角で動きながら撮影するスタイル
ママは中望遠で止まって表情を中心に撮影するスタイル
――ジンバルはやっぱり必要でしょうか?
パパ あった方がブレを気にせず楽しんで撮れますね! 手持ちだとブレを気にして動けなくて。子どもは想像以上に動くので、子どもに合わせて動くと酔うほどぶれしまうんです。ありのままの今を映像に残したいから、楽しく遊びながら撮影することを優先しています。
本当はいろいろなジンバルテクニックを使ってカッコよく撮影したい気持ちはあるんです! 男性はやはりかっこいい撮影と編集に憧れますから(笑)。そういう撮影スタイルに挑戦したこともありましたが、娘たちにモデルのようなポーズや動きを指示してしまうと機嫌が悪くなったり、お互いがストレスになってしまって。「せっかく旅行に来ているのに、何してんのやろ?」となり、娘たちの笑顔優先の今の撮影スタイルになりました。
――ママさんは中望遠とのことですが、どんなレンズをお使いですか?
ママ 私は最初に買ったFE85mm FE1.8で撮っています。ボケ感も好きなのですが、なにより光の入り方が柔らかく、子どもの表情をよりかわいく引き立ててくれます。私は20mmは好きじゃなくて(笑)、ジンバルを使うのも面倒くさいししんどいので、基本は定点で動かずに撮っています。子どもが動くので、こちらは動かなくても映像に動きが出ます。
パパ 僕はなんか止まっているのが不安なんですよね。動かないとダメなんちゃうかなーと思っちゃって。だからだいたい動いて撮影しています。
【使っている機材】
ボディ:SONY α7sIII
レンズ:SONY FE 20mm F1.8G(パパ使用)、SONY 85mm FE1.8(ママ使用)、SIGMA 35mm F1.4 DG DN
フィルター:可変ND TRUE COLOR ND VARIO 1.5-5stop、5-9stop
ジンバル:DJI RONIN-SC2
――お子さんを撮影するときの設定で、他の撮影とは違う注意点などはありますか?
パパ 基本はM(マニュアル)モードで撮影しています。気をつけているのは、スローモーションで編集をかけたいので、スローを使える動画設定にすることです。ふつうの再生速度だと一瞬で終わってしまいますが、スロー再生なら5秒くらいあれば十分なので、子どもが飽きて嫌がることもありません。
その他には、写真も撮るので、動画の設定をカメラに記録しておき、ダイヤルに割り当てて簡単に写真と動画を切り替えられるようにしています。
ママ あと、最初からインスタのリールにのせる目的のときは、縦で撮ります! その場合、グレーディングは行わずに撮って出しです。
パパ 本格的な作品を撮るときは、後から細かくグレーディングできるLog撮影の設定にして、横位置で撮るのですが、ふだんは縦位置が多くなってきましたね。
各シーンの撮り方のコツ
子どもと遊びながら
5秒程度の短い動画をたくさん撮る
――実際の撮影のコツについて、作品を見ながらポイントを教えていただければと思います。まず、自転車シーンはどのような位置関係で撮影しているのですか?
パパ これは3つのシーンをつなげています。1シーン目と2シーン目は、ジンバル+20mmのレンズで僕が撮っています。1シーン目は後ろから走って追いかけながら、呼びかけに振り向いてくれた瞬間、2シーン目はジンバルで並行に移動しています。
――走りながら撮るのですか! しんどそう……
パパ これ、走っているのは、ほんの2秒くらいなんですよ。編集でスロー再生にするので、そんなに長く撮る必要はないので大丈夫です!
ママ 3シーン目のアップは、85mmのレンズで私が撮影しています。止まってカメラを構え、こちらに近づいてくるのを画角を変えずに撮っています。
1シーン目 ジンバル+20mmのレンズで追いかけて撮影(パパ撮影)
2シーン目 ジンバル+20mmで並行移動(パパ撮影)
3シーン目 85mmのレンズで止まって撮影(ママ撮影)
――海のシーンや室内は、ボケと表情が印象的なので、ママの撮影ですか?
ママ そうです、どちらも85mmです。海のシーンは夕陽が入る角度を意識して、ローアングルから撮影しました。室内での撮影は暗くなりがちなので、窓からの光がたくさん入る場所で、太陽光の入る時間帯に行っています。
パパ 室内の写真は、バリの強い日差しが入っていますが、2人は日陰にいるので肌色のトーンがきれいに出てくれました。この光の感じはバリならではだと思います。
85mmで撮影。夕日が入る位置を工夫して、しゃがんで撮影(ママ撮影)
背景を整理するために白く飛ばす。NDフィルターが便利(ママ撮影)
――背景がごちゃつきがちだと思うのですが、とてもスッキリしていますね。
パパ このシーンは、背景に空や木々の緑、プールなどがあって色が賑やかだったんですよ。なので、あえて背景を白く飛ばして色を整理しました。ただし、頬に光が当たっているので、明るくしすぎると真っ白に飛んでしまいます。そこで可変式のNDフィルターをつけて、ヒストグラムを見ながら背景とスキントーンのバランスが整う露出を探しました。こういうときは可変式のNDフィルターが便利ですね。
ママ 撮るのは私ですが、そういう細かい露出設定はパパがやります(笑)。
――下からの見上げる撮影は、パパの撮影でしょうか。
パパ そうです! 上にあるお花を見上げていたので、咄嗟にしゃがんで撮影しました。花が見えるように下から煽り、視線の先のスペースが空く位置を意識してカメラを動かしました。これもジンバルを使って撮影しています。
お花を見ているシーンを下から回りながら撮影(パパ撮影)
――この動画を1本撮影するのに、どのくらいの日数がかかりましたか? あらかじめ「こんなシーンを撮ろう」というプラニングはしますか?
ママ このくらいの動画であれば、1日で撮影できちゃうと思います。この日は午前中にお菓子を持ってビーチで自転車に乗り、汗だくになったので1回帰宅。夕方、別のビーチに行きました。家のシーンは別日に撮りましたが、これも昼間に盛り込むこともできると思います。
パパ ざっくりした流れは決めますが、とくに撮影のプラニングはしませんね。このときは、夕方のビーチのシーンだけは撮ろうと決めていて、あとはいいな、と思ったシーンを撮って編集でつなげていく感じです。シネマティックな作品を作り込むときはプラニングをしますが、今はとにかく子どもとの時間を楽しむことが優先です。
――おしゃれな動画に仕上げるコツでいちばん大切なのは何でしょうか?
ママ お洋服はかなり大事! ステキな場所でも、洋服が背景に合わないと映像もおしゃれに見えないので、お出かけ先の色をイメージしたり、行く場所のインスタを見てモデルさんの服装を参考にしたりして選んでいます。おしゃれでも、動きにくい服はNG。我慢や無理はさせず、機嫌を損ねないことが大事です。
また、光が映像にもたらす効果もとても大きいと思います。逆光だと眩しくないので娘たちもいい表情をしてくれますし、子どもならではの柔らかくて細い髪が光に照らされて透き通る瞬間なども愛おしくて大好きです。
パパ バリの光は強いので、コントラストが強いのですが、子どもの撮影では光に溶け込ませるような光にしたいんですよね。そんなときはブラックミストを使ってフワッと拡散させるのも良いと思います。あとはスキントーンにもこだわります。グレーディングで青っぽい映像にすると、おしゃれな雰囲気にはなるのですが、顔色まで悪くなってしまうので、肌の暖色を戻すようにしています。
なにより大事なのは、とにかく普段通り楽しんで撮ることですね。カメラを意識すると表情が固くなるので、話しかけて遊びながら撮影しています。「かっこよくしようとするな」と肝に銘じています(笑)。
動画をおしゃれに編集するコツ
スマホのアプリで気軽に!
編集すれば記録として残る
――編集はどちらが行っていますか? また編集するときのコツを教えてください。
パパ 編集は妻がほとんど、僕はカラーグレーディングをするときだけ行います。使っているソフトはDaVinci Resolve(ダヴィンチリゾルブ)です。
ママ インスタにアップするときは、「InShot(インショット)」というスマホアプリを使っています。軽いリールなど簡単に作れるのでおすすめですよ。ただし、スマホで編集する場合でも、パソコンでダビンチリゾルブに一度入れて、カット編集をしてからスマホに送っています。カメラからスマホに直接動画データをすべて転送すると重くて時間がかかってしまって。ダビンチリゾルブでコンパクトにしてからスマホに送り、文字入れやBGMはスマホで行っています。
カット編集をするときは、同じような映像が連続にならないよう、画角や寄り引きの違うものをつなげるようにしています。とくに意識しているのは音楽に合わせてカットすること。切り替えが音楽に合っていないと、見ていて違和感を感じるので、ここは丁寧に合わせますね。
あとはスロー再生をよく使います。音楽に合わせてスローを使うと日常のシーンやお出かけの記録がドラマティックになります。毎日何気なく見ている表情や仕草も、編集していると、「こんなにかわいい表情をしていたんだ!」と新しい発見があったりして、愛おしい気持ちをかみしめています。
パパ スロー再生をすると、ぶれが目立たなくなるんですよね。動き回る子どもの撮影は、ジンバルを使っていてもぶれてしまうので、スロー再生で緩和しています。
ママ instagramに関しては始まりも大事。私の場合、最初の0.3秒は娘たちの姿からスタートすることが多いです。足元や景色から始めると、見てくださっているフォロワーさんも誰の動画なのかわからないので、始まりは意識して作っています。
スマホで実際に動画編集しているところ
――BGMはどの段階で選びますか?
ママ 撮影したあと、動画の素材を並べる前に決めます。インスタの軽いリールのときはインショットでつけたりしますが、好きな感じの曲が多いEpidemic Sound(エピデミック・サウンド)から選ぶことが多いです。いくつかピックアップして当ててみて、はまるものを探っていきます。サクサク作っていけるBGMははまりますね。30秒くらいの動画の場合、サビが30秒くらいで終わる曲が使いやすいです。Aメロは使わないことも多いので、サビがいいのを選びます。
――動画を編集して残すことのメリットはどんなところにありますか?
パパ 良いシーンだけを編集していつでも見られるように公開しているので、子どもが自分の動画を見て嬉しそうにしてるのがいいですね。
ママ 動画はその時の声や仕草、空気感や感情までもとらえてくれるので、思い出が鮮明に残ります。子どもの成長は本当にあっという間。スマホに入っている娘たちの小さい頃の動画を見返すと、可愛い姿がたくさん残っていて心臓がギュッと掴まれるような、懐かしくて愛おしい気持ちになり、動画を撮ることの大切さをいつも感じています。きっと、特別な行事や旅行だけでなく、今何気なく撮っている日常も、数年後に見返すとどれも懐かしくて、あのとき撮っておいて良かったと感じるものばかりだと思います。どの記憶も、この先生きていく支えになるんじゃないかなと思っています。
パパ また、旅行やお出かけで撮った動画を編集をしておくと、ちゃんと残そうという意識が働くのでおすすめです。たくさん撮ったけど、写真整理のときに削除してしまった…… ということもなくなり、きちんと思い出として残ります。
ママ ステキな写真を撮っているママさんはたくさんいるので、ぜひ気軽に動画を作って、思い出を残されるといいなぁと思います。
FANCYKYON
10歳と6歳の姉妹の母。娘たちにいろんな文化や生き方、多様性を受け入れられる心や、様々な経験から好奇心や自信を高めてほしい願いから1年前に家族でバリ島移住を決断。長女が生後半年の頃から、何気ない日常の中にある家族の幸せや喜び、こどもの成長をInstagramに記録している。5年前から一眼で写真を撮るようになり、4年前にSNSでシネマティックな動画を見たことをきっかけに夫婦で動画に挑戦。cinematic vlogやショート動画など様々な動画表現を追求している。優しい眼差しで切り取る写真や動画は多くの人の心を動かしSNSは総フォロワー約12万人。