Interview with Nanako
東京都出身のフォトグラファー、小山奈那子。人物撮影を中心に、ファッションやビューティーの広告写真で活躍する一方、プライベートでは飼い猫や友人を被写体にしてインスピレーションを探求している。今回は、作品を通じた「自分らしさ」とフィルターについて取材した。
父がカメラの販売業を営んでいたため、幼少期からカメラは身近な存在だった。海外に行く際には持ち運びやすいカメラを相棒に、旅先での日常を切り取ってきた。しかし、当初からカメラマンを目指していたわけではなく、趣味の延長で進路を選び、大学で写真を専攻した後、スタジオでアシスタントとして修行を始めた。その中で自身の作品も注目を浴びるようになり、カメラマンとして独り立ち。気負わず語るその姿が印象的だ。
現在はファッションやビューティーを中心とした広告写真を多く担当。撮影内容によりポイントやインスピレーションの源は異なるが、「趣味なら生活感のある空間に人がいるくらいの距離感が好き」と語るように、プライベートでは飼い猫の「めぐ」や友人の日常からインスピレーションを得ることが多い。そんな日常の記録も、将来の展示会で披露することを目指して撮り溜めている。
仕事の大半は家での作業で、撮影よりもコンセプトの練り上げや編集に費やす時間が長い。プライベートも専らインドア派で、中でも家は好きなものに囲まれて過ごすことが出来る空間だ。家にはカバーに惹かれて買った本も多い。内容以上に装丁の美しさに心奪われ、いつか自分の写真集を作る時には、こんな素敵なデザインで、と夢見ることもあるという。
撮影中に「自分らしさ」を意識することはないが、心が動いた瞬間を大切にし、構図など意図的な表現が合わさった時、周りから「らしさ」を評価されることが多い。写真という音のないメディアが感情をどう動かすかに関心を寄せている。そのきっかけは、幼少から20年ほど続けたピアノをはじめとする音に囲まれた生活で、唯一音を感じなかったのが写真だったこと。以来、「こう思わせたい」という意図は持たずに、シャッターを切る瞬間やその時に感じたものを写真を通して伝え、音以外でどんな感情を呼び起こすのかを追求している。過去の作品でも「特に音を感じない」と思った写真ほど、直感で「これがいい」と思った瞬間が「らしさ」として現れている。
仕事用カメラは富士フイルムのGFXシリーズで、持ち運びやすさがポイント。レンズにはこだわりがあり、明るい単焦点や広角レンズを愛用。偏光フィルターやNDフィルターもお気に入りで、特にNiSiのフィルターは「しっかりしていて、厚みがあるように見えます。それにもかかわらず、ちゃんとクリアで、すごく好印象」とのこと。最近はソフトフィルターによるライティング効果に興味を持ち、「ソフトフィルター自体はあまり使ったことがなかったのですが、サイドから当たる光を使った時、肌に当たる光の回り方が少し滑らかになったように感じました。その効果がすごく面白いなと思いました。」と話している。より工夫を凝らしたスタジオ撮影での表現の幅が広がりそうだ。