ブラックミスト1/4
映画をはじめとする映像の世界で使われてきたブラックミスト。NiSiのシネマ用角型フィルター「Allure Mist Black」を円形フィルターとして再開発した本製品は、映像業界でもポピュラーな濃度の「Black Mist 1/4」です。
今回、写真家の平林武彦さんに本製品を使ってスタジオにてポートレイト撮影を行っていただきました。
「光が柔らかにこぼれる」ブラックミストの効果
まずは、ブラックミストを使うことで、光源がどう変化するのかをチェックするため、手前に強い光源を入れて撮影してみました。円形のLED照明を前方から1灯、またカメラにも小さなLED照明をつけて、合計2灯を使用し、手持ちで撮影しています。ブラックミストにより、光源からは光が柔らかくあふれるような効果が出ますが、このエフェクトの強さがほどよく、全体の雰囲気をしっかり演出しながらも、被写体自体ははっきりと写し出します。手前のランプは強い光のため、光源の周りは光がこぼれるような表現になりますが、このエフェクトが従来品だと画面の全体にハレーションが広がり白っぽくなり過ぎてしまうのが不満でした。「ブラックミスト 1/4」の効果はとてもバランスがよく、画面全体が派手な印象になり過ぎないところが気に入っています。
人物の肌の質感をナチュラルに表現できる
フィルター有り無しで効果を比較してみました。
ブラックミスト 1/4なし
同じシーンをブラックミスト 1/4なしで撮影したカットがこちら。全体的にシャープでコントラストが高く、やや硬く見えます。
ブラックミスト 1/4装着
このカットではモデルの左手前と頭上、そして奥の3箇所にランプがありますが、これらの周りには前述のハレーション効果によって光が溢れ、温かみのある印象を与えています。またハイライトを抑える効果もあるので全体的に柔らかな描写になります。特筆すべきは被写体である人物の解像感がしっかりと保たれているところでしょう。
ブラックミスト 1/4なし
ブラックミスト 1/4装着
先ほどの作例の拡大図です。ブラックミスト 1/4を装着して撮影したカットは、肌のハイライトが抑えられることで、より自然な色合いになっています。
バランスの良いフェード感が得られる
シネマティックな演出を意識して、楽屋裏のようなシーンを撮影しました。
SONY α7 III, FE 35mm F1.4 ZA, 1/160, F1.4, ISO 100
ブラックミスト 1/4なし
ミラーの周りに明るいランプがあり、フレアが出やすい条件ですが、現代のレンズはこういったシーンでもしっかりとした描写です。ただ、ノスタルジックな雰囲気を演出するには、シャープでコントラストが高いのでカッチリとし過ぎるように思います。
SONY α7 III, FE 35mm F1.4 ZA, 1/160, F1.4, ISO 100
ブラックミスト 1/4装着
「ブラックミスト1/4」を使って撮影すると、高性能レンズの解像度は保ちながらもシャープネスが和らぎ、コントラストも落ちるので、オールドレンズで撮影したような風合いになるところが面白いです。フィルターを付けるとシャドーが持ち上がり、ハイライトが抑えられるので、滑らかなフェード感を得られるところもシネマチックな表現となっている要素だと思います。
階調を残すためのブラックミスト
ブラックミストは前出の作例のように、光源の演出や、ノスタルジックな画作りが注目されがちですが、私がブラックミストを使う一番の理由はシャドー部分の階調を残すためです。
学生のころ取り組んでいたアマチュア映画制作では、ビデオカメラマンの友人が夜の撮影でブラックミストを常用していました。シャドーがつぶれてしまわないようにするためです。
ポートレイト撮影では顔の明るさを意識しすぎると、背景を飛ばしてしまったり、シャドーを潰してしまいがちです。そうした明暗差の大きな場面でもブラックミストを使うことで、階調の豊かな写真を収めることができます。
現像後の完成画像
SONY α7 III, FE 50mm F1.4 ZA, 1/20, F1.4, ISO 200
フィルターを付けたときのヒストグラムを比較
フィルターなし
フィルターあり
「ブラックミスト 1/4」を使うと、マスターレンズの解像感を損なうことなく、オールドレンズのような風合いを楽しめるのが面白いです。今回の作例は全カットSONYのレンズを使いましたが、普段はライカで撮ることもあります。モデルのmoca*さんとは過去にも一緒に作品撮りをしてきていますが、本撮影時に「ブラックミスト 1/4」で撮った写真を彼女に見せたら「ライカの雰囲気と写りが似ていますね」と言われたほどです。レンズに取り付けるだけで新旧レンズの良いとこ取りができる、というのがこのフィルターを使う大きなメリットだと思います。
現代レンズの解像感、オールドレンズの風合い
「ブラックミスト 1/4」を使うと、マスターレンズの解像感を損なうことなく、オールドレンズのような風合いを楽しめるのが面白いです。今回の作例は全カットSONYのレンズを使いましたが、普段はライカで撮ることもあります。モデルのmoca*さんとは過去にも一緒に作品撮りをしてきていますが、本撮影時に「ブラックミスト 1/4」で撮った写真を彼女に見せたら「ライカの雰囲気と写りが似ていますね」と言われたほどです。
レンズに取り付けるだけで新旧レンズの良いとこ取りができる、というのがこのフィルターを使う大きなメリットだと思います。
モデル:moca*
撮影協力:清水ノンタウン(撮影スタジオ)