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ドローンを使った空撮動画におけるフィルターワークの有用性とは

ドローンを使った空撮動画におけるフィルターワークの有用性とは

ダイナミックな空撮動画を手軽に撮影することができるドローン。ただ撮って楽しむだけではなく、見る人の印象に残る映像美を追求するにはフィルターの力が必須です。風景写真家のGOTO AKIさんに、DJI製ドローン「Air 2S」とNiSi製の専用フィルターで撮影した作例とともにその有用性を説いていただきました。

目次

NDフィルターで露出変化による“白飛び”を防ぐ

DJI Air 2S ND 8

早朝に撮影した映像です。朝は時間とともに明るくなるため、露出も急激に変化します。ドローンを飛ばし始める時の適正露出で撮り始めると数分後には露出オーバーになってしまうため、飛ばしてから10分~15分後くらいの露出を想定しておく必要があります。僕は、朝方に映像を撮る際にはND8のフィルターを装着することが多いです。一回のフライトに使う時間は約22、3分でしょうか。その間に日は出てどんどん明るくなっていきますが、NDフィルターの効果で動画の鬼門ともいえる“白飛び”を抑えることができます。
動画における白飛びは、広い面積ともなるとスチール以上に救いようがありません。動画はとにかく“白飛びさせないこと”が重要。そのためにもNDフィルターを使うことは必須といえます。もちろん、露出が上る前はNDフィルターによって適正露出よりも暗くはなりますが、ドローン側のISO感度の設定をオートにしておけば適宜露出を調整してくれますし、感度が上がっても動画ではそこまでノイズ感が目立ちにくいので許容しています。

DJI Air 2S ND 32

これは午後に撮影したものです。日中撮影する場合にはND64を選ぶことが多いのですが、この日は雲が少し多く、実際にテストをしてみたら少し暗く映ってしまったため、ND32を選んでいます。飛ばした後に露出の具合を知ることはできても、調整のためにフィルターを交換する場合には当然ながら一度降ろさないとできません。そのため、一回上空にドローンを飛ばして360度回転させ露出の具合をチェックします。一度のフライトでいろんな角度の映像を撮ることを想定して、ND32とND64のどちらを使用するか判断しています。今回の映像はいずれも11月下旬から12月上旬の間に撮ったもの。夏の場合は光量が増えるので、ND64を常用します。

撮影風景

滑らかな映像を撮るためのフレームレートはNDフィルターで確保する

DJI Air 2S ND 64

Air 2SのレンズはF2.8固定。写真を撮られる方ならピンとくると思いますが、日中にF2.8で撮影する場合、シャッタースピードを速くしないと完全にオーバーな世界になってしまいます。ただ、動画においてシャッタースピードを速くしてしまうとカクつきが出てしまい、滑らかさに欠ける映像になってしまいます。特にこうした波を撮影する場合には、フレームレート30fps、シャッタースピードで1/30~1/60程度には抑える必要があります。
NDフィルターを付けることで、適正露出で適度なモーションブラーが出る30fpsのフレームレートとなり、滑らかな映像を撮ることができました。フィルターはND64を使用しています。

DJI Air 2S ND 64

ND64で飛びしないギリギリのところでシャッタースピード1/60を確保しています。NDを付けなかったら、光が反射している真ん中部分は確実に真っ白に飛んでしまいます。まさにNDがないと撮れない映像といえますね。

ND

PLフィルターで反射を抑えた鮮やかで抜けの良い映像を撮る

PLフィルターなし

PLフィルター無し

PLフィルターあり

PLフィルター有り

これはドローンで撮影したスチールです。PLフィルターは30度~40度くらいの角度でみると水面の反射が迎えられて、色を濃く撮影したり、透明度の高い海では水中まで見える効果があります。この作例では海の表面反射の見え方が全然違いますよね。また、この日は遠景の富士山が霞んでいましたが、PLフィルターを装着することでクリアーに撮ることができました。

DJI Air 2S HD エンハンスド PL

静岡市の山中から見える南アルプス。静岡市は、北の方は山梨県や長野県との県境まで繋がっているため、南北で移動しようとすると車で3~4時間ぐらいはかかります。そんな山深いところから順光の南アルプスに向けて、PLフィルターを付けたドローンを高台から飛ばしてみました。雲ひとつ無い空や木々の反射がしっかり抑えられ、色鮮やかな映像になりました。PLフィルターの効果をとてもよく感じていただけるのではないでしょうか。

DJI Air 2S HD エンハンスド PL

静岡県側の南アルプスの入り口にある寸又峡(すまたきょう)は地元でも屈指の紅葉の名所。PLフィルターによって反射が抑えられ、寸又川独特の青みの強い色合いや紅葉の色も見応え良く映ってくれました。

PLフィルター

GOTO AKI

1972年 川崎市生まれ。1993年の世界一周の旅から現在まで56カ国を巡る。風景撮影に自然科学の視点とスナップ撮影の手法を取り入れ、新たな日本の風景写真を生み出している。2015年「キヤノンカレンダー」にて第66回全国カレンダー展日本商工会議所会頭賞受賞。2019年「terra」(写真展/キヤノンギャラリーS ・写真集/赤々舎 )にて、2020年日本写真協会賞新人賞受賞。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科・日本大学芸術学部写真学科 非常勤講師

GOTO AKI