NiSi光害カットフィルター Natural Night ナチュラルナイト/光学特性評価試験 結果報告書
2018年11月27日
写真家・色彩管理士 : 藪崎次郎
光害カットフィルターの製品特徴
NiSi光害カットフィルター Natural Night ナチュラルナイト(以下、光害カットフィルター)は、夜景撮影および星景撮影の際に、写真家・クリエイターにとって有害とされる水銀灯やナトリウム灯などの低演色性の光線が画角に映り込む症状、所謂「光害」に対して、それらを効率良く除去し、より自然で正確な色彩表現を実現するために開発された夜景撮影に特化した特殊フィルターである。
光学特性評価試験の目的
今回の評価試験では、光害カットフィルターの光学特性を調査し、どの波長の光を重点的にカットするかについて詳細に確認することを目的とする。
光学特性評価に使用する測定機器
光学特性評価に使用し測定機器は以下の通りである。尚、測定の正確性を期すために、光源となる照明装置には、輝線スペクトルが無くブロードで連続的なスペクトルを有する人工太陽照明灯を使用している
① 分光放射計 株式会社トプコンテクノハウス
Spectro Radio Mete
型式:SR-3AR
観察視野:2度( D65光源)
② 標準白色板 株式会社トプコンテクノハウス
標準白色板( Standard Diffusing Reflector )
型式:WS-3
Luminance factor(輝度係数) (0/45) 101.0%
素材:BaSO4(硫酸バリウム) SER.No.:11141232
③ 照明装置 セリック株式会社
人工太陽照明灯( Standard Diffusing Reflector )
型式:XC-100
測定機器および評価試験品の配置
光源の人工太陽照明灯から放射される連続的スペクトル光が、光害カットフィルターを通過する際に、どの波長が特徴的かつ効率的にカットされているかについて、分光放射計を用いて測定を行う。
今回は、評価試験品である光害カットフィルターを通過した透過光を標準白色板に反射させ、その反射光を分光放射計を使用して測定する。 尚、光源から放射された光軸に対して、NiSi光害カットフィルターおよび標準白色板の版面を直交するように配置。また分光放射計は、標準白色板に対して45度の角度を付けて配置する。
実際の配置は下図の通りである。
評価試験結果
先ずは照明装置に用いた「セリック株式会社製・人工太陽照明灯( Standard Diffusing Reflector )型式:XC-100」の分光放射輝度を下図に示す。
人工太陽照明灯XC-100は、自然太陽光に近いブロードな分光分布を示すことが分かる。
次に今回の評価試験品である「 NiSi光害カットフィルター 」を通過した光の分光放射輝度を下図に示す。
NiSi光害カットフィルターは、510nmから540nm および 570nmから600nm付近の波長域の光に対して効果的に抑制し、特に 570nmから600nm 付近の波長域の光に対しては、極めて高い遮断性能を有することが分かる。
考察
日本国内では、夜間の道路照明として、低圧ナトリウム灯と水銀灯が広く用いられている。低圧ナトリウム灯はD線と呼ばれる約589nmの輝線スペクトルであり、それ以外の波長成分は殆ど含まれていないため、発光色がオレンジ色に見える特徴があるが、NiSi光害カットフィルターは、この低圧ナトリウム灯の光に対して極めて高い遮断性能が認められる。また水銀灯の輝線スペクトルにおいても、一部効果的な抑制効果があると考察する。
尚、光害カットフィルターを使用する際の注意点として、510nmから540nm および 570nmから600nm付近の特定波長域の高い遮断性能により、使用するデジタルカメラによっては、マゼンタ系の色調に色被りする懸念がある。その場合、撮影のときにホワイトバランスを調整するか、もしくは現像の際に色被り補正を用い、適宜適正な色味に調整する必要がある。
以 上