NiSiフィルターガイド Vol.6:夜景撮影に最適なフィルター3選!
光害カットのナチュラルナイトとクリエイティブなV-クロスとアルーアストリーク
はじめに
こんにちは、フォトグラファーの上田晃司とコムロミホです。NiSiフィルターガイドVol.6では、夜景撮影や夜の撮影に役立つフィルターをご紹介します。今回主に使用したのは、ナチュラルナイトというフィルターで夜景や星景写真を撮影するときにオススメのフィルターになります。
ナチュラルナイト
角型
円形
夜景写真や星景写真を撮ってみると、目で見たときとちょっと違う感じに写っている、という経験はないでしょうか。たとえば、空がちょっと黄色味がかってたり、緑の光が写ってたり…。これは、街中にある街灯が水銀灯やナトリウム灯だからと考えられます。これらの光は低演色性で、色が出にくい、緑や黄色に転んでしまうことがあり、光害(ひかりがい)と呼ばれています。
このような光害をカットして、自然で正確な色彩表現を実現してくれるのが、ナチュラルナイトというフィルターです。NiSiフィルターのナチュラルナイトには角型と円形が用意されています。角型はV7などの角型ホルダーに入れることで、カメラのレンズ前に装着して使います。この角型のサイズは4種類あり、75×80mm、100×100mm、150×150mm、そしてさらに大きな180×180mmが用意されています。円形のフィルターは40.5〜112mmまであるので、ご使用のレンズに合わせて選んでみてください。
【基本編】光害カットで工場夜景をクリアに表現
今回は夜景の中でも工場夜景撮影を例にフィルターワークを紹介しようと思います。通常、工場夜景を普通に撮影した場合、街や工場などから出るさまざまな光が混ざってしまい、肉眼で見た印象よりも少し濁ったように写ってしまいます。特に空の色、工場の反射があまりきれいに写りません。これらの光が前述した光害というものです。
【普通に撮影した場合】SS:30秒 F値:8.0 ISO:200 WB:晴天 焦点距離:70 mm(35mm判換算)
では、どうしたら解決できるかですが、ホワイトバランスやピクチャーコントロール(ニコンの場合の名称。他のカメラメーカーでは「ピクチャースタイル(キヤノン)」「クリエイティブスタイル(ソニー)」などと呼びます)といったような仕上がり設定を変更しても改善しにくいです。そこで使用するのが、光害カットフィルターであるナチュラルナイトになります。このフィルターを使用すると、光害が除去されてすごくクリアに写るようになります。
今回使用するのは100×100mmの角型フィルター。V7などの角型ホルダーに装着して使用する。
では、さっそく撮影していくのですが、今回使用するモードはマニュアルモード、シャッタースピードは30秒、F値はF8、そしてISO感度は200に設定してあります。ホワイトバランスは晴天です。下の写真は実際にナチュラルナイトを装着して撮影したものです。
【ナチュラルナイト未使用】SS:30秒 F値:8.0 ISO:200 WB:晴天 焦点距離:70 mm(35mm判換算)
【ナチュラルナイト使用】SS:30秒 F値:8.0 ISO:200 WB:晴天 焦点距離:70mm(35mm判換算) ナチュラルナイト使用
先にお見せしたナチュラルナイト未使用の写真とホワイトバランスは変えていないにもかかわらず、フィルターを入れたことで光害が除去されて、非常にクリアになったのがわかるでしょうか。特に大きな違いは空の色です。空が青いほうが、この工場夜景の写真も際立ちますよね。このナチュラルナイトは着けるだけで抜けがよくなって濁りがなく、しっかりクリアな空を表現できています。また、工場自体も黄色っぽくなっておらず被写体の色が出ています。
ナチュラルナイトを使うか使わないかで、まったくと言っていいほどクオリティが変化していることがわかると思います。
さまざまな光で溢れる夜の街ではナチュラルナイトがマスト!
続いて、ナチュラルナイトを使った新宿の夜の街並み撮影をご紹介します。ナチュラルナイトは、工場夜景はもちろん、スナップ撮影にも有効です。
街の中にはさまざまな光源で溢れています。その中には、演色性の悪い光というものもあります。そういった光害をカットすることによって、より質のよい写真を撮ることができます。質のよい写真を撮っておくことで、RAW現像やレタッチをする際に自由度が上がるというメリットがあります。
下の写真は道を行き交う人々をシルエットにしながら撮影したものです。奥行きを表現したいなと思ったので、ローポジションつまり低い位置から撮影を行いました。低い位置で撮影することによって、手前の道路の部分もフレーミングすることができるので、奥行きが生まれやすくなります。カメラの設定は絞り優先モードで、絞り開放で撮影をしたいと思うのですが、この場所は非常に暗いため、レンズは50mmのF1.2を選びました。大きなボケを生かすことによって、より立体感が生まれるので、絞りはF1.2に設定します。そして、ホワイトバランスは晴天で撮影をします。
【ナチュラルナイト未使用】SS:1/200秒 F値:1.2 ISO:6400 EV:±0 WB:晴天 焦点距離:50mm(35mm判換算)光害の影響を受けて、少し濁って見える。
【ナチュラルナイト使用】SS:1/80秒 F値:1.2 ISO:6400 EV:±0 WB:晴天 焦点距離:50mm(35mm判換算) ナチュラルナイト使用フィルター未使用と比べるとかなりクリアになっている。そして、光害の影響がなくなったので、被写体本来の色がしっかりと出ている。
夜景も細かい目線で見ていくと街灯がいっぱい写っているわけです。つまり、街中も水銀灯やナトリウム灯が結構あるので、撮ってみると、緑っぽかったり黄色っぽかったりというシーンはあります。意外と気にされる方は少ないかもしれませんが、最初からきれいな光で撮影しておくと、後からRAW現像やレタッチの幅が広がるのです。たとえばRAW現像時にホワイトバランスを変えたとしても、すでに写っているものが黄色っぽかったら、黄色が強くなるだけですが、ちゃんと白いものが白く写っていれば、そこからの追い込みができるようになります。
【フィルターなしRAW現像】全体的に黄色っぽい色が乗っている雰囲気になっている。
【フィルターありRAW現像】被写体の本来の色がしっかり出ていることがわかる。
ちなみに、街スナップの場合、手持ちで撮影することが多いと思います。そういった際は、円形フィルターがオススメです。工場夜景や星景撮影だと三脚を使用しながら撮影することができるので、撮影機材が大きくなっても気にならないかもしれませんが、スナップだとレンズの前に着けられる円形フィルターのほうが楽だと思います。また、円形の場合レンズフードもはめることができるというメリットがあります。
【実践編】夜景にキラキラ感をプラスするV-クロス
夜景撮影時にオススメのフィルターはナチュラルナイト以外にもさまざまなものがあります。まずは、V-クロスフィルターをご紹介します。
V-クロスフィルター
V-クロスフィルターは十字状の光の線をつくる、つまり光条をつくることができるフィルターです。NiSiのこのフィルターは、フィルター枠を回転することでクロスする光の線の数を4本と8本に可変することができます。
【V-クロスフィルター未使用】SS:8秒 F値:4.0 ISO:200 EV:-0.33 WB:オート 焦点距離:70mm(35mm判換算)
【V-クロスフィルター使用(4本)】SS:8秒 F値:4.0 ISO:200 EV:-0.33 WB:オート 焦点距離:70mm(35mm判換算) V-クロスフィルター使用
【V-クロスフィルター使用(8本)】SS:8秒 F値:4.0 ISO:200 EV:-0.33 WB:オート 焦点距離:70mm(35mm判換算) V-クロスフィルター使用
フィルター枠を回転させることでクロスの本数を変えられる。
通常、光条を出すには絞りを絞って撮影をする必要があります。一方で、V-クロスフィルターを使えば、絞り開放付近でも遠景であれば光条を出せるので非常に便利です。
今回は工場夜景に使いましたが、もちろん夜スナップや、イルミネーション、通常の夜景撮影でも使えますので、どんどん使っていただきたいと思います。
映画のような光の筋を生み出すアルーアストリーク
続いて夜景撮影時にオススメしたいフィルターは、アルーアストリーク(Allure Streak)というフィルターです。
アルーアストリーク
ブルーとオレンジの2色用意されている。
アルーアストリークは、真横に線が引いてあるフィルター。
映画用のレンズには、アナモフィックレンズ、もしくはアナモルフィックレンズというものがあります。このアナモフィックレンズの魅力は、光源に対してシャキーンと横向きにフレアが発生する点です。映画やCMなどでもよく使われますね。しかし、このレンズは非常に高価で扱いが大変なものです。アルーアストリークは、アナモフィックレンズよりも安価で効果をかんたんに再現できるフィルターなのです。
アルーアストリークもV-クロスフィルター同様、工場夜景で使ってみました。下の写真のように、長く伸びるフレアが発生しているのがわかるでしょう。これがアルーアストリークのおもしろいところです。ただ、水平方向だとフレアが工場にかかって、少しうるさい感じになってしまいます。
【アルーアストリーク未使用】SS:10秒 F値:5.6 ISO:200 EV:-0.33 WB:オート 焦点距離:70mm(35mm判換算)
【アルーアストリーク使用】SS:10秒 F値:5.6 ISO:200 EV:-0.33 WB:オート 焦点距離:70mm(35mm判換算) アルーアストリーク・ブルー使用フレアが工場にかかるとうるさい印象に
このフィルターは、フィルター枠がクルクル回るので、光源に対してのフレアの出方を変えられます。そこで、フレアが少し斜めになるように使ってみると、空に光跡ができているようでおもしろい表現にすることができました。
SS:10秒 F値:5.6 ISO:200 EV:-0.33 WB:オート 焦点距離:70mm(35mm判換算) アルーアストリーク・ブルー使用
SS:10秒 F値:5.6 ISO:200 EV:-0.33 WB:オート 焦点距離:70mm(35mm判換算) アルーアストリーク・オレンジ使用
今回の工場夜景でいうとブルーがイメージに合う感じがしますし、たとえば街スナップだとオレンジ色の光で格好よく表現してあげるのも素敵だと思います。
V-クロスフィルターもアルーアストリークもクリエイティブに使うフィルターになりますので、トライしてみたい方はぜひ使っていただきたいと思います。
おわりに
今回はナチュラルナイトを中心に、工場夜景や夜スナップに活用できるフィルターをご紹介させていただきました。ぜひ、みなさんも参考にしてみていただければと思います。
NiSiフィルターガイドVol.7もお楽しみに!
上田晃司
米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強をしながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。ドローン撮影や特機での撮影も得意! 近年では、講演や執筆活動も行っている。主な著書は、「写真がもっと上手くなる デジタル一眼 撮影テクニック事典101」や「写真が上手くなる デジタル一眼 基本&撮影ワザ」「ニコン デジタルメニュー100%活用ガイド」などがある。 YouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」でカメラのテクニックやレビューを配信。ニコンカレッジ、ルミックスアカデミー講師。
コムロミホ
文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラフィーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。またYouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。カメラや写真が好きな人が集まるアトリエ「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。