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NiSiフィルターガイド Vol.7:FS NDで撮影がより自由に、より快適に!

進化したNDフィルター〜SWIFT FS NDキット〜

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目次

はじめに

こんにちは、フォトグラファーの上田晃司とコムロミホです。NiSiフィルターガイドVol.7では、NiSiフィルターの最新のフィルターキット、「SWIFT FS NDキット」についてご紹介します。

脱着に便利なSWIFTシステム

まずはキットの内容をご紹介する前に、SWIFTシステムについてお話しします。
以下の画像のようなアダプターリングというものがあり、これをあらかじめレンズの前面につけておくことによって、フィルターの脱着が楽になるというものです。

アダプターリング

アダプターリング

一般的に円形フィルターは、ねじが切ってあり、ねじ込んで装着します。そのため、脱着に意外と時間がかかってしまい、焦ってしまったり、フィルターやカメラ・レンズそのものを落としてしまったりなど、注意が必要になることが多いです。
一方で、SWIFTシステムのフィルターの場合、アダプターリングに押し込んで被せるだけで装着することができるので、一般的な円形フィルターに比べると、脱着を非常に素早く行うことができます。ただ被せるだけなので、「撮影中に簡単に外れてしまうのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。一度装着すれば、簡単には外れない保持力がありますので、安心して使うことが可能です。被せるだけで使えるフィルターシステムなので、速写性にも優れ、楽にフィルターワークができるという魅力的なシステムです。

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「ねじ込み」ではなく「押し込み」なので、素早い脱着が可能。

フィルターワークに必要なものすべてがこの中に!

次に本題である「SWIFT FS NDキット」についてご紹介します。このキットの中身は、NDフィルターが3種類、そしてアダプターリングが数種類セットになったものになります。フィルターワークに必要となる基本的なものがすべてセットになっているので、このキットがあればすぐに撮影が可能です。

NDフィルター3種類

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アダプターリング4種類

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※後述しますが、FS NDフィルターの口径によって付属するアダプターリングの種類が異なります。

そして、このキットにはフィルターポーチも付属しています。フィルターワークをしていると、特にこのSWIFTシステムの場合はフィルターを脱着する機会が増えると思います。そうすると、撮った後にフィルターをどこにしまうかがわずらわしく感じることも意外とあるでしょう。読者の中には、一回一回フィルターをケースに出し入れすることを面倒に思っている方もいるかと思います。しかし、キットに付属しているこのフィルターポーチは、最大で7枚のフィルターを入れられ、ふたを開ければ素早く収納することが可能です。コンパクトでありながら、全キットを収納することができるようになっています。

フィルターポーチ

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最大7枚のフィルターやアダプターリングを収納できる大容量の構造になっている。

また、このフィルターポーチの特長は、後ろにマジックテープがあることです。ループ状になったマジックテープを使うことで、例えばフィルターポーチを三脚に固定したり、カメラバッグのストラップ部分に固定したりできます。そうすることで、すぐにフィルターの出し入れが可能になるので、ぜひ活用していただきたいなと思います。

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マジックテープを使えば、三脚やカバンに取り付けることも可能。よりフィルターワークの効率化をはかることが可能だ。もちろん三脚に取り付ける場合は、三脚が倒れないように注意。

ひと目で使いたいフィルターがわかるカラーバリエーション

このSWIFT FS NDキットには3種類のNDフィルターが入っています。ND8、ND64、そしてND1000がセットになっており、NDとして幅広いフィルターワークを楽しめます。画期的なポイントは、これらNDフィルターはそれぞれリングの色が違うということです。例えば、ND8はブルー、ND64がグリーン、そしてND1000がオレンジっぽい色になっています。

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濃度によって色が違うので、使いたいフィルターがすぐにわかる。

それぞれの色が違うことで、ひと目で今どの濃度のNDフィルターをつけているのかがすぐに確認できるようになります。フィルターを選ぶ際、「このNDフィルターの濃度はなんだっけ?」と時間がかかったり、そもそも周囲が暗いと全然わからなかったりします。一方で、このNDフィルターは色で識別できるようになっていますので、「ND64をつけよう」と思ったらグリーンのフィルターを探せばすぐに使うことができ、時短になる魅力があります。あとは、色がついているのが単純におしゃれですよね。今後もNDフィルターの種類が増えてきたら、いろんな色が増えてくるんだろうなと期待してしまいます。

色被りを抑えてくれる「フルスペクトラム」

SWIFT FS NDキットの「FS」はどのような意味かご存知でしょうか? この「FS」は「フルスペクトラム(Full Spectrum:全範囲の)」の頭文字をとったものです。実際にどんなNDフィルターかと言いますと、従来のNDフィルターは濃度が濃くなるほど色被りや減光ムラが強く発生しました。それに悩まされた経験がある方も多いと思います。特に色被りについて言えば、緑だったり、黄色だったり、マゼンタだったり、青だったり、使用するNDフィルターの種類にもよりますが、濃いフィルターほど色被りが目立っていました。しかし、このFS NDでは、紫外線域(UV)から赤外線域(IR)まで全波長において均等に光を吸収することができるため、高濃度のNDフィルターでも色被りが発生しにくいというのが、最大の特長になります。
では、実際にこちらのフルスペクトラムNDフィルターはどれくらいの効果を得ることができるのか、まずは下の比較画像をご覧ください。
この3枚の画像は、1枚目がフィルターをつけずに撮影したもの、2枚目が他社製のNDフィルターを使用したもの、そして3枚目がNiSiフィルターのFS NDフィルターを使用して撮影したものです。カメラの設定は、色被りの違いがわかりやすくなるように、露出や、ホワイトバランスなどの色に関する設定を固定して撮影を行っています。

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【フィルター未使用】撮影データ:SS:1/125秒 F値:11 ISO:64 EV:+0.33 WB:晴天 焦点距離:110mm(35mm判換算)

こちらはNDフィルターを使用していない写真です。NDフィルターを使用していないので、そのままのリアルでニュートラルな画が見えるかと思います。

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【他社製のNDフィルター使用】撮影データ:SS:8秒 F値:11 ISO:64 EV:+0.33 WB:晴天 焦点距離:110mm(35mm判換算)

こちらは他社製のNDフィルターを使用した写真です。NDの濃度は1000です。前述のとおり、ND1000ぐらい濃い濃度になると、色被りがだいぶ目立ってきます。実際に、この写真は夕方手前に撮ったので、本来少し夕日の雰囲気が出ているはずですが、この写真を見ると空も海面も青みが強くなっているのがわかるかと思います。結論を言うと、青被りをしている画像ということです。

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【NiSiフィルター製FS NDフィルター使用】撮影データ:SS:8秒 F値:11 ISO:64 EV:+0.33 WB:晴天 焦点距離:110mm(35mm判換算)

そして、こちらの写真がFS NDを使用した写真です。上と同じくND1000を使用しています。こちらの写真はフィルター未使用のときとほとんど同じ色味なのがわかるかと思います。他社製のND1000と比べると、余計な青みもなく、夕日の雰囲気なども感じられます。FS NDのほうが圧倒的に優秀だということがこの画像からもわかりますよね。撮影者としても、被写体の色がしっかりと出てくれるというのは嬉しいと思いますし、NDフィルターをつけていないときと同じような画をND1000で得られることは大きな意味があることだと思います。

幅広いレンズに対応可能な点も大きな魅力

SWIFT FS NDキットには4種類のラインナップがあり、お持ちのレンズのフィルター径に応じて選ぶことが可能です。
まず最も小さなサイズが49mm径のFS NDキットになります。49mm径のフィルターを装着するために、4種類のアダプターリングが付属しており、「40.5mm」「43mm」「46mm」「49mm」(レンズ側のフィルター径)となります。例えば、「40.5mmのアダプターリングをつけたレンズ」「43mmのアダプターリングをつけたレンズ」の2種類があったとしても、どちらにも49mm径のフィルターを装着することができます。他にも3つのラインナップがあり、62mm径、82mm径、そして一番大きいサイズの95mm径があります。

FS NDのフィルター径
49mm 62mm 82mm 95mm
付属するアダプターリング
40.5mm
43mm
46mm
49mm
52mm
55mm
58mm
62mm
67mm
72mmc
77mm
82mm
86mm
95mm

このように、各フィルターにアダプターリングが2個または4個ついていますので、ご自身のお持ちのレンズに合わせてキットを購入するとよいでしょう。

様々な組み合わせでより自由な表現を実現

NiSiフィルターのSWIFTシステムには、FS NDキットの他にもラインナップがあり、私たちも愛用している、可変ND TRUE COLOR ND VARIOというバリアブルNDフィルターもSWIFTシステムに対応しています。つまり、アダプターリングではなくND VARIOに、例えばグリーンのND64を取り付けることも可能ということです。他にもSWIFT TRUE COLOR CPLや、SWIFTブラックミストなどと掛け合わせて使ったりもできます。このようにフィルターの重ねづけができることで、より表現の幅を広げることができるようになります。また、複数のNDフィルターを掛け合わせることも可能で、例えばND1000にND64を掛け合わせてND64000として使うことができるなど、非常にスピーディーで楽に、様々なNDの濃さにすることもできます。前述したフルスペクトラムのおかげで、濃度が濃くなっていっても安心して使えるというのは非常に魅力的です。ただし、重ねづけをすると、どうしてもフィルターに高さが出てきます。そうすると、例えば広角レンズになればなるほどケラれていくことがありますので、重ねづけをする場合はあらかじめテスト撮影をして、どれくらいでケラれないかを確認することをおすすめします。

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NDフィルターを重ねづけすることも可能。特に広角レンズなどではケラれやすいので、注意が必要。

フィルターもレンズも守ってくれる独自のキャップ!

SWIFTシステムの便利なところ、それはアダプターリングすべてにキャップが付いているところです。通常、アダプターリングをつけると、フィルター径が変わってしまうのでレンズキャップがはまらなくなってしまいます。レンズキャップがない状態で持ち運ぶのは不安ですよね。しかし、SWIFT FS NDキットには各アダプターリング、FS NDフィルターに対応したキャップがついているので、どんなときでもレンズやフィルターを傷などから守ってくれます。前述したフィルターポーチにも、レンズキャップをつけた状態で収納できるので安心です。

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どんなに優れたフィルターでも傷がついたり、汚れたりすれば性能は落ちるもの。フィルターも保護してくれるレンズキャップは助かるアイテムだ。アダプターリングにつけられるところもポイント。

おわりに

今回はSWIFT FS NDキットについてご紹介しました。とにかく素早くフィルターワークを行いたいという方には最適ですので、より詳しく知りたい方は本サイトのページもチェックしてみてください。
NiSiフィルターガイドVol.8もお楽しみに!


上田晃司

米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強をしながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。ドローン撮影や特機での撮影も得意! 近年では、講演や執筆活動も行っている。主な著書は、「写真がもっと上手くなる デジタル一眼 撮影テクニック事典101」や「写真が上手くなる デジタル一眼 基本&撮影ワザ」「ニコン デジタルメニュー100%活用ガイド」などがある。 YouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」でカメラのテクニックやレビューを配信。ニコンカレッジ、ルミックスアカデミー講師。

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コムロミホ

文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラフィーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。またYouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。カメラや写真が好きな人が集まるアトリエ「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。

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