クローズアップレンズで静物を撮る Vol. 02
雑誌の表紙を飾れる静物マクロ撮影
雑誌の表紙を飾るクオリティのマクロ撮影には、マクロレンズが必須です。Vol.02の今回は、マクロの静物撮影のプロフェッショナルである北郷 仁さんに、通常マクロレンズを使用する静物マクロ撮影をクローズアップレンズNCキットを使って行なってもらいました。
プロの静物マクロ撮影に必要な基本の機材
北郷さんは、静物マクロ撮影のエキスパートとして20年以上活躍されています。お米の粒ひとつから、万年筆のペン先やカメラなど、さまざまな物を撮影されていますが、基本的に静物の撮影においてはすべて「一眼レフ」と「マクロレンズ」を使用しています。
現在では、ミラーレス機を持っている方も多いかと思いますが、ミラーレス機ではEVFまたは背面液晶で仕上がりの状態を見ながら撮影できるため、初めてのマクロ撮影でも不安なくトライできます。
オールドカメラを撮る
Nikon D850, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR + クローズアップレンズNCキット, 82mm相当, 1/125秒, F22, ISO 64
Vol.01で解説した撮影までの基本的な流れは、大型のストロボを使用する撮影でも同様です。このカットでは、ニコンのカメラに対する「質実剛健」なイメージと、「雑誌の表紙を飾る」ような華やかな雰囲気をひとつのカットにまとめるべく撮影しています。「Nikon」と「FM2/T」のロゴ、そしてレンズ前面の刻印など、ライティングを施すことによって、プリントではなく凹凸のある刻印であることもしっかりと写し込むことができました。クローズアップレンズを使った撮影でもマクロレンズに肉薄する描写で、四隅まできっちりと解像し、レンズのコーティングの美しさやチタン外装のひんやりとした触感まで伝わってきそうな一枚に仕上がっています。
実際の撮影状況
仕上がった写真を実際どのように撮影したのか、撮影現場での状況を見ていきましょう。
01:今回の撮影にはNikon D850、AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VRにクローズアップレンズNCキットを装着して行いました。
02:メインライトです。被写体であるカメラ(Nikon New FM2/T)を照明する役割を担っています。さらに、被写体であるカメラに装着されているレンズの写り込みをコントロールする目的も兼ねています。
03:サブライト(フィルインライト)です。メインライト(キーライト)で補えないところを照明する役割を担っています。
04:サブライトのディフューザーです。乳白アクリル板を使用しています。
05:メインライトのディフューザーです。こちらも乳白アクリル板を使用しています。
06:銀色のレフ板です。被写体であるカメラ上部のディテールが影になってしまい黒つぶれしてしまうため、地に敷いている黒色の布バックとの分離も兼ねて、少しだけこの銀レフで起こしています。
07:黒布バックは起毛素材の黒布です。手芸用品店などで入手できます。
ライティングや被写体であるカメラの位置を調整をしながら、何度か撮影し、その都度、撮影した画像を確認して、良い位置、ライティングを決めていきます。照明、被写体の位置ともに、ほんの数mm単位の調整でイメージが変わってきますので、時間をかけて丁寧に調整を行なっていきます。
Nikon D850, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR + クローズアップレンズNCキット, 95mm相当, 1/125秒, F22, ISO 64
前カットと同様のステップで撮影した「LEICA M6」です。このカットでは、ライカでは外せない中央の赤いライカバッジをポイントに、外装のエッジの美しさとライカレンズの存在感をクールに気高く写すというイメージで撮影しています。クローズアップレンズNCキットはマスターレンズの性能をスポイルすることなく被写体に迫ることができ、絞ればキリっと引き締まった描写となりますから、オンラインショップの商品のイメージカット撮影や特筆すべきディテールにグっと迫った撮影でも、撮り手の思いにしっかりと応えてくれます。
POINT 絞り値の違いによる写りの変化を知って、表現に生かす
クローズアップレンズNCキットを装着して撮影する際には、ご自身の使用するマスターレンズとの組み合わせでの「絞りによる写りの変化」を知っておくことで、撮りたい被写体や表現したいことに生かすことができます。
Nikon D850, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR + クローズアップレンズNCキット, 100mm相当, 1/125秒, F16, ISO 64
拡大して見なければわからない程度の変化ではありますが、 AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR を使用した場合、絞りを開けていくことで、若干シャープネスが下がり、四隅がわずかに減光しています。写真の色鉛筆のような平板で文字の入った被写体や、複写など、すみずみまでしっかりと解像した画を得たい場合には、F8以上に絞って撮影すると良いでしょう。また、花など柔らかで立体感、奥行き感のある被写体を選んだ際には、四隅の減光によって、ピント面をふわっと浮き上がるように際立たせることができますし、クローズアップレンズNCキットは色収差のないアポクロマート仕様ですから、開放での描写を生かした表現ができます。
F16
F11
F8
F5.6
F4
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北郷 仁 Jin Hongo
1975年東京都生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、同大学大学院芸術学研究科メディア・アート専攻修了。雑誌、書籍、webなどで小物の商品撮影や複写など「地味な撮影」を得意とする。プライベートでは鉄道や花を撮影している。カメラとレンズのみならず、ストロボや三脚などの周辺アイテムも大好き。(公社)日本写真家協会(JPS)会員。
学生時代から30年来愛用するのはNikonのカメラ、レンズ。歴代のNikon機はほぼ網羅しているほど。ここに写っているもの以外にも、ニッコールレンズは単焦点からズームレンズまで130本ほど所有し、各種撮影の依頼に応えている。マクロ撮影においてはPCマイクロニッコール85mmや60mmF2.8、105mmF2.8を駆使することが多い。