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ブラックミスト&アルーアソフトで海外のテーブルフォトのような写真を撮る

ブラックミスト&アルーアソフトで海外のテーブルフォトのような写真を撮る

目次

海外の雑誌に出てくるようなテーブルフォトを撮りたいけれど、いざ撮影してみると「何かが違う」と感じている人は多いのではないでしょうか。その答えに一歩近づくのが、フィルターの使用です。映画のような雰囲気に撮れるブラックミストと、柔らかい描写のアルーアソフト。この2つのフィルターを使い、フォトグラファーの茶々さんにテーブルフォトを撮影していただきました。
茶々さんは秋田県在住のフォトグラファー。自分で作ったお菓子や料理をはじめ、コンビニスイーツやお取り寄せスイーツ、街で見つけた美味しそうなスイーツなどをスタイリングして撮影しています。ここでは、茶々さんがどのようなイメージでお菓子を作り、撮影をしていくのか、基本の撮影方法からフィルターを使った撮影のコツまでをインタビューしました。

テーブルフォトの光と構図の基本

――まずは茶々さんの使用機材について教えてください。
Sony α7ⅢとFE 90mm F2.8 Macro G OSSを使っています。中望遠のマクロレンズはテーブルフォトには欠かせません。その理由の1つは、歪みをおさえられること。広角になるほどものの形に歪みが生じてしまうので、90mm程度の焦点距離が欲しいところです。次に寄れること。食べ物のシズル感や質感をしっかり表現することができます。以前はズームレンズの望遠側で撮影してトリミングしていたのですが、マクロレンズの精細な描写には到底及びませんでした……。FE 90mm F2.8 Macro G OSSは、ボケ感も自然でとても好きなレンズです。他には、ストロボとディフューザー、三脚を使用しています。ストロボは部屋の明るさが足りないときや商品撮影、シャッター速度を稼ぎたいときに使用します。三脚は構図を詰めるのに必須です。

テーブルフォト撮影の機材

テーブルフォト撮影の機材
カメラ:Sony α7Ⅲ
レンズ:FE 90mm F2.8 Macro G OSS
三脚:SLIK ライトカーボン E83
ストロボ:GODOX AD300 Pro
ソフトボックス:Sokani 60cmクイックセットアップソフトボックス
LEDライト:GODOX ML60Bi
ワイヤレスフラッシュトリガー:GODOX XPro-S

――撮影するときは、どんな光を意識していますか?
光はある程度の影を作り立体感を出すために、半逆光やサイド光のやや上めからの光で撮ることが多いですね。基本は太陽光が入る明るい窓側にテーブルを置いて撮影しています。ストロボを使うときも同様に、半逆光やサイド光になるように設置します。
日常感を出したいときは自然光、商品撮影や外の明るさを気にせずに撮影したいときはストロボを使います。今回の2つの撮影でもストロボを使用しています。
レフ板は、スイーツのイメージによって使い分けています。明るいイメージのスイーツは、全体的に光が回って影が薄いほうが良いので、濃い影をレフ板で起こします。逆にクールでシックなイメージで撮りたいときは、レフ板をあえて使わず影を活かして撮ります。どこか一部だけに光を当てたいときは黒いレフ板で光を遮ったりします。

セッティング

カーテンはディフューザーのような役割を果たすので、窓側のカーテン越しの光は柔らかい光が回ります。

――構図はどうやって決めていきますか?
まず、メインの被写体を置く位置を決めて、その対角線上に脇役の被写体を置き、画面のバランスをとることを意識しています。メインの被写体は三分割構図をベースに考えて、縦と横の線の交点を意識しながら配置することが多いです。ど真ん中から外すと、間延びする感じを回避できるように思います。例えば左下の交点に被写体を配置したら、右上の交点に副題の被写体を置くといった感じです。さらに空いている空間に小物を置いていきます。
配置していくときは、余白を残すことが大事。隙間を全て小物で埋めると息苦しい構図になるので、画面の四隅のどこかに抜けを作るようにしています。少しずつ構図を詰めていく作業になるので、三脚は必須です! 大まかに配置してライブビューで構図を確認しながら、細かくバランスを詰めていきます。

構図

ダークなお菓子に使いたいブラックミスト

――どんなお菓子にブラックミストを使ってみようと思いましたか?
ブラックミストを使うとどんな写りになるのかテスト撮影してみると、全体的に柔らかい雰囲気になることがわかりました。光が拡散するので、暗部も自然に持ち上がり、全体に光が回る感じです。影の黒い部分にニュアンスを持たせられるので、ダークな色使いの多いカフェっぽい雰囲気にマッチしそうかな、と思いました。柔らかい雰囲気はスポンジやパウンドケーキの質感を引き出してくれそうなので、「モカロールケーキ」を作ってみることに。背景は暗くして、しっとりした雰囲気に仕上げていきます。イメージは海外のテーブルフォトのような、暗めでコントラストの高い写真です。
――どんなお菓子にブラックミストを使ってみようと思いましたか?
イメージ通りの仕上がりでした。光が拡散してスポンジ部分全体に回るので、柔らかそうな質感を出すことができました。また、暗部が持ち上がるので、陰になった部分をレフ板で起こしたり、ライティングをする必要がなく、自然な雰囲気で持ち上がってくれました。カフェっぽく現像をするとき、私はいつも少し暗めに撮ってトーンカーブの一番下を持ち上げ、いわゆるシャドーフェイズをかけるのですが、それがブラックミストを使っただけで表現できました。

ブラックミストなし

ブラックミストなし

ブラックミストあり

ブラックミストあり ブラックミストを使った作例は、モカクリームの部分を中心に、全体的に明るく持ち上がっているのがわかります。

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自然光で撮影するには光量が足りなかったので、ストロボを使用。AD300pro1灯を左側に設置し、斜め上から当てています。ソフトボックスとハニカムグリッドを装着し、さらにディフューザーをセット。ハニカムグリッドを装着すると光が直進し、被写体にスポット的な光を当てることができます。その光を少しだけ柔らかく拡散したかったので、ディフューザーを挟みました。

――反対に、ブラックミストが向いていないスイーツもありますか?
光が拡散するので、艶感のあるフルーツを飾ったケーキはどうかと思い、シャインマスカットのケーキを作って試してみたんです。でも、撮影してみると何か違う……。フルーツやゼリー、テンパリングしたお菓子などは、光の反射で艶感が出ますが、ブラックミストで光を拡散することで、艶感がやや弱くなってしまうように感じます。また、明るく可愛い雰囲気のお菓子だと、ファンシーになりすぎるかもしれませんね。ブラックミストは、ダークな雰囲気のお菓子を調和するのにハマると思います。

ブラックミストなし

ブラックミストなし

ブラックミストあり

ブラックミストあり シャインマスカットのケーキをブラックミストをつけて撮影。艶感が弱くなるので、あまりハマらなかった感じです。

クリスマスに使いたいアルーアソフト

――アルーアソフトを使ってみていかがでしたか?
アルーアソフトをテスト撮影してみると、ブラックミストよりも光への反応が強く、明るい部分をより印象的に表現できると感じました。ブラックミスト同様に、暗部を持ち上げる効果もあるようです。
光を入れたらふわっとしてアクセントになるかなと思い、蝋燭をスタイリングに入れることを考えました。あまり大きな光源を入れるとピカーンとなり、主役の被写体よりもそっちに視線が誘導されてしまうので、スタイリングで小さめのライトや蝋燭などを控えめに入れるといいようです。
スイーツは、柔らかい質感が活かされそうなマフィンを作り、背景に蝋燭とライトを配置。マフィンは1つが小さいので、賑やかでかわいい感じを出すために、複数配置しました。蝋燭の光がマフィンと近いとうるさい感じになるので、30cmくらい離して奥に配置しています。奥側のマフィンは見切れさせ、手前のマフィンが主役として目立つように構図を整えました。
アルーアソフトは、クリスマスやハロウィンなど、ライトを使ったテーブルフォトのスタイリングをする際におすすめですね。

アルーアソフトなし

アルーアソフトなし

アルーアソフトあり

アルーアソフトあり アルーアソフトを使った作例は、蝋燭の光がふわっとなり幻想的な印象に。

光源

×光源が手前に大きく入ってしまうと少しうるさい感じがします。

セッティング

日中で光量は十分あったのですが、自然光だとイルミネーションライトの存在感を引き出すのが難しかったので、ストロボとLEDライトを使用。背景側にはあまり光がいかないようLEDライトは下を向かせ、手前のマフィンだけにメインライトが当たるようにしました。LED ライトではやや暗かったので、フィルインライトとしてソフトボックスを装着したストロボを天井に向け、バウンスした光で全体の明るさを上げています。

――2つのフィルターを使ってみて、いかがでしたか?
ブラックミストとアルーアソフトを比べると、ブラックミストはシャドウもハイライトも全体的にふわっと明るく持ち上がる感じがします。アルーアソフトはよりハイライトがふわっと華やかになる感じ。
どちらもシャドウを持ち上げてハイライトを印象的に拡散してくれるので、現像やレタッチでシャドウやハイライトを調整しなくても、自分の好きな感じに持っていってくれます。現像やレタッチが苦手、あるいは時間をかけたくない人でも撮って出しで印象的な写真になるので、テーブルフォトでパパッといい感じに仕上げたい人におすすめです。


茶々 / Chihaya Kudo

茶々 / Chihaya Kudo