アルーアスナップで見つける、新しい日常
スナップ写真が苦手。何を撮ったらいいかわからない。いつも同じような写真ばかりになってしまう……。そんな人におすすめしたいのが、アルーアソフトを使った「アルーアスナップ」。ここでは、京都や東京を中心に普段からスナップ撮影を楽しむ4人のフォトグラファーに、アルーアスナップの楽しさと、使い方のコツを聞きました。
「日常」をアルーアソフトで切り取ってみる
——まず、みなさんは普段、どんなものを撮影するのが好きか、またアルーアソフトを使ってどんな撮影イメージを持ったかについて教えてください。
よーへい 家の近所とか、京都の街並みとか、なんとなくブラブラしながらスナップするのが好きです。作り込んだ撮影や目的を持ってどこかへ撮りに行くのも好きなんですが、日常で出会う素敵な瞬間を切り取るのが楽しいですね。アルーアソフトは優しさを感じる表現に仕上がりそうなので、自分が直感的に優しさや柔らかさを感じるシーンに使えばいいかなって思いました。
新緑の季節、木漏れ日が反射する池。アメンボが作る波紋や池に映った景色がいい雰囲気だなーと思い撮りました。夏の日って眩しくて、実際の視界も光でフワッーってなるときがありません? それを表現できたらと、アルーアソフトを使ってみました。(よーへい)
みつる どこに行くときも必ずカメラを持ち歩いていて、日常の瞬間を撮ることが多いです。ふとした日常の風景の中に、「違和感」を感じるとシャッターを切ることが多いかな。たとえば夏のどうってことのない街並みに、綺麗に装った舞妓さんがポツンと歩いていたり、逆光で一箇所だけフワッと光が差していたり……。うまく言えないけど、なんか違うぞって思うときです。アルーアソフトも、普段のスナップ撮影と同様、そういう違和感を探して使ってみようと思いました。
喫茶店の外でコーヒーを飲みながら、雲が綺麗だなとぼんやり見ていたら、舞妓さんが通りました。こういう日常って京都特有ですが、日常の違和感を意識して撮った1枚。(みつる)
ゆーき 僕は流れがある場所や、動きを感じる場所が好きですね。街中で撮るときは行き交う人々の流れを、自然なら空気の流れみたいなものを切り取りたいと思っています。街中で光の差し込む時間帯に、光と影のメリハリを意識して撮影したりします。アルーアソフトはソフト系フィルターなので、グロウ(光が拡散される)効果を活かすよう、光の差し込んでいる時間帯を狙ったり、夜に街頭などの電気を撮っても面白いかなと思いました。
場所は夜の渋谷のスクランンブル交差点。普段当たり前に見ている景色から遠ざけたイメージにしつつ、人の流れを表現したいなと思い、カタチに捉われずに曖昧な表現にしてみました。1/30秒と比較的スローシャッターで撮影しています。(ゆーき)
りく 僕は綺麗だなぁ、なんかいいなぁと思った景色を素直に撮る感じですね。色や形、質感などディテールを切り取るのがとくに好きで、木の幹や壁の表情などを撮ったりします。絞ってシャープで精細に表現することがほとんどなので、ソフト系フィルターはどう使えばいいのか、かなり悩みました……。
日常の写真を撮るときは、見えている景色の中から色や形に惹かれる部分を切り取ります。この写真は嵐山の川沿いを歩いていたときにボートがたくさん並んでいるのを見つけて、一部を切り取ったら造形が綺麗だなぁと思って撮影しました。(りく)
できない「縛り」が欲しかったのかも!
——実際にアルーアソフトを使って撮影してみて、どんな印象を持ちましたか?
よーへい 「眩しさ」を表現できるなって思いました。たとえば、ハンガーに光が当たっているところとか、日常のわずかな光もアルーアソフトを使うとフワッとなってくれます。柔らかくしつつも、黒はフェードせずに色が出るので、コントラストはしっかり残る感じ。ソフト系フィルターの中では扱いやすい印象ですね。
友達のお店にお邪魔したときに、窓から入ってくる光が綺麗だなと思って見ると、真鍮のハンガーが眩しく光っていました。なんか爽やかでいいなぁという気持ちを切り取りました。(よーへい)
みつる 逆光でフワッとした光を最新の機材で撮ると、パキっと隅々まで写りすぎるんですよね。撮った写真を見ると「こんな感じじゃなかったよなー」ってなるけど、アルーアソフトを使うと目で見た感じがそのまま写る気がする。
よーへい そういう意味では、オールドレンズの撮り方に似てるよね。たとえば曇りの日に、室内で窓から入る光がフワーっと拡散する感じなんかは、オールドレンズのほうがイメージ通りの光を捉えられたりする。
みつる 下の写真は、逆光でいろんな光が入ってきている状態ですが、最新のレンズだとこうは写らない。そもそも人が「綺麗やな」と思う感覚は全員違うのに、最新の機材で撮ると、ちゃんと写ってみんな同じ表現になっちゃうんですよね。人間の見ている視界って、そんなにシャープで綺麗じゃなくて、注視しているところ以外はぼんやりしていたりするじゃないですか。その感じがアルーアソフトをつけたときの曖昧さに近い気がします。綺麗に写りすぎないところがいいなって思いました。
清水寺から京都の夕陽を一望できる場所で、ここから見る西山の日没が私のお気に入りです。この日は直感的に夕方焼けるだろうなと思って訪れました。太陽の形が綺麗な状態を保ったまま空の色が青と紅色に染まり、京都の街を優しく包み込みました。とても心が和む景色だったのを覚えてます。(みつる)
よーへい 一方で、光が強すぎる場面でアルーアソフトを使うと、モヤモヤしすぎちゃう面はあります。逆光が強すぎて撮れへん、というのはフィルムカメラに近い感じ。フィルムカメラにオールドレンズをつけてご来光なんか撮ったら、光が飽和してわけのわからん写真になる(笑)。
ゆーき 光が当たっている部分は、グロウ効果が強いですよね。オールドレンズやフィルムカメラを使うとき、逆光のモヤッとする光は角度を変えながら絞って撮りますが、アルーアソフトも同様、モヤリは抑え気味にして使いました。どういう表現になるかを予測して撮ることが大事かも。
みつる アルーアソフトを使うからできる表現と、できない表現がある。でも「この表現はできない」という縛りが、かえって撮りやすさや被写体を見つける楽しさにつながっていたりもします。選択肢がありすぎると何でも無難に撮れてかえって何を撮っていいのかわからなくなるけど、朝日や夕日など、柔らかい光や影の微妙な光を捉える、という縛りがあることでゴールが見えてくるというか。
りく 僕は最初、その縛りにかなり苦労したんですよね(笑)。4回くらいアルーアソフトをつけて撮影に行ったんですけど、天気が悪い日ばかりだったせいか、パッとしない写真しか撮れなくて……。曇りだから色のりも悪いし、テンションも下がっていて。でも、晴れた日の夕方に撮ってパソコンの画面で見たら、光の感じが「そこにおる感じ」に写っていて、「おもろー!」ってなりました。それをキッカケに、絞ってリアルに撮る自分の表現を一度忘れて、F1.8のギリギリまで絞りを開けて緩く撮ってみることにしました。収差とかフレアとか、現行レンズでは良しとされない表現をとことん取り入れてみようと。結果、今までとは違う自分の表現に行き着いた感じです!
光が当たっているところを探してみる
——アルーアソフトを使うときのコツを教えてください。
よーへい 個人的には、光が強すぎる場所よりも柔らかく光が入ってきているときのほうが向いてるなーって感じます。柔らかい光っていう表現を強調できるフィルターなので。普段写真を撮るときは、光が入ってくる方向や、影の濃さなど「どう光が入ってくるか」を見るんですけど、アルーアソフトをつけると「どこに光が当たっているか」「どこに反射しているか」を意識して見ます。たとえばセラミックのコーヒーカップなどの人工物とか、水に濡れた葉っぱも反射しやすい。いわゆる「反射率が高い」ものにアルーアソフトを使うと、わずかな光でも捉えてくれるので、柔らかい雰囲気になります。このとき、反射率の違うものと対比させるとアクセントになりますよね。反射率の高いコーヒーカップを、反射率の低い木目と組み合わせたり。
りく 紅葉の写真はどういう状況だったんですか?
よーへい このときは曇りだったんですよね。水の上に紅葉が落ちていて、わずかな光が水に濡れた葉っぱに反射していたので、アルーアソフトを使ったら面白いかなって。人間の目ではあんまり光を感じない、でも反射しているところに使うと面白いと思います。
なんか朝のコーヒーって優しさを感じませんか? その感覚を表現したいなと思いながら朝のコーヒー屋さんで撮影しました。窓から入る光がコーヒーカップに反射して、フィルターの効果で柔らかく表現されました。(よーへい)
散った紅葉に柔らかく光が当たり、葉っぱが少し光って見えました。それがなんとなく星のように見えて。たくさんの流れ星のようにならないかなーってシャッタースピードを落としてカメラを振りながら撮りました。(よーへい)
ゆーき 反射して光っている場所はいい感じで光を拾ってくれますね。 明るい部分と暗い部分のメリハリがある場所で使うと、光が当たっている部分にアクセントがつくので、ハイライト部分がいつもとちょっと違う表現になります。
横断歩道は反射率が高いのでアルーアソフトにおすすめの被写体。上の赤のシマシマの人は、おそらく子ども。下は雨の横断歩道。濡れることでコンクリート部分がより黒くなり、白線は反射するのでよりメリハリができます。(ゆーき)
みつる この横断歩道の写真が好きですねー! ゆーきさんらしいなって思いました。道路の陥没具合を中央に入れたのも最高。
ゆーき 横断歩道は白線の部分の反射率が高いから、アルーアソフトを使うとアクセントになりますよね。
りく 赤の縞々と白の縞々の対比になっていて、人物の中途半端な入り方もスナップっぽくて絶妙です。
ゆーき 目の前にいたので、面白いなと思って撮りました(笑)。アルーアソフトを使うときは、被写体にメリハリを見つけるのがコツだと思うんですが、横断歩道は白線とコンクリートのコントラストの差が大きいのでおすすめ。あと、ライティングも向いていると思いました。下の写真は黒背景で上からライティングして撮りました。花に当たった光が拡散されるので、普段のライティングとは少し違う感じになるんですよ。今回は撮影してないのですが、ライティングした女性のポートレートなんかも、柔らかく写るので向いていると思います。
黒背景で、上から1灯でスポット的に光が当たるようにライティングして、ピントが当たっている部分とピントが当たっていない部分(ボケている部分)でフィルターの効果がどう出るかを比較してみました。花に当たった光が拡散されて、いつもとちょっと違う雰囲気に。(ゆーき)
りく 現像やレタッチはどうですか?
よーへい ファインダーを覗いた時点で方向性が決まっているのがアルーアソフトのいいところだから、そのまま何もしなくてもいいくらい。僕は自分好みの色に調整したプリセットを当てて、ハイライトや白レベルを微調整するくらい。テクスチャや明瞭度、コントラストを下げてソフトに持っていこうとすると、モヤモヤになるのでそこはいじらないです。
曖昧な描写が、非日常感を引き出してくれる
——アルーアソフトソフトを使うと、どんな雰囲気を得ることができますか?
みつる 自分が見ている視界の雰囲気により近づけることができると思いました。最新のカメラとレンズで映し出された光景は、人間の目で実際に見るよりもコントラストが高いと思うんです。その差を埋めてくれるのがアルーアソフトソフトなのかなと。ほどよくコントラストを和らげて、自然な感じに写してくれますよね。とくに夕空の微妙な色合いは、アルーアソフトを使うといい感じに仕上げてくれます。
よーへい 最新のいいレンズで撮ると、パキッとして微妙な淡さは出なくなるよね。濃くてこってりした油絵の表現が、薄く淡い水彩画の表現になる感じ。
夕陽の時間帯は仕事や遊びに行かず、必ず夕陽を見るって自分で決めました。何気ない日常の夕陽ですが、いつ見ても綺麗だなと思います。(みつる)
香川の父母ヶ浜での夕暮れ。視界全てが夕焼け色に染まった景色は幻想的な世界。シャッタースピードを遅くして、水平線は保ちながら真横に振って撮影しました。夕と夜の間の曖昧な色合いは、アルーアソフトならでは。(よーへい)
みつる あと、夜に使うとゲームの世界のようになる。下の写真はどうってことのない神戸の路地裏を撮ったものですが、なんかゲームっぽくなりました。
夕方から夜に差し掛かる暗くなり切らないブルーアワーの時間帯。空が青く染まり街灯が雨によってぼんやりと裏路地を照らしていました。街中のはずなのに、ここで聞こえてくる音は雨のシトシトとした雨音だけ。その幻想的な雰囲気をアルーアソフトで切り取りました。(みつる)
よーへい ゲームの世界を描くとき、リアルに精密に描くほど嘘っぽくなったりするじゃないですか。きっちり精密に描けばいいというわけではなくて、日常にはない光を描いたりすることで、よりリアルなゲームの世界ができていく。写真も同じで、街灯をフワッと滲ませたりするのは、ゲームっぽく見せる効果なんじゃないかなって。
ゆーき それはありますね。夜の街でアルーアソフトをつけると、光の感じが変わるから、非日常感が出てそれがゲームの世界観に見えるのかも。
りく 僕はアルーアソフトを使うと、普段は写さない空気感とか記憶感を写すことができるなと思いました。仕事で使うレンズは、順光でも逆光でも安定した写りをすることが求められますけど、そういう描写は実際に目で見たときの「記憶感」から遠ざかるんですよね。アルーアソフトは、絞ってシャープに撮る、というこれまでの僕の撮り方とは逆転の表現をするフィルターでしたが、リラックスしてラフに使うことで、目で見たときの感じを切り取ったような記憶写真が撮れるようになりました。
よーへい:澤村洋兵 Yohei Sawamura
1985年京都生まれ。美容師、和食料理人、バリスタ、珈琲焙煎士などさまざまな職業を経験してきた異色の経歴を持つフォトグラファー。企業案件や広告写真、オンラインサロン主宰やSNSブランディングアドバイザーなど幅広く活動。Lightroomのオリジナルプリセットは多方面から人気を博す。人物写真、風景、スナップなどバリエーション豊かな写真を、それぞれの職業で培った感性と類い稀なセンスと器用さでアウトプットし続け、SNSを中心に多くの人の共感を呼ぶ。
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アルーアソフトを使用した機材:Nikon Z5+NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
みつる:若林 満 Mitsuru Wakabayashi
京都生まれ、2018年にアパレルの世界からフォトグラファーへ転身、Instagramで定期的に作品を発表しており、現在は京都、東京を拠点に広告・雑誌・SNSメディア等で活動しており国内外にクライアントを持つ。ライフワークはカメラを持って時間の許す限り外に出かけ、何気ない日常を切り取ること、多くは人物が映り込むワンシーンながら主役は人ではない、その景観美を描写しながらも、観る人がそれぞれのストーリーへと妄想を掻き立てるイマジネイティブな作風が評価されている。
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@ by_mitsuru_wakabayashi
HP
アルーアソフトを使用した機材:LeicaQ2、 LeicaM10+Elmarit 90mm f2.8