NDフィルターで雲をベールのように撮る

高濃度NDフィルターは、光量を大きく抑えることで、日中でも長時間露光を可能にするフィルターです。雲や水面など、常に形を変える被写体を、なだらかな時間の経過を感じる表現にすることができます。今回はND1000+ND8を重ね付けし、富士山を包み込む雲の流れを、やわらかく気品のある印象で描き出した作例をご紹介します。
撮影時、富士山のまわりには雲が多く、刻々と形を変えながら流れていました。NDフィルターを使用しない場合、日中のためシャッター速度が速くなり、雲の輪郭や動きがそのまま写り込んでやや雑然とした印象になります。今回目指したのは、雲の動きを強調するのではなく、富士山を包み込む空気感そのものを、やわらかなベールのように表現すること。そのため、雲の細かな動きは長秒にして均一化し、落ち着いた印象にまとめたいと考えました。ND1000+ND8を重ね付けして120秒の長時間露光にすることで、雲の細かな動きやコントラストが抑えられ、風景全体に統一感が生まれています。富士山は雲に包まれながらも存在感を失わず、静かで気品のある佇まいとして写し出すことができました。
雲の流れはゆっくり。だから高濃度NDフィルターを使う
左はフィルターを使わず1/13秒、右はND64を使用して11秒の露光を行った。フィルターを使用すると雲の動きはわずかにぼけるものの、狙ったなめらかさは感じられない。
ND4、ND8、ND16、可変NDフィルターは、川や滝、波などの流れをなめらかに表現する際によく使用します。これらの被写体は動きが速いため、シャッター速度は数秒から十数秒程度でも十分な効果が得られます。しかし、雲の流れは非常にゆっくりなので、数十秒では狙ったようなやわらかな流れを表現するには不十分。しっかりと面としてまとめるためには、ND1000やND64といった高濃度NDフィルターを使用して、より長い露光時間を得ることが必要になります。場合によってはND1000+ND64+ND8のように複数枚を重ね付することもあります。
なお、フィルターを重ねる際は、レンズに不要な力が加わってピントがずれたり、重ね合わせの隙間から光が入り画質が劣化しないよう、慎重な装着が求められます。また、着脱に手間取っている間に雲の表情が変わり、シャッターチャンスを逃してしまうことも。磁石式のJetMagシリーズは、素早く確実な着脱が可能なので、こうしたミスを減らすことができます。刻々と変化する雲を相手にする撮影では、機材の扱いやすさも大きなポイントです。
