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PLフィルターの使い方

PLフィルターの使い方

写真家、張千里(ZhangQian Li)によるPLフィルターの解説です。Hasselblad、Sony、Gitzo、NiSiなど世界のトップブランドのアンバサダーを兼任する中国の若手写真家が、PLフィルターの効果とその使い方についてわかりやすく解説してくれました。

目次

「PLフィルターとは?」

皆さんも一度は耳にしたことがある「PLフィルター」これは、偏光フィルターのことを指します。英語のPolarizationを略したものですね。PLは実に色々な場面で使えるフィルターであり、レタッチなどデジタル加工で置き代えることのできないフィルターです。
正しくPLを使いこなせばフレーム内に写る様々な反射を取り除くことができます。それにより雲を立体的に見せたり、空の青さを強調したり、草葉の緑を引き出すことができます。また、水面、石、ガラスといった被写体の表面反射を取り除くこともできます。写真表現の幅をぐっと増やしてくれるフィルターです。
PLフィルターは円形と角型の2種類があります。最も普及している一般的な円形フィルターはレンズの先端に装着し使うタイプですが、そのほかにも、角型フィルターホルダーに装着するタイプもあります。

角形システム

NiSiの100mmシステムホルダー V6がその例で専用円形CPLが装着できるようになっています。このシステムはCPLフィルターとGNDフィルターそしてNDフィルターの3種を同時に使用できる優れたシステムです。一方で、角型のPLフィルターはホルダーに差し込んで使うタイプで、こちらも他のフィルターと重ねて使うことができます。NiSiのCPLはPRO CPLとランドスケープCPLの2種類がありどちらも角型ホルダーに装着ができる専用設計となっています。ランドスケープCPLとPRO CPLの違いについては、この後で説明していきます。

「PLフィルターの使い方」

円形フィルター

風景写真の撮影現場ではPLをレンズに直接装着するか、もしくは角型ホルダーに装着しますが、この動画では、円形のPLフィルターを例にその使い方について説明していきます。レンズの先端に付ける一般的な円形PLの装着方法はUVや保護フィルターと同じように、レンズのフィルタースレッドにねじ込むだけです。
PLフィルターには回転式のフィルター枠があり、この枠を回すことで偏光作用を調節することができます。所有レンズの口径によって装着できるフィルターのサイズが異なるため、よく確認してから購入しましょう。サイズが同じであれば、どのメーカーのレンズでも装着ができます。

CPL

次に角型フィルターと併用できるNiSiの専用CPLは、メインアダプターに装着するため、フィルタースロットを有効活用できます。メインアダプター上のCPL調節ダイヤルを回すことで、効き具合を調整ができる優れものです。CPLを直接回転させるよりも手早く調整ができ、従来の円形PLよりもスムーズなフィルターワークが可能です。ホルダーキットにはこの専用CPLが含まれている上、アダプターリングも同梱されているので、口径の異なる複数のレンズに装着できます。それぞれのレンズ口径ごとに、PLを何枚も購入する必要がないのは経済的ですね。

「PLフィルターの効果」

さて、このPLフィルター、一体どんな効果があるのでしょう?さっそく実際の撮影現場を見てみましょう。まずは、こちらがフィルターなしの作例です。そして、次にPLを装着してもう一枚撮ってみます。その違いを見比べてみましょう。

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(左)PLなし (右)PLあり

PLを使用すると、反射が抑えられて写真全体がより鮮明な印象になりました。しかし、その撮影環境に応じて、フィルターの使い方も異なります。反射を消したくない時だってあるし、むしろ反射を強調させたい場面もあるでしょうし、その場面に合わせた反射の調整ができるここがPLの面白いところで1枚あれば実に様々な効果を楽しむことができます。
PLを使う時は、光源の角度がとても重要です。偏光効果が最も顕著なのは光源である太陽の位置が撮影方向に対して90度のとき。言い換えれば、順光や、逆光の時には、偏光効果はほとんど得られません。逆に側面から太陽が当たっている場合は、その効果をハッキリと実感できるでしょう。

図

逆光 / 順光

図

太陽の位置が撮影方向に対して90度

90度の角度というのは、撮影者の両側はもちろん、日が真上から差している時も当てはまります。つまりお昼時に、真上から太陽が照っているようなときこの時にも偏光フィルターの効果が発揮されます。
それ以外の角度については、例えば、順光でも逆光でもなく、真横からでもない、中間の斜光は偏光効果が全くない訳ではなく、その効き具合が角度によって変わってきます。

図

太陽の位置が撮影方向に対して90度

「ランドスケープCPLとは?」

ランドスケープCPLは、NiSiが独自に開発した特殊CPLフィルターで、NiSiのV6ホルダーに装着して使います。その名前の通り、PRO CPLと比較すると風景撮影に最適化した設計となっていて色彩を強調し、風景の青色や緑色が鮮やかに出ます。
リバーサルフィルムのような鮮やかな色あいが好みであれば、ランドスケープCPLは持っておきたい1枚です。比較作例でその違いをみてみましょう。

作例
作例

(左)一般的なPL (右)ランドスケープCPL

ランドスケープCPLと一般的なPLを比較してみるとランドスケープCPLの方が空や水の青色、そして草原の緑が、より鮮やかに映し出されています。
レタッチはあまり得意ではない、という人にとっては特にメリットがあるのではないでしょうか。この後の「実践編」でお見せする作例はどれも、このランドスケープCPLとV6ホルダーの組み合わせで撮影しています。

実践編「青空と雲」

青い空と、白い雲、風景写真ではお馴染みの絵ですよね。今日はとても良い天気に恵まれフィルターを使わなくても、十分に綺麗な写真が撮れますが、もう一歩上の写真を目指して青空と白い雲をよりダイナミックに撮れないかPLフィルターを使って撮影してみましょう。

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(左)PLなし (右)PLあり

PLはこのような場面で空気中に乱反射している光を取り除いて、青空を青をより鮮明に、そして雲をより立体的に写し出します。フィルター未使用の写真と使用した写真のその差は歴然でPLを使用した方の写真は、青空と雲とのコントラストが鮮明でより目を引く写真にすることができました。

実践編「水面反射」

アイスランドの「エレファントロック」付近の撮影ポイントに来ています。砂浜の上には、波によって形成された波紋が残っています。動的な打ち寄せる波と静的な砂浜の波紋が対照的でさらに砂浜の黒と、波の白のコントラストもとても綺麗だと思います。
これらのとても抽象的な要素を、PLを使って砂浜の反射を強調することで演出してみました。

作例
作例

(左)PLなし (右)PLあり

実践編「七色の虹」

スコゥガフォスの滝にやってきました。今の時間はちょうど順光で滝壺の飛沫で虹が発生しています。虹を撮影するときに、普通に撮影したのでは、虹は霞んでしまって、はっきり写すことができません。そんな時はどうすれば虹をくっきりと写すことができるのでしょうか。
こんな時にもPLが役立ちます。
撮影方法もとても簡単でビューファインダーを覗きながら、ゆっくりとフィルターを回転させていき虹が最もよく映る位置で止め、後はシャッターを切るだけです。
比較してみるとよくわかりますが、PLを使用した方は、虹の輪郭もはっきりと写り、またその色彩も鮮明で、綺麗に写っています。こうしたフィルター効果はレタッチで置き換えことができないなので、現場で偏光フィルターを使って、しっかりと撮影しておきたいですね。

図

(左)PLあり (右)PLなし

実践編「草葉と岩石」

次の撮影地は「ゴーザフォスの滝」です。このようなパノラマの滝を撮影するときは前景を入れて撮影すると、空間に奥行きがでます。ここで私が前景として選んだのは岩礁特にこの苔の生えた岩が良さそうです。先ほどの作例もPLを使って撮りましたが、なぜPLを使うのか、その理由を説明しましょう。
まず第一に、今日は小雨が降っていて岩や苔が濡れていました。PLを使うことで、その反射具合を調整し、明るさや質感を変えることで写真の細部を作り込むことができます。

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(左)PLなし (右)PLあり

2つ目の理由はこの水面の反射です。水面の反射を弱めるべきか、それとも強調すべきか、PLを回転させながらベストな位置を探ります。
水面の反射具合がちょうど良いと思う位置だと岩の反射が今ひとつ、ということがありますがそんな時はPLをゆっくり回し位置を変えながら何枚も撮影してみてベストな位置を探していきます。
最後にPCへ読み込み、大きな画面で細部まで確認しながら、どの写真が一番良く撮れているかを選びます。この作例では、完全に反射を取り除くことはしておらず、かと言って、反射を強調してリフレクションを狙っているわけでもなく水面の反射と、岩の表面の反射のバランスが一番良いと思った位置で撮影しました。

作例

実践編「窓ガラス」

さて、今度はレイキャビクの大通りにきました。窓ガラスの奥に、可愛い猫の置物をみつけました。こうした窓越しの被写体を撮影する時は、ガラスの反射に悩まされますよね。反射がうまい効果を生むこともあれば、邪魔で取り除きたい時もあります。反射を消したい時にはPLが便利です。ビューファインダーを覗きながら、PLを回していくと、反射が消えていくのがよくわかります。反射が消える位置まで調整したら、後はシャッターを切るだけ。撮影の時には、角度が重要になります。ガラスに向かって真正面にレンズを向けて撮影しても、効果はそれほどありません。ガラスに対して45度ぐらいから撮影すると、フィルター効果が最もよく得られます。

作例
作例

(左)PLあり (右)PLなし

実践編「小物の撮影」

室内で小物の撮影をする時にも偏光フィルターが役立ちます。窓から入ってくる自然光を利用するので逆光の中で撮影となります。撮影するのは、イヤリングで、この石板と小道具を使って撮ってみます。この撮影環境では、自然光の入り込む角度により石板が強く反射し、背景が明る過ぎになります。特に薄い色の被写体の場合、背景が明るいと商品がぼんやりとしてしまいます。

PLなし

PLなし

こんな感じの見え方ですね。そこで石板をもう少し暗くしたいと思えば、露出を落として撮影するのも一つの手です。

PLなし

PLなし

この写真は先ほどより1.3段ほど露出を落として撮影してみました。石板の明るさはだいぶ抑えられましたが、同時にイヤリングも暗くなってしまいました。これでは商品の質感も色も伝わりません。この問題を解決するのにPLを使います。

PLあり

PLあり

PLを使うことで、被写体の露出を変えずに石板の反射を取り除きます。PLを装着したら、いつものように回転させて最適な効果が得られる位置を探します。石板の反射がみるみると消えていくのがわかります。反射が取り除かれることで、石板が本来持つ材質と模様、明るさが再現され同時にイヤリングの透明度や輝きが伝わってきます。商品の質感や色味も実に綺麗で、見違える写真となりました。

「PL+GNDを重ねて使う」

さて、前景に流氷がたくさんある撮影地にやってきました。偏光フィルターを使うと水面の青が鮮やかに出て、とても綺麗な写真が撮れそうですが、今は逆光なので空が非常に明るく、このまま撮影すると白飛びしてしまうでしょう。NiSi V6ホルダーの優れたところは、PLと同時に、角型フィルターが使える点で空の明るさを抑えるためのGNDフィルターを重ねて使うことができます。

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(左)PL効果最小 + GND (右)PL効果最大 + GND

空と水面の輝度のバランスを取り全体の露出を合わせることができます。露出を揃えることで、青の階調も再現され、深みが出ました。PLとGNDの両方使えるのは大変便利です。

「PL+NDを重ねて使う」

この場所の地形はとても面白いですね。このアーチを利用して洞窟の中から外に向けて撮影したらこの自然の地形をフレームに見立てた構図が撮れそうです。遠景には2つの小島が空に向かって突き出ています。空には雲もかかっていますが、このままでは目立たないので、PLフィルターを使って演出をしてみましょう。

図:アーチ

「空を青く、雲を白くクッキリ撮る」最もよく知られている偏光フィルターの機能ですね。雲の輪郭がはっきりとなったところで今度はこの波を演出してみましょう。そこでNDフィルターを追加して、波の表情を和らげてみたいと思います。PLとNDを重ねて使用するのにぴったりの場面です。

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では、この作例を最後に、PLの使い方を紹介してきたこの動画を締め括りたいと思います。
最後に、本編でお話しした内容を振り返ってみましょう。
PLフィルターを使うことで、空気中の反射を取り除き空と雲のコントラストを強めることができます。水面の反射を取り除いたり、窓ガラスの反射、アクセサリーや岩の表面や、草花の反射を取り除くのにも有効でした。さらには虹を綺麗に写すのにもPLが使えましたね。水面の反射を強調して、写真の雰囲気を演出したり、PLと合わせてGNDやNDフィルターを組み合わせて使うこともできます。複数のフィルターを使いこなせれば、より柔軟に現場での光に対応できます。
次回の動画では、GNDフィルターとNDフィルターについての解説動画をお届けします。フィルターワークについてさらに知りたい人は、ぜひお見逃しなく!張千里でした。次回の動画でまたお会いしましょう。