コンテンツに進む
MAGAZINE

NiSiフィルターガイド Vol.2:PLフィルター

反射を消して色鮮やかに表現できるCPLフィルター

NiSiフィルターガイド Vol.2:PLフィルター

目次

はじめに

こんにちは、フォトグラファーの上田晃司とコムロミホです。NiSiフィルターガイドVol.2では、「CPLフィルターの基本的な使いこなしについて」です。CPLフィルターとはなにか、どんな効果を活かした撮影ができるのかを、作例を交えてご紹介します。
※動画でもCPLフィルターについて紹介しています

基本編

CPLフィルターってなんだろう?

「PLフィルター」というフィルターを聞いたことがある人は多いと思います。このPLとは「Polarized Light(ポラライズド ライト)」の略で、「偏光」という意味です。そしてCというのは「Circular(サーキュラー)」のことです。偏光とは規則的に進んでいく光のことで、不規則的に進んでいく光が自然光です。CPLフィルターには、2枚のガラスに挟まれた偏光膜が内蔵されており、それによって被写体に当たる反射光をコントロールすることができるようになります。その結果、反射の除去ができたり、被写体の鮮やかさやコントラストの調整ができたりします

NiSiのCPLフィルター

NiSiフィルターには、2種類のCPLのシステムがあります。円形のと角型のフィルターシステムです。円形型は、レンズに直接装着ができ、純正のフードを装着することができるメリットがあります。一方、角型のシステムは拡張性が非常に高く、V7というホルダーをつけることで、CPLフィルターだけでなくハーフNDフィルターなどの他のフィルターと組み合わせることができるシステムになっています。

V7ホルダー

v7-howto2__PID:e1e63bc3-b7eb-492a-a2ab-7e59d96ab6f6

100mm角型フィルターホルダー。最大3枚の角型フィルターと円形PLフィルターを重ねて撮影することができます。

V7 TRUE COLOR CPL

v7-20210823459__PID:892ae2ab-7e59-496a-b6f6-6c3a8509df10

100mm角型フィルターホルダーVシリーズ対応のCPLフィルター。ホルダーに装着して使用します。黄緑色に色かぶりせず、正確な色表現で撮影ができます。今回は、このCPLフィルターをメインに使って解説します。

V7ランドスケープCPL

v-landscape-cpl__PID:e2ab7e59-d96a-46f6-ac3a-8509df1055e1

V7専用の円形CPLフィルター。高い色彩とコントラスト、ヘイズカットによって、青や緑の再現性というのがとても高いCPLフィルターです

TRUE COLOR CPL

tccpl-main__PID:7e59d96a-b6f6-4c3a-8509-df1055e1dac4

円形のCPLフィルター。黄緑色の色被りを抑え、よりニュートラルな色を再現できるフィルターです。

V7対応のCPLフィルターのメリットは調整ダイヤルが側面に付いていることです。一般的な円形のCPLフィルターの場合、フィルター枠を回しながら調整をします。一方でV7対応の場合、側面についているダイヤルで調整できるので、フィルターの前面に指紋がつきにくいというメリットがあります。それだけではなく、NDフィルターなどと組み合わせたときにもかんたんに回すことができて、微調整がしやすいというのもポイントになります。

V7対応のCPLフィルターは側面のダイヤルを回して効果を調整します。

実践編 Part1

反射を除去して被写体本来の色を表現

CPLフィルターには大きく分けて2つの効果があります。その1つが「反射を除去できる」ということです。下の写真を見ると、海面に空が反射して白っぽくなっているのがわかると思います。

dsc_0882-1536x1022__PID:1a5641f6-dc53-447c-a7e7-cfcb97910c83

CPLフィルターなしで撮ると、海面が白っぽくなっているのがわかるかと思います。

このように光が反射して白っぽくなっている部分を、CPLフィルターを使うことでクリアにすることができます。その際に覚えておきたいことが、カメラのアングルです。CPLフィルターは被写体に対して水平で撮影するよりも斜めなどの角度をつけて撮影することで、より効果的に反射を除去できます。

海に空が反射している状態から、CPLフィルターのダイヤルを回すことによって徐々に反射が除去されていきます。回し過ぎると元の反射している状態に戻ってしまうので注意してください。

作例:水平で撮影

【水平で撮影】

作例:角度をつけて撮影

【角度をつけて撮影】

CPLフィルターを使う際、水平で撮るよりも角度をつけることによって、より反射を効果的に除去することができます。
下の写真が実際にCPLフィルターを使って撮った場合となしの場合の比較です。CPLフィルターを使った写真は海に透明感が出て、さらに雲も立体的になっています。CPLフィルターを使うことで、より風景をきれいに撮れることがわかるかと思います。

作例:CPLフィルター使用

【CPLフィルター使用】SS:1/60秒, F値:8.0, ISO:100, 焦点距離:24mm(35mm判換算), CPLフィルター使用

作例:CPLフィルターなし

【CPLフィルターなし】SS:1/200秒, F値:8.0, ISO:100, 焦点距離:24mm(35mm判換算)

反射物やガラスなどの反射除去にも効果的

CPLフィルターを使うと、水面のほかに反射物の反射を除去することもできます。たとえばガラス張りのお店を撮影するなど、反射させたくないような被写体を撮影するときに有効です。
ここでは、車の反射を例に解説します。下の写真はCPLフィルターなしで撮影した車の写真です。地面のコンクリートが主被写体である車の側面に映っているのがわかります。この反射を、CPLフィルターを使って除去します。

作例

主被写体である車に地面のコンクリートが写り込んでしまい、白っぽくなっています。

これも前述したように、CPLフィルターの調整ダイヤルを回しながら一番効果が出る部分を探していきます。反射がなくなるところまでダイヤルを回したら撮影してみましょう。

CPLフィルターの調整ダイヤルを回すと、このように反射がなくなるタイミングがわかると思います。

下の写真は実際にCPLフィルターを使って撮った場合となしの場合の比較です。しっかりと地面の反射を防ぐことができていますね。

作例

【CPLフィルター使用】SS:1/320秒, F値:8.0, ISO:100, 焦点距離:47mm(35mm判換算), CPLフィルター使用

作例

【CPLフィルターなし】SS:1/640秒, F値:8.0, ISO:100, 焦点距離:47mm(35mm判換算)

前述した水面と同じように、このような反射物についても少し角度をつけることによって、より効果が出やすくなります。被写体に対して正面からアプローチするのではなく、斜めなど少し角度をつけて撮影することがポイントです。
また、ガラスのように平面な被写体ではなく、丸みのある被写体を撮影する際、調整ダイヤルをいくら回しても反射を完全に除去できない場合があります。そのようなときは調整ダイヤルを回しながら、適度な部分を見つけて撮影するとよいでしょう。

CPL×逆光でテーブルフォトにシズル感をプラス!

CPLフィルターは風景や車の反射除去だけではなく、実はテーブルフォトなどの料理撮影にも有効です。料理を撮影するときは、逆光を活かしながら撮影するとシズル感を表現できます。逆光で撮ることで、たとえば料理の照りの部分が光っておいしそうに見せることができるようになります。
ただし、逆光でも強い光が直接料理に当たると、光の反射が強くなりすぎて、白っぽくなってしまいます。そうすると、下の写真のように料理のおいしさが伝わりにくくなってしまいます。

作例

照り焼きチキンピザを逆光で撮影した1枚です。ソースの部分が白っぽくなっています。

そこで活用するのがCPLフィルターです。反射した光を除去して、ピザをおいしそうに表現してみましょう。気をつけたいのが、完全に反射を除去しない、ということです。照りが全くなくなると、同時にシズル感もなくなってしまうので、少し手前の部分が光るぐらいまでダイヤルを調整するのがポイントです。

調整ダイヤルを回しながら照り具合を変えていきます。シズル感を少しだけ残すのがミソ。

作例

【CPLフィルター使用】SS:1/200秒, F値:8.0, ISO:100, 焦点距離:70mm(35mm判換算), CPLフィルター使用

作例

【CPLフィルターなし】SS:1/400秒, F値:8.0, ISO:100, 焦点距離:70mm(35mm判換算)

CPLフィルターと言えば風景撮影と思われる方もいるかもしれませんが、このようにテーブルフォトや料理、そしてたとえばお花などのような近接域で撮影するときもCPLフィルターは役に立ちます。ぜひ、いろいろなシチュエーションで使ってみてください。

実践編 Part2

CPLで新緑の葉を色鮮やかに表現

CPLフィルターの効果の2つ目は、被写体を鮮やかに表現することができます。CPLフィルターを使うと、被写体に当たる光を除去できるので、被写体本来の鮮やかさをより強調できるようになります。たとえば、緑の葉はより鮮やかな緑に、空はより青い空になります。
下の写真は、山と海、空が見えるシーンを撮影した1枚です。CPLフィルターを使わずに撮影すると、光が反射してしまって、手前の葉の緑がちょっと白っぽくなっているのがわかると思います。また、海面や、空の色も少し薄い印象があります。

作例

手前側の葉の部分に注目すると、緑がやや白っぽくなっています。海や空も同様に、色が浅い印象です。

そこで、CPLフィルターを使って、被写体が鮮やかになるまで調整ダイヤルを回していきます。効果がわかりにくい場合は、少し速く回して効果を確かめましょう。ベストなポジションで止めて撮影をしてみてください。

調整ダイヤルを回すと、だんだん葉の緑が鮮やかに変わっていくのがわかりますね。

下の写真は実際にCPLフィルターを使って撮った場合となしの場合の比較です。CPLフィルターを使用した場合は、緑の反射がきれいに除去されて、緑がより濃く出ています。また、海面の反射や空気中のチリなどの乱反射も除去されて、海や空の色がより鮮やかになっているのがわかるかと思います。このようにCPLフィルターを使うと反射が除去されることで、被写体本来の色の鮮やかさをより強調して撮影することができます。

作例

【CPLフィルター使用】SS:SS:1/80秒, F値:8.0, ISO:100, 焦点距離:31mm(35mm判換算), CPLフィルター使用

作例

【CPLフィルターなし】SS:1/250秒, F値:8.0, ISO:100, 焦点距離:31mm(35mm判換算)

おわりに

今回は、CPLフィルターの基本的な使い方をご紹介させていただきました。CPLフィルターは反射を除去するだけではなく、反射を除去することによって色をしっかりと表現することもできるものです。
今後もこのようなフィルターの使いこなしをご紹介していきますので、ぜひ楽しみにしていてください。
NiSiフィルターガイドVol.3もお楽しみに!


上田晃司

米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強をしながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。ドローン撮影や特機での撮影も得意! 近年では、講演や執筆活動も行っている。主な著書は、「写真がもっと上手くなる デジタル一眼 撮影テクニック事典101」や「写真が上手くなる デジタル一眼 基本&撮影ワザ」「ニコン デジタルメニュー100%活用ガイド」などがある。 YouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」でカメラのテクニックやレビューを配信。ニコンカレッジ、ルミックスアカデミー講師。

ueda-prof__PID:5e121062-e475-4504-90c6-2dae83b9b817

コムロミホ

文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラフィーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。またYouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。カメラや写真が好きな人が集まるアトリエ「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。

komuro-prof__PID:2df14c62-24cb-46b9-a3d3-ea92d6632e9b