日本ではハーフNDの名称で知られるフィルターで、海外では「Graduated Neutral Density」の頭文字を取ってGNDフィルターと呼ばれています。角型フィルターの上半分がND、下半分が透明になっていて、朝日や夕陽のようなダイナミックレンジが広い場面で、空と地上の明暗差のバランスを取るために使います。
GNDフィルターの減光の強さは、NDフィルターと同様に「GND8」といった表記で記されます。減光濃度が示すのはGNDフィルターの一番濃い部分の数値で、通常フィルターの最上部になります。
GND4(2段減光)
ブルーアワーなど輝度差がそれほど大きくない場面で使われます。空に漂う雲や霧などが光で明るくなっているときなどに使うと効果的です。これ単体では日の出後や日没前には減光が不十分ですが、GND8と組み合わせて使うことで露出調整の自由度が高まり便利なフィルターです。
GND8(3段減光)
GNDの中では最もよく使われる濃度です。ゴールデンアワーの輝度差を調整するのに最適で、白飛びしがちな雲のディテールを写撮ることができます。
GND16(4段減光)
太陽が画角内に入るような輝度差の大きな場面で使います。日中の撮影時にも使えて重宝する
ND域から透明域へ大きくゆるやかにグラデーションがかかっているため、広角域での使用に適しています。山岳風景や、岬などのシチュエーションで活躍します。
(左)フィルター非使用 (右) NiSi CPL + Soft GND 8(0.9) + IR ND 1000(3.0) / Photographer : Eric Rousset
ND域と透明域のグラデーションが短く境目のはっきりとしたタイプです。水平線や地平線が見渡せるような構図に適しています。
(左)フィルター非使用 (右) NiSi Hard GND 8(0.9) / Photographer : Solli Kanani
ソフトGNDとハードGNDの中間程度のグラデーションで、広角域から標準域で幅広く使えます。
(左)フィルター非使用 (右) NiSi Medium GND 8(0.9) + CPL / Photographer : Duarte Sol Duarte Sol
一見ハードGNDと似ていますが、フィルターの中央付近が一番暗く、上に向かって徐々に薄くなっています。水平線に沈む夕日などを撮影するのに最適なフィルターです。
(左)フィルター非使用 (右) NiSi Reverse GND 8(0.9) + CPL / Photographer : Duarte Sol
ND部分を中央に配置した特殊なGNDフィルターです。他のGNDフィルターを補完する目的で使用すると効果的です。非常に明暗差が激しいシーンをワンショットで撮影できます。
フォトグラファーからのフィードバックを受けて、グラデーションを最適化しています。
光学ガラスを使用したスタンダードモデルに加え、強化ガラスを使用し、割れにくく取り扱いがしやすいエクスプローラシリーズがあります。
GNDフィルターに加え、ND、ナチュラルナイトなど各種フィルターをセットにしたお得なキットです。
角型ホルダー本体とフィルターを複数枚セットにしたキット。これひとつですぐにフィルターワークがはじめられます。
1.空の明るさを活かしながら前景の暗さを解消する
ソフトGND
空にまだ明るさが残る夕暮れや夜明けの時間帯は、暗い地上の風景に露出を合わせると空が白飛びしてしまいます。空から前景へとなだらかな階調で描写すには、境目の緩やかなソフトGNDフィルターが最適です。
(左)フィルターなし (右)GND8 撮影:橋向真
2. 空の表情と地上の風景を色鮮やかに再現する
ミディアムGND
(1) 白飛びしがちな空を減光し、雲のディテールを描写する
引き波を滑らかに写す場合、長時間露光で波の軌跡を捉えます。しかし、日が昇った後の空は明るいため、長時間露光にすると白飛びして雲の表情も消えてしまいます。ミディアムGNDフィルターで空の部分だけを減光することで引き波との輝度差を小さくし、雲の陰影を出して表情のある1枚に。
ソフトGND16 撮影:Hiromasa Katsura
(2) 空とリフレクションの輝度差を小さくし、鏡面のように鮮やかに写す
日が昇った明るい空と水面に映り込んだ空を捉える場合、実像の空のほうが明るいため、映り込みに露出を合わせると空が白っぽくなりがちです。ミディアムGND8フィルターを使うことで両者の輝度差を小さくし、鮮やかに描写します。
(左)フィルターなし (右)ミディアムGND8
3. 空と地上の風景を分割する地平線をシャープに描写する
ハードGND
岩や植物などが地平線や水平線にある場合は、減光部分とクリアな部分の境目が緩やかなソフトGNDフィルターが適しています。一方、空と地上が明確に分割されている場合は、グラデーション域が明確なハードGNDフィルターがおすすめ。地平線をシャープに描写できます。
(左)フィルターなし (右)ハードGND8 撮影:Solli Kanani
4. 朝日や夕陽を入れつつ地上の風景を見せる
リバースGND
太陽はとても明るいので、朝日や夕日に露出を合わせて風景を撮影すると、手前の風景が真っ黒につぶれてしまいます。リバースGNDフィルターは朝日や夕日のために開発されたフィルターで、太陽の露出を抑えて手前の風景を綺麗にあぶり出します。
(1) 海に沈む夕陽
フィルターを使わないと真っ暗になってしまう手前の岩場。リバースGNDフィルターを使うことで、岩肌も繊細なディテールで描写します。
(左)フィルターなし (右)リバースGND16 撮影:Christophe Alfonso
(2) 太陽と都市風景
地平線の近くの低い位置にある太陽と都市風景のコラボレーションはとてもドラマチック。リバースG N Dフィルターを使ってビルの繊細なディテールを描写しましょう。
(左)フィルターなし (右)リバースGND16 撮影:うさだだぬき
(3) 壮大な大地に落ちる夕陽
草木を照らしながら沈む夕陽。黒くつぶれてしまいがちな大地も、目で見たままの風景のように切り取ることができます。
(左)フィルターなし (右)リバースGND8 撮影:Steffen Hummel
(4) 海に沈む夕陽と棚田
棚田に水が張られる季節は、夕焼けの映り込みを狙いたいもの。リバースGNDフィルターを使って、暖色に染まった空の映り込みを鮮やかに切り取ります。
リバースGND16 撮影:うさだだぬき
(5) 明るい花火と暗い花火をバランスよく取り入れる
花火は1つ1つ明るさが違い、暗い和火や明るいナイヤガラなどさまざまです。長時間露光で写し込む花火のうち、リバースGNDフィルターで明るい花火の露出だけを抑えることで、バランスの良く美しい1枚に仕上げることができます。
(左)フィルターなし (右)リバースGND8 撮影:金武 武
5. GNDフィルターを使って被写体をより素敵に見せる
ミディアム/ソフトGND
人物をアップで写すだけがポートレートではありません。街や自然の中に人物を溶け込ませることで、風景的なポートレートになります。人物を強調するためにGNDフィルターを使うことで、風景を入れつつ被写体に視線誘導します。
(1) GNDフィルターの2枚使いで人物を際立たせる
グラデーションフィルターを2枚逆方向から使うと、人物を減光せずに左右を暗く落とすことができます。この例ではミディアムグラデーションの GND 16 を2枚使用し、人物に視線を誘導しています。
フィルターなし 撮影:高桑正義
GND16×2枚 撮影:高桑正義
(2) 背景の暗さを作り人物を強調する
リバースGNDフィルターの減光部分を左の奥側にかけることで、明るくなっている部分を暗くします。それにより、光の当たっている人物だけに視線を誘導することができます。
フィルターなし 撮影:高桑正義
ミディアムGND 撮影:高桑正義
(3) 背景を取り入れた風景ポートレート
風景的と人物が馴染むように表現したい場合は、明るい背景にソフトGNDフィルターの減光部分をかけることで、空もしっかりと描写することができます。
ソフトGND