コンテンツに進む
MAGAZINE

Road to 24fps !! 第1回 フレームレート

〜写真カメラマンから動画カメラマンを目指す〜

Road to 24fps !! 第1回 フレームレート

目次

みなさん、はじめまして。カメラマンの北下(キタシタ)と申します。
ミラーレスカメラを手にして、写真だけじゃなくラージセンサーでハイクオリティな動画を撮ってみたい!!(というかもう撮っている)と思っている方、または現在写真の仕事をしていて、動画の仕事依頼が来るから引き受けたいけど、情報が多すぎてどう学んでいけばいいかわからない、とお考えのカメラマンの方、結構多いのではないでしょうか?
そんな皆様に向けて、私の「写真→動画」撮影のプロセスを踏んできた経験から、学ぶヒントとなるトピックを、毎回コラムのような形で発信していきます。
題して、「1コマから24フレームへ Road to 24fps!!」
さっそく、24fps?という疑問が湧いた方もいると思います。これは、映画やミュージックビデオの撮影フレームが、24fps(1秒間に24コマの撮影をしている、Frames per secondの略)ということです。1コマ撮影の写真から、秒間24コマの動画撮影ができるように、残り23コマを補完できる情報を全24回に渡ってお伝えしていきますので、ぜひ最後までお付き合いいただければ嬉しいです。

自己紹介

まず私の仕事経歴を簡単にお話しさせていただきます。
大学在学中にブライダルスナップ写真撮影のアルバイトが始まりでした。当時、社内で支給されたカメラがCanon 5Dmark2で、動画撮影のいろはもわからずでしたが、バイトの先輩ととりあえずレンズの絞りを開放で、24fpsに設定してイメージムービーを撮って遊んでおりました。その時の経験がとても楽しく、この道に進むきっかけとなりました。
その後写真専門の貸スタジオに就職し、そこでは動画の撮影と編集を学ぶ機会もいただきました。
独立後は、フォトグラファーとして活動していたのですが、しばらくすると動画の撮影依頼が来ました。動画は趣味程度に考えていたのですが、興味もあったので「今持っている一眼レフで撮影できる範囲でよければ・・・」という条件で引き受け、たまに来るメイキング撮影やミュージックビデオの撮影依頼を受けるようになりました。
そして、「これは今後仕事として増えるな!?」と考えた私は、一念発起してSONY FS5という小型シネマカメラ一式を購入しました。(写真に比べて機材の金額も数も多いので、駆け出しのカメラマンにとって購入には結構な勇気が必要だったのです!)そこからは、機材好きの性格も相まってどんどん機材が増えていき、とうとう今では写真よりも動画の仕事の方がはるかに多くなってしまいました。面白かったのは、買ってみると嫌でも必死で勉強するので知識が増え、写真撮影との相互フィードバックがあったりもするので、不思議と両方楽しめるようになったことです。
私の撮影に関する知識は、ネットや本、現場でのコミュニケーションや諸先輩方の作る現場を見せていただいた物の積み重ねです。まだまだ勉強中の身ではありますが、同じように「写真+動画」の仕事をしていきたい(もちろん趣味でも)と思っているけど、何から手をつけたら良いのかわからない・・・という方のために、寄り添った形のガイドになるよう現場小話も交えつつ、役立つ情報をお届けしていきたいと思います。
また、記事中に出てくる用語に関して、全て説明していくのは情報が膨大になりすぎるためできませんが、キーワードや、よりわかりやすく説明されているリンクを置いていくので、興味がある方はご自分でどんどん掘り下げていっていただければと思います。

第1回 フレームレート 〜ぼくが最初につまずいたこと〜

フレームレートとは

動画撮影をする上で、まず初めに「これ何?」となりやすい項目が、このフレームレートだと思います。写真は一回ずつ、切り取りたい瞬間にシャッターを切っていきますが、動画は撮影開始から終了までずーっとシャッターを切り続けている状態です。つまり、そのシャッターを切る回数が1秒間に何回なのかを決めるのがこのフレームレートということになります。

fps

フレームレートとは、1秒間に何コマの画像を撮影・表示するか(Frames per second)ということです。それを略してfpsという表記をします。秒間24コマなら24fps、秒間30コマなら30fpsとなります。

フレームレートの違いは表現の違い

ぱっと見、24コマと30コマなんて、大した違い無いんじゃない?とお思いのそこのあなた!結構違うんです。
映画などはあえて、24コマに落として撮影・投影されます。これは、その適度に少ないコマ落ち感が独特のあの雰囲気を出すからです。
逆に、サッカーや格闘技などのスポーツ映像などは、素早い動きが見れる方が迫力が出るため、テレビは60コマが基準になるのです。
最近では、Youtubeなどでの広告やイメージ系の映像は30コマだったりします。(ラージセンサーの雰囲気が出やすく見やすいため)ミラーレス機の標準設定が24・30fpsが多いのはそのためです。
また、PCモニターでゲーミングタイプのものは120fps表記のものがありますが、これは画面変化の激しいゲームは、細かな表示の動きを追わないといけないため、より多くのコマ数で見る必要があるからです。

フレームレートの違いは表現の違い

是非、お手持ちのカメラで撮り比べて見てみてください。可能なら大きめのモニターに繋いでみましょう。30p→24pに変えた途端急に映画っぽく見えると思います。きっと何か撮ってみたくなりますよ!

24fps

30fps

60fps

フレームレートを表す用語たち

フレームレートの表記には、いくつか種類があります。fpsの他に、p (プログレッシブ)、i (インターレース)、PsF (Progressive segmented Frame)などがあり、どれも手前にコマ数が表記されますが、データの伝送方式を表す為に使われます。
例) 29.97p →秒間29.97コマのプログレッシブ方式59.94 i →秒間59.94コマのインターレース方式
プログレッシブ方式の「p」はカメラの設定上でもよく使われますが、そのままfpsと同じコマ数と捉えて大丈夫です。
また、24・30・60と言っているのに、何故か23.98・29.97・59.94と若干ズレた数値で書かれていることに疑問を持った方も多いと思います。これは、ドロップフレームというTV放送の基準に合わせた設定なのですが、カメラの設定項目に両方出てこなければ自動的に小数点側の設定になっていることが多く、特に気にせず撮影してしまって大丈夫です。TV関係のお仕事がある方の場合は、ドロップフレームについて少し勉強しておいても良いと思います。
こちらに詳しく書かれています。
http://oh-me.com/sub3_a007.html
ただ、この整数と小数点の数値を混ぜて撮影しないようにしましょう。理由を次の項目でご説明します。
インターレースやPsFなども、TV規格やシネマカメラ等で出てきますが、少し話が複雑になる為、興味がある方はこちらに分かりやすく書かれているので、調べてみてください。
https://videolab.jp/interlace-progressive/

なぜこれを始めに設定しないといけないか

動画を映像作品に落とし込むには、編集する必要があります。その為に上記の設定で撮影したデータを編集ソフトで開きますが、ベースとなるコマ数を初めに決める必要があるのです。最終的な作品の仕上がりを24fpsで観たいのか、60fpsで観たいのかによって、基準コマ数を統一しないといけません。
ここで問題になるのが、60fps仕上げで24fps撮影の場合、コマ数が足りないということになります。そのまま編集ソフトのタイムラインに載せると、滑らかに表示されずチラついてしまいます。足りないコマは前後のコマから補完する必要がありますが、これには高価なプラグインソフトや技術が必要で、一般的な編集ソフトの機能ではなかなかうまくいかないことが多いです。逆に60fpsで撮影して24fpsや30fpsに落とすことは、コマを減らすだけなので問題ありません。
ですので、初めにどのコマ数で撮影するのか編集者としっかり打ち合わせして、設定を確認しながら撮影を行うようにしましょう!

小話 お家のTVで映画は24fps!

最近のTVは滑らかに映像が見れるように、あえてコマ数を補完する機能が付いていたりするのをご存知でしょうか?人によって、激しい動きの映像を見やすくしたいという方もいるようで、24fpsなどを60fpsにTV側で補完して再生する機能です。
私は初めて見た時とても違和感を感じました。せっかく24fpsで雰囲気良く撮られた映画が、60fpsでヌルヌル動いていては、変に現実感が出てしまいムードも台無しです。
スポーツを観る時なんかはとても見やすくなるので素晴らしい機能だとは思いますが、映画やミュージックビデオを観る時は、是非その機能を切ることを強くお勧めします。
24fpsの映像を見慣れてくると、すぐ気づくようになると思いますので、ご自宅のTVを一度ご確認ください。

ハイスピードとコマ落とし撮影

録画中に60fps以上で撮影し、書き込みの際に24・30・60fps(ベースフレームレート)に内部で間引いて記録することによって、観る時にスローで再生されます。24fpsベースの120fps撮影なら、5倍スロー。30fpsベースの240fps撮影なら、8倍スロー。という感じです。
アクション映画の決め技のシーンや、スポーツのリプレイなどによく使われますね。
名称がややこしいのですが、撮影の時はコマ数を多くするからハイスピード、観るときはゆっくり再生されるからスーパースロー、となります。

高速度撮影 (ハイスピード)

スーパースローとか早回し映像などという言葉で耳にしたことがあると思います。
これは高速度撮影・低速度撮影と言って、現実に見える速度より早くしたり遅くしたりする映像効果です。
撮影コマ数を多くしたり少なくしたりしてこれらの効果を生み出すのですが、最近のカメラやスマホにはこの機能が普通に備わっていることが多いです。

低速度撮影 (コマ落とし)

高速度とは逆に、23fps以下で撮影し、書き込み時にベースフレームレートに戻すことによって、早送りの効果を産みます。
植物の成長する様子を早回しで見せたりするのもそうです。
最近では、タイムラプスやインターバル撮影というのも写真業界で流行った言葉ですが、これも低速度撮影に分類されます。
また、クレイアニメやストップモーション映像などは、あえて少ないコマ数で撮影したものを、そのままのコマ落ち状態で再生することで、あのカクカクした独特の可愛らしさが表現されています。

撮影時に気を付けるポイント(コマ落ち)

シャッタースピードの設定は、1/撮影コマ数未満で撮るとコマ落ちが発生した状態で記録されます。(もしくは設定できません)これは、単純に1/50だと1秒間に50回しかシャッターが切れないためです。
例)60fps撮影の場合 1/50で撮影すると10コマ不足する。
この不足したコマを編集で補完するのは前述のようにとても大変なので、コマ落ちが意図せず発生しないようにシャッタースピードには気を配る必要があります。私自身の撮影でも、後処理でスローをかけるために60fpsで撮影することが多いので、低照度の室内撮影時によくこの場面に直面します。
現時点でこの問題をクリアするには、フリッカーや露出などが絡んできて少し複雑になるので、この後の記事を理解してからまた見返していただきたいと思います。

小話 SS下げたらコマ数足りなくなった話

先ほどの私の撮影でのお話ですが、低照度のイメージ系の撮影現場でどうしても露出が足りず、止むなく60fpsでシャッタースピードを1/30に落としたのですが、当然30コマしか記録されず、そのカットだけスロー編集ができなかったということがありました。
その編集者がコマ補完のプラグインを持っていたので事なきを得たのですが、SSを動かすときは今でもヒヤヒヤしています。
次回は、フレームレートと深―い関係にあるシャッタースピードについてです。


北下 弘市郎(KOICHIRO KITASHITA)

映像・写真カメラマン・撮影技術コーディネーター
1986年 大阪生まれ。大学では彫刻を学び、写真スタジオのアシスタントを経て独立。
2020年 株式会社Magic Arms 設立。
音楽・広告・ファッション・アートなどを中心に、ムービー・スチル撮影を行う。
撮影現場の技術コーディネートや機材オペレーターなど、撮影現場に関する様々な相談に対応する。
古巣の株式会社 六本木スタジオにて、映像撮影の講師にも従事。

profile__PID:74539462-8bdd-456c-ae0c-4caf282d272c