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Road to 24fps !! 第2回 シャッタースピード

〜写真カメラマンから動画カメラマンを目指す〜

Road to 24fps !! 第2回 シャッタースピード

目次

みなさんこんにちは! Road to 24fps!! 第2回はフレームレートと深〜い関係にあるシャッタースピード(以下SS)についてです。
「いや、写真やってきてるから流石にわかるよ」と油断しないでください。動画にとってのシャッタースピード設定は、写真とは違った観点を孕んでいるのです。設定の順番としても初めの段階で設定することが多いので、途中で数値を変えるときは注意しましょう。

動画のシャッタースピード 〜意外と複雑なんです〜

写真との違い

写真にとってのSSは、対象のブレ具合と、露出調整に使うことがほとんどだと思います。スタジオのストロボ撮影に至っては、1/125などにずっと固定で最後まで動かさないこともザラです。
では動画のSSですが、まず前回触れた通り「フレームレートの数」分の1より遅くすることはありません。詳しくは次でお話しますが、基本となる考え方が、
1/「フレームレート数×2」= SS
というものです。24fpsなら1/50、30fpsなら1/60、60fpsなら1/125、といった感じです。また、他の要素として「フリッカー」の存在が大きくあります。動画撮影の天敵と言っても過言ではありません。屋内でも屋外でも関係なく、フリッカーの映り込みは構図作りの邪魔をしてきます。SSの変化による画面への影響は写真と基本的に同じなのですが、以上の2点を踏まえて数値を決定しないといけないのです。

フレームレートとの関系性

フレームレートの数より遅くすることはありませんが、なぜ倍数にする必要があるのでしょうか?
動画は1枚1枚の写真の集まりですが、連続した動画として見るときに、各コマが写真と同じようにパキッとシャープに写りすぎると、チラついて見えるのです。カクカクというように感じるかもしれません。(具体的には1/500以上くらいから)特に動きのある対象やカメラワークによっては顕著に見えてきます。
これを回避するには、各コマが「ほんの少しブレて」いる必要があるのです。少しブレたコマは、次のコマとのつながりがスムーズに見えるため、滑らかな動画として見えるのです。
逆に、1/25や1/30では早い動きの対象を追うには遅すぎるため、対象のエッジが滲んでしまって、動きのわかりづらい動画になります。
これらから、ちょうど良い感じに写るのが1/「コマ数×2」は必要ということになるのです。

SS 1/30

SS 1/100

SS 1/1000

フリッカーについて

フリッカーとは、人工的な光を写した際、実際の見た目と反して画面内で、明滅・もしくは黒い帯や縞模様の写り込みが発生するものを指します。チラチラして見えるものから、やんわり波打ったようなもの、点滅して見えるものや縞々のものまで、写り方にはいくつかパターンがあります。

フリッカーが起こる原因と解決法

フリッカー発生の原因は、明滅する光源の周波数と、SSのズレから発生します。人口の光は高速で明滅を繰り返して発光していることが多く、特に交流電流ではインバーター(高周波変換器)の入っていない光源、特に古いビルなどの蛍光灯やLEDでよく起こります。インバーターは、低周波ではチラついて目が疲れやすくなるため、家庭用の照明にも搭載されていることが多いのですが、入っていないと明滅がゆっくりなため、SSと合わなかった暗い画面が写り込むので、チラついた映像になります。
解決法は簡単で、基本的には1/周波数のSSで消えますし、周波数の倍の数値でも消えることが多いです。それで消えない場合は、フリッカーが消えるSSを画面を見ながら探ります。
例 ) 50Hzなら1/50 or 1/100  60hzなら1/60 or 1/125 (120)
明るく光が回っていると、目立たないこともあります。また、地域に対応している周波数帯を覚えておくことも重要です。日本の周波数帯は東西で2分割されていて、西日本が60Hz、東日本が50Hzとなっています。(境界線は新潟県の糸魚川と、静岡県の富士川を結ぶ辺りだそうで、東電と関電が別々で設定したことが始まりとだとか)これは、東京で撮影するときは、1/50 or 1/100 で、翌日大阪で撮影する時は1/60 or 1/125 で撮影しないといけないということになります。面倒臭いですが、日本各地をよく移動されるカメラマンの方は特に気をつけなければいけません。(海外の場合は、その国の周波数を調べておくことをおすすめします)

撮影用ライトのフリッカーについて

動画撮影用のライトには、大体インバーターが入っているので普通に撮影する分には問題ないのですが、ハイスピード撮影(スーパースロー)の時は注意が必要です。1/撮影コマ数以上に設定されてしまうので、例えば240fps 撮影で1/240などになると、盛大にフリッカーが発生するパターンもあります。特に、LEDや蛍光灯ライトで発生しやすく、アンダーめの絵作りで目立ちます。LED懐中電灯なども結構派手に出ることが多いです。
また、HMIライトを使ったことがある人は、バラスト(電源部)のツマミに「Flicker Free」という項目を見たことがあると思います。これは、バラスト側である程度高周波に上げることができ、フリッカーを防いでくれるという機能です。また、タングステンライト(白熱灯)は、フィラメントがずっと発光しているだけなので、フリッカーは起きません。ご自分でライティングをする場合は、灯体の特徴もよく調べておきましょう。

小話 フリッカーとの戦い

最近のカメラにはフリッカー低減機能が備わっていることもあるようですが、映り込んでしまったフリッカーを編集で補正することは容易ではありません。わかりやすいものから、よくよく観察しないとわからないものまで様々で、私も撮影時に自分では気づけなかったフリッカーを、クライアントに指摘されて気づく、、、なんて格好悪いこともありました。これを現場で見つけだす目を養うのが動画カメラマンの第一歩と言っても過言ではないかもしれませんね。また、大きいモニターで確認した方が見つけやすいので、プレビュー用の大きいモニターと見比べてみることも大事です。

適正SSの割り出し方

ここまで書いておいてぶっちゃけた話ですが、実は動画撮影は西日本では1/125 (1/120)、東日本では1/100に設定すれば、基本的には問題無いという「お約束設定」があります。かくいう私も東京近辺での仕事が多いですが、ほとんど1/100で撮影しております。
これは、フリッカーを回避しつつ、60fpsまでのフレームレートにも対応し、ある程度の滑らかさを保つことができる美味しいとこ取りができるからです。なので、この1/100 ( or 1/120)が、撮影時の基準になると思います。
しかし、現場の条件によって設定変更が必要な場面もあるため、いつでも対応できる用意をしておきましょう。

屋外編

屋外で気を付けるポイントは、ヌケに人工的な光の写り込みがあるかどうかです。ない場合は、基本的にはどのSSでも大丈夫ではありますが、信号や建物の写り込みがある場合は、フリッカーに注意する必要があります。信号などは、ボカしたりすると点滅して見えたりしますので、結構気になります。動きの早いサッカーの撮影をするとして、細やかな足捌きを移したいというなら、1/250などでも良いかもしれません。
明らかにフリッカーが発生する(または可能性がある)場面では、1/100 ( 西日本 1/120 )固定で、露出オーバーはNDで落とす、、、という考え方になります。

屋内編

屋内では、基本的にフリッカーと露出との戦いになります。撮影用のフリッカーの出ないライトを使用する場合でも、画面内で地明かりとミックスするなら、絶対に1/100 (or 1/125)をキープする必要があります。露出が足りないとき、動きの少ないインタビューなどなら遅いSSにしても問題ない場合が多いです。(1/50 or 1/60など)この場合は、コマ数を意識しましょう。例外として、TVやモニターなどの画面、周波数の違うLEDなどが写り込む場合は、1/50などの基準とは違う場合があり、モニター上に黒い線が入ったり、パラパラしたものが写ったりすることがあります。場面によっては、どの周波数にしてもフリッカーが取れない、、、ということもあるため、事前に確認しておくことをお勧めします。(筆者もイベント会場の撮影の際、全てのライトの周波数が違い、全くフリッカーが抑えられなかったことが何回かあります。そんな時は一番マシなSSに設定して素直に諦めてください笑)

小話 ストロボ光をストロボっぽく写すには

写真用のストロボ光を、動画の画面内にストロボ光っぽく写す場面が、撮影シーンによってあります。※記者会見のシーンなど。実際のストロボ光の閃光スピードは1/250〜数千分の1とSSよりかなり高速です。これを画面に写すと白い横線が一瞬映るだけで、人に当たっているようには見えにくかったりします。
これはSSに深く関係していて、ストロボ光がセンサーの1画面分の読み込みより早いため、画像内に白い線として写り込みます。白い線ではなく、被写体に当たった光のように見せるためには、ストロボ光が画面全体に回らず、被写体だけに当たるように調整するか、舞台用のストロボライトを使用すると、閃光スピードが遅いため人物に光が当たっている感じに写すことができます。また簡易的に、LEDライトを手動で一瞬だけ光らせたりすると、それっぽく写ります。

表現とSS

最後に、動画の表現とSSとの関わりについてですが、いかに各コマのブレ感を適正に調整するか、というところにかかってくるように思います。作品を見る側が妙なブレ感で対象が見にくくなったり、チラついてしまっては表現の邪魔になってしまいます。シーンによって適正なSSに設定することは、被写体をきっちりと写し出すためのとても大事な作業になるのです。
また、カメラのセンサーの読み出しスピードや方式によっても「適正」は変化します。後の回でお話ししますが「ローリングシャッター現象」や「ジェロ」という画像の歪みの発生にも関係してきます。私がお伝えした設定方法はあくまでガイドラインでしかありませんが、色々と設定を試してみて、シーンに合ったSSを見つけ出してください!!
次回は、苦手意識がある人も多いのでは?Log撮影と感度についてです。


北下 弘市郎(KOICHIRO KITASHITA)

映像・写真カメラマン・撮影技術コーディネーター
1986年 大阪生まれ。大学では彫刻を学び、写真スタジオのアシスタントを経て独立。
2020年 株式会社Magic Arms 設立。
音楽・広告・ファッション・アートなどを中心に、ムービー・スチル撮影を行う。
撮影現場の技術コーディネートや機材オペレーターなど、撮影現場に関する様々な相談に対応する。
古巣の株式会社 六本木スタジオにて、映像撮影の講師にも従事。

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