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フォトグラフィックモーションの撮り方  第3回

逆光の車窓、流れる記憶を閉じ込める|tomosakiさん

走る電車の窓から見える風景は、1秒ごとに形を変えていきます。 じっと窓の外を見る女と、流れ続ける外の世界。 その対比を、写真の構図のまま数秒間だけ閉じ込める。 動画でありながら、「写真」の思考で撮影するのが、フォトグラフィックモーションです。 第3回は、tomosakiさんが電車内で捉えた逆光の車窓風景をもとに、 その考え方と編集工程を紹介します。

目次

流れる景色は、写真では足りない

−撮影のきっかけ
撮影場所は山形方面へ向かう羽越本線の電車内で撮影しました。目的は、電車の窓から見える鳥海山を撮影することだったのですが、実際に乗ってみると、逆光が差し込む車窓がとても印象的でした。鳥海山を入れるなら順光側になるのですが、放課後の夕方の時間帯を彷彿とさせる逆光がより青春の記憶に繋がると感じ、光に向かう席を選びました。
 広がる田園風景が、車窓から流れていく。その移ろいを見たとき、「これは写真よりも動画だ」と感じました。景色は著しく変化していくので、その情報量は動画でないとおさまりません。写真も撮影していますが、このときは動画撮影を優先しています。

主役は、モデルではなく流れゆく景色

−撮影の考え方とポイント
モデルには、動きをつけず、静かに窓の外を見てもらいました。理由は、主役はモデルではなく、「流れゆく景色」だったから。モデルが動くと視線がそちらに集中してしまうため、静止させることで、自然と風景に視線が向かうようにしました。見ている人が、モデルと同じ気持ちで窓の外を眺めるような構図を狙っています。
逆光での撮影は、光量が多く手前が暗くなるため、露出決定が難しくなります。動画モードでマニュアルに切り替えたあと、可変NDフィルターを装着して光量を調整しました。動画の場合、シャッタースピードはぼぼ1/60秒で固定。ベースISO感度でもっとも低いISO800にし、F値を決めてNDフィルターで明るさを調整する、という流れです。
撮影はすべて手持ち。強力な手ぶれ補正があるとはいえ、電車の揺れが大きいので、後で安定したカットを選ぶために、長めに撮影します。
ワンカット作品として完結させる前提だったので、他の素材と繋げて作品にすることは考えず、1本のフォトグラフィックモーションとして成り立つことを意識しています。環境音は使用しないので、現場では音を収録する意識はせず、僕の指示の声なども盛大に入っています。

〈撮影設定〉

カメラ Nikon Z 6III
レンズ NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
撮影モード 動画モード、マニュアル
動画ファイル記録形式 N-RAW、階調モード「N-Log」に設定
シャッタースピード 1/60秒固定
F値 F4
ISO感度 800
フィルター 可変ND使用
撮影秒数 26秒
最終尺 約3〜4秒
撮影 手持ち

N-Logで撮り、青春の色をつくる

−編集と仕上げ
編集ソフトはDaVinci Resolveを使っています。編集のいちばんの目的は、「色の編集」です。やることは、Lightroomで写真編集する工程とだいたい同じ。動画記録方式をN-RAW、階調モードをN-Logに設定して色の階調を広く確保しておき、編集で青春を感じる情緒的な色調に仕上げていきます。 もうひとつ重要なのは、「尺を短くする」こと。電車での撮影はブレが大きかったり、車窓からの景色に人工物が入るなど、意外と使える尺が短いので、もっともよい部分だけを切り取ります。

Before|編集前

N-Log撮影のため、全体的にグレーがかかったフラットな映像。コントラストも低い状態です。

After|編集後

LUTで標準的な色に戻した後、トーンカーブで露出とコントラストを整理。夕方の逆光感を強調するため、ハイライトとシャドウにわずかに色味を加えています。

【 DaVinci Resolveの編集ワークフロー 】


1 素材を読み込む

DaVinci Resolveに動画を取り込みます。

2 尺をカットする

pgm3-5.png__PID:7654cfb5-0b28-44b9-8769-605d86cbfe35

26秒の素材から、揺れが少なく車窓の風景の印象が良い部分を抽出。結果、4秒程度になりました。


3 画角を微調整する
水平垂直を整えます。


4 スタビライザーでブレを補正する

pgm3-1.png__PID:54cfb50b-2834-4907-a960-5d86cbfe35a4

スタビライザーを適用して、ブレを補正します。


5 カラーグレーディングで色を整える

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Before

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After

pgm3-4.png__PID:f67654cf-b50b-4834-b907-69605d86cbfe

カラーページでは、Log → LUT適用 → トーンカーブ調整 → 色味微調整 の順番で色を整えます。LUTは自分の表現に合う、サードパーティ製のものを使用しています。メーカー純正のLUTはニュートラルな変換が可能ですが、求める質感に合わない場合も。


6 書き出す

デリバーページで書き出します。


数秒の中に、風景の記憶を閉じ込める。その選択に、この表現の面白さがあります。
動かないモデルと、流れ続ける外の世界。写真と同じ構図のまま、時間だけを足す。
フォトグラフィックモーションは、「動きを足す」ことより、「どこを動かさないかを決める」ことが、表現の核なのかもしれません。


tomosaki

2020年にコロナをきっかけにカメラを本格的に始める。地元福井を背景に青春や物語を感じる写真をSNSに投稿。2022年「あの頃にみた青は、」をKADOKAWAより出版。2023年に看護師を辞め、フリーランスフォトグラファーへ転身。 地方創生やウェディング撮影など幅広く活動している。

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