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Road to 24fps !! 第18回 録音の話 〜ワンオペ撮影の難所〜

〜写真カメラマンから動画カメラマンを目指す〜

Road to 24fps !! 第18回 録音の話 〜ワンオペ撮影の難所〜

みなさんこんにちは。
 Road to 24fps!! 第18回は、ワンオペ撮影カメラマンにとっての難所、「録音」についてのお話です。
動画撮影をする時、カメラにはマイクが内蔵されていて、現場の音は自動的に収録されます。
しかし、「編集で使える音を録る」となると話は別で、何をどうすればいいのか分からなくなる方も多いと思います。
(私の周りのカメラマンからも、録音やマイク関連の質問を一番多く受けます)
そもそも撮影中は、構図・露出・フォーカスなど、目で確認する要素にほとんどの意識を持っていかれます。そこに「耳で聞く」という作業が加わるため、最初はかなり難しく感じるはずです。
私自身も、正直今でも「同時にやるのはしんどい」と思うことがありますし、録音に関する知識やノウハウも少ないので、あまり専門的なレクチャーはできません。
ただ、ワンオペであっても、「事故らず録る」ための最低限の理解は必要になります。
インタビューや対談、ドキュメンタリーなど、人の発話が重要な撮影では、音がちゃんと録れていないと映像自体が成立しません。
今回は録音の専門的な話ではなく、あくまでカメラマンが現場で困らないための実務ベースの考え方をお伝えします。

まずは前提:「音質は距離が9割」

録音において音質を上げる一番重要な前提は、とてもシンプルです。
マイクはできるだけ音源に近づけて使う。
これが全ての基本になります。

 人の声なら口元の近く、楽器なら音の出ている部分の近く。
どんなに高価なマイクでも、距離が遠ければ高音質は確保できません。
カメラに取り付けるマイクも例外ではありません。
この前提を押さえた上で、マイクの種類と使い方を考えていきます。

マイクの指向性

マイクには「指向性」という概念があります。
これは、マイクを中心にどの範囲の音を拾うかという特性です。 
代表的なものは以下の2種です。

  • ガンマイク(超指向性):狙った方向の音を重点的に拾う
  • ピンマイク(無指向性):全方向の音を均等に拾う

ガンマイクは、向けた方向の音を集中して拾うため、どこに向けるかが非常に重要になります。
前方向以外の音は拾いにくいことから、タッチノイズ(カメラを触った時の接触音)を抑制できるという利点もあります。
ここで一つ、誤解されやすいポイントがあります。
「指向性がある=遠くまで届く」と思ってしまう方が多いのですが、それは正確ではありません。

指向性はあくまで「どの方向を優先するか」の話であって、距離に勝る要素にはなりません。ガンマイクの指向性は、正面方向の狭い範囲の感度を高めつつ、側面や後方の音を抑える構造になっています。
あくまで「前方を優先する」という特性であり、横や後ろの音が「完全にカットされる」わけではありません。

特に、カメラ搭載用のマイクはそこまで狭い範囲に絞られているわけでもありませんので、クーラーの音のような環境音も拾います。

つまり、現場では「ガンマイク=前の音しか入らない」と過信しないように注意が必要で、撮影前の音環境のチェックは必ず行うようにしたいところです。

一方でピンマイクはほぼ全方向の音を拾えるため、向きはあまり気にせず、音源に近づけることが最優先になります。
こちらは、装着の方法や電波の問題など、ガンマイクとは異なった注意点があります。
詳しくは後ほどご説明します。
これらマイクの指向性の範囲は、スペック表などに図として書かれていることが多いです。
購入前に、そちらも確認しておきましょう。

ワンオペの基本構成

慣れないワンオペでの録音は、機材構成を複雑にしすぎないことが重要です。
レコーダーなどを取り入れて、バックアップを確保したりすることも大事ですが、複雑にしすぎて現場で事故ってしまっては元も子もありません。
まずは、カメラ本体にちゃんとした音を入力することから始めましょう。
まずは、ワンオペ時に使えるマイクは以下のようなものがあります。

① ワイヤレス(ピン)マイク

 → 発話を明瞭に録るために使います。
主な用途はインタビュー、コメント、対談など、少人数の録音に適しています。

小型ワイヤレスマイク

安価で高品質なものが最近急激に普及してきました。
送信機本体にマイクが内蔵されて、ノイズや入力調整まで自動で処理してくれます。
録音機能まで備わっていたりするので、バックアップ用途としても活躍します。
非常に小型なので、ワンオペ撮影には最適です。
多機能な製品も多いため、最初は使う機能を絞った方が、現場で混乱しにくくなります。

難点は、電波問題です。
人の多い環境や条件によっては、音が途切れたり、接続が不安定になったりすることもあります。

ワイヤレスピンマイク

ワイヤレスマイクと用途はほぼ一緒ですが、マイク部分が極小に作られていて、マイク本体が目立ちにくく、アクセサリも豊富にあるため、マイク自体を隠したりすることも容易にできます。
難点は同じく電波問題です。
免許無しで使用できるB帯タイプは、ロケ撮影では非常に便利ですが、施設や人の集まる会場などでは他のマイクとチャンネルが被ることがあり、事前確認が必須になります。
また、マイクを隠したり適切に設置するには少し知識や練習が必要です。

② ガンマイク

 → 機動力を重視するならこちらです。
環境音が必要だったり、大人数の録音、ピンマイクの設置が難しい被写体だったりする場合はこちらが有効です。
ガンマイクは「狙った方向の音を拾う」ことに優れていますが、距離が離れると急激に環境音の影響を受けます。
ピンマイクのバックアップとして同時に装着することもありますが、録音チャンネルの振り分けや装着位置には少し工夫が必要になります。

③ その他

miシュータイプのマイク(SONY限定)

SONY系のミラーレスでは、miシュー(ホットシュー)経由でデジタル音声入力できるマイクもあります。
バッテリー・ケーブルレス化できるので、カメラを小型軽量化するのにはもってこいです。
ジンバルへの装着時などにも重宝します。
音質も割と高いものが出てきているので、ワンオペでSONYカメラをお使いの方は是非お試しいただきたいです。
また、使い分けるポイントの一つとして、撮れる音の違いを知っておくことも重要です。

フォンジャックとXLR

マイクの接続は、フォンジャック(3.5mmミニジャック)タイプとXLR(キャノン)タイプに大別されます。
フォンジャックはイヤホンにも採用されているので馴染みはありますが、XLRは業務用規格なのでそもそもミラーレスカメラには装備されていないものがほとんどです。
使用には専用のXLRユニットを購入する必要があります。
フォンジャックタイプは小型で扱いやすいですが、ノイズが乗りやすいというデメリットもあります。
XLRタイプの方は音質が向上する場合が多いですが、設定や電源供給(ファンタム電源)など、ある程度の知識が必要になります。

これらを参考に、機材を選んでいただければと思います。

ピンマイクの装着

ピンマイクは便利ですが、装着には少しコツがあります。
基本はシンプルで、

  • 胸元(口元に近い位置)に付ける
  • 服擦れが起きにくい場所に付ける

この2点がまず重要になります。

対談の場合は、お互いに顔を向けて会話をすることが多いため、その顔の向く側へマイクを付けると、より自然に声を拾いやすくなります。
収録前には実際に少し話してもらい、服擦れの音が入っていないか、余計なノイズを拾っていないか、音量レベルが適切かを確認します。
また、会話中に出演者が手振りでうっかりマイクを触ってしまうことがあるので、マイクに手などが触れないように事前に注意喚起しておくことも有効です。
さらに、マイク装着前に出演者の服装をチェックすることも重要です。
髪の長い方や、ネックレスなどのアクセサリーを付けている場合、動いた際にマイクへ接触してノイズの原因になることがあります。そういった部分も含めて観察します。
ジャケットやフロントボタンタイプのシャツは、ケーブルを服の中へ通しやすく、クリップも固定しやすいため、比較的装着しやすい服装と言えるでしょう。
女性の出演者の場合は、ヘアメイクさんにお願いして付けてもらうこともあります。
少し専門的になると、ピンマイク専用のアクセサリーを使って、よりスマートに装着することもできます。
例えば、襟元に縦に装着するための縦型のクリップや、生地へ直接固定する安全ピン型のものなどがあります。
ただ、この辺りまで来るとかなり専門性が上がってきます。最初のうちは無理に凝ろうとせず、まずは「しっかり音を録る」ことを優先していただければ十分だと思います。

小話:衣装で困るパターン

実務でよく困るのが、出演者の衣装にマイクの装着場所が見つからないケースです。
タイトなワンピースで、ポケットもベルトも無い。こういった場合、マイクや送信機を固定する場所がありません。
私も、アクセサリー類をまだ揃えていなかった頃はかなり苦労しました。
カメラのセッティングに手一杯で事前に衣装チェックができず、本番直前にタイトなワンピース姿で出演者が現れた時は、かなり肝を冷やした記憶があります。
その場でクリップを使って無理やり固定したこともありますが、見栄えはあまり良いものではありませんでした。
もちろん、服装に合わせた専用アクセサリーも存在します。ただ、この辺りまで来るとかなり専門性が高くなってくるため、初心者の方には少しハードルが高いと思います。
そういった状況を回避するためにも、最初のうちは、小型の一体型ワイヤレスマイク(送信機とマイクが一体になったタイプ)を活用するなど、機材側で解決する方法をおすすめします。
最近は、送信機を強力なマグネットで固定できるタイプも増えてきました。服へ穴を空けたり、生地を傷めたりするリスクが低いため、扱いやすくなっています。
最終的には、自分の現場や運用スタイルに合った方法を見つけていくことになりますが、そういった意味でも、事前準備とテストはとても重要だと思います。

“耳で聞く”チェックポイント

音のモニタリングで、気をつけるポイントをいくつかご紹介します。

① 常時鳴っている音

エアコン・冷蔵庫・換気扇・自販機など
→ 撮影前に止められるものは止める

室内ロケで見落としがちなのがエアコンです。夏や冬の撮影では止めるかどうかの判断が難しく、「快適さ」と「音質」のトレードオフになります。どうしても止められない場合は、収録後にノイズ除去処理で対応することになりますが、完全には消えません。事前にクライアントや被写体と話し合っておくと安心です。

② 現場で発生する音

足音・ドア・物音など
→ 声と被ったかどうかを確認

声と被った音は基本的に後処理で消えません。

③ 外的要因

車・バイク・飛行機・救急車など
→ 回避 or 待つ

これはロケハン段階での判断が重要になります。
「飛行機の飛行ルート下」「幹線道路沿い」など、構造的に避けられないケースもあります。そういった場所は、事前に把握して別の候補地を用意しておくか、リテイク前提で段取りを組んでおくことが必要です。

◎ 音が出ない原因

音のチェック前に、マイクを繋いでいるのにそもそも音が聞こえない、というパターンがあります。
この原因として多いのが「ファンタム電源」の設定です。
コンデンサーマイク(ガンマイクなど)は、動作するために電源が必要で、
バッテリー内蔵タイプとファンタム電源タイプがあります。

 ファンタム電源は、XLRケーブル経由で電源供給される仕組みですが、カメラや機器側から設定をする必要があります。
機器側のスイッチ表記は「LINE」「MIC」「MIC +48V」と書かれていることが多いですが、 「+48V」や「P48」といった表記のものがこのファンタム電源にあたります。
ここに設定してあげると電源が供給されるようになります。

ちなみに、ファンタム電源に対応していない機器を接続した状態で、ファンタム電源を供給してしまうと、機材によっては故障の原因になることもあるため、扱いには注意が必要です。
また接続時、コンデンサーマイクなのに「MIC」や「Line」になっていると、
音が極端に小さい、またはほぼ録れていない状態になります。

その他のマイク接続時は、「Mic」を選択します。
「Line」は、PAやミキサー卓からラインで音をもらったりする時に使います。
マイク接続時にLineにしても音が出ませんので、こちらもご注意ください。

オート録音という選択

ここまで見ていただいただけでも、カメラ以外に気を配らないといけないことが多いことがお分かりいただけたかと思います。
慣れない機材に、耳で聞くという慣れない作業は、現場ではリスクでしかありません。
それでも音を録る必要がある時もあると思います。

そんなリスクを少しでも減らすために、録音レベルには「オート調整機能」を積極的に使用することをおすすめします。
ワンオペや簡易的な録音の場合は、私もオートを積極的に使います。

音量差を自動で調整し、急な大声などによる音割れをある程度防いでくれます。
音量変化の激しい場所や、突発的に大きな音(笑い声など)が入っても、ある程度うまく調節してくれますので、音割れやレベル調整を気にしすぎず、撮影に集中できることがメリットです。

ピークメーターの見方

ちなみに、きっちりと音を収録するときは、マニュアルで操作することもあります。
録音部が入る時や、ミキサーを介して録音する時は、1kHzのテストトーンを流して基準をとることもあります。
この時に確認するのが「ピークメーター」の表示です。
ピークメーター自体は、見たことがある人がほとんどだと思いますが、音の入力はこのメーターを見ながら調節していきます。
テストトーンを流す時は、このメーターが-20dBになるようにレベルを調節します。
(録音部がいる時は、その人の指示に従います)

音が割れる時は、メーターが最大値まで振り切れて赤く表示されることが多いです。
一瞬だけメーターが最大値に触れる程度なら問題ないこともありますが、そうならない位置でメーターが振れ続けるようにレベル調整をしていきます。
きっちり音が録れれば、その後の音調整作業のクオリティも上がりやすくなります。
慣れてくれば是非トライしていただきたいと思います。

小話:音の失敗談

録音の失敗は本当に色々あります。

  • ピンマイクとガンマイクを両方接続した時に、パラ(別々のチャンネルで収録すること)で録る予定だったのに、ミックスされていることに気づかず、編集時に怒られたこと。
  • 割と大きな施設でインタビューを撮る時に、ワイヤレスピンマイク(この時はB帯)のチャンネルが現地の受信機と被り、施設全体に「さあ!ということで、○○にやってきました!」という出演者の声が響き渡ったこと。
    → 一般客がいなかったこともあり、すぐチャンネルを変えてことなきを得ましたが、今でもトラウマです。
  • ピンマイクの電池を前の撮影から変え忘れていて、大物俳優のトーク中に電源が切れて焦ったこと。
    → 素直に謝って電池交換をさせてもらい、同じ話をしてもらいました。
  • レコーダーを繋いで録音していたのに、レコーダーのRecボタンを押し忘れてバックアップが無意味になったこと。
  • 撮影スタジオの隣で大規模工事が行われて、収録中に作業音(特に金属のカンカン!という音)が入ってしまったこと。
    → これは業者の方に昼休憩のタイミングを教えてもらい、そこで撮影再開して乗り切りました。

などなど、枚挙に暇がありません。
私が何とか仕事を続けてこられたのは、それらの失敗をフォローしてくださる現場の方達のおかげです。
何度も繰り返しになりますが、とにかく「できるだけ現場では無理をしない」ということを心がけて、事前準備をしっかり行っていただければと思います。

次回は、モニタリング環境構築の強い味方、「ワイヤレストランスミッター」についてです。

北下 弘市郎(KOICHIRO KITASHITA)

北下 弘市郎(KOICHIRO KITASHITA)

映像・写真カメラマン・撮影技術コーディネーター

1986年 大阪生まれ。大学では彫刻を学び、写真スタジオのアシスタントを経て独立。2020年 株式会社Magic Arms 設立。音楽・広告・ファッション・アートなどを中心に、ムービー・スチル撮影を行う。撮影現場の技術コーディネートや機材オペレーターなど、撮影現場に関する様々な相談に対応する。古巣の株式会社 六本木スタジオにて、映像撮影の講師にも従事。