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Road to 24fps !! 第19回 ワイヤレストランスミッター 〜便利さの裏にある判断ポイント〜

〜写真カメラマンから動画カメラマンを目指す〜

Road to 24fps !!  第19回 ワイヤレストランスミッター  〜便利さの裏にある判断ポイント〜

みなさんこんにちは。
Road to 24fps!! 第19回は、現場のモニタリング環境構築の強い味方
「ワイヤレストランスミッター」についてのお話です。
以前、現場のモニタリング環境について解説した際にも軽く触れていましたが、実際の現場では「ケーブルを引けない」「引きたくない」という状況が必ず出てきます。その解決手段として広く使われているのが「ワイヤレストランスミッター」による映像のワイヤレス伝送です。
ただし、これは単純に"便利な機材"というわけではありません。使い方によっては、逆に現場を止める要因にもなります。
トランスミッターは「無線送信機」全般を表すもので、映像だけではなくマイクやストロボの無線機もこの部類に入ります。
そして本記事では、映像伝送用の機器をメインとして指しますが、他の無線機材に置き換えても共通するポイントがあります。
今回は、ワイヤレス接続の基本的なメリット・デメリットに加えて、実際の現場での判断ポイントや注意点について整理していきたいと思います。

ワイヤレス化のメリット・デメリット

メリット

ワイヤレス化の最大のメリットは、もちろんケーブルからの解放です。

例えば屋内撮影で複数の部屋を移動しながら撮影する場合、ケーブルの撤収と再設営には想像以上に時間がかかります。
ワイヤレスであればこの工程がほぼ不要になり、当然現場全体のスピードが上がります。

また、照明や電源のケーブルが多く混在している狭い空間では、映像ケーブルを1本減らすだけでも安全性は大きく変わります。床にケーブルが這っている状態は、スタッフや被写体の移動時に引っかかるリスクもあるため、減らせるに越したことはありません。

屋外ロケでも同様で、移動の多い撮影ではケーブルレスであること自体が効率に直結します。特に刻一刻と変化する人の流れや自然光下での撮影では、撮れ高の確保は時間との勝負ですので、ワイヤレス化は大きく貢献してくれるでしょう。

ジンバル等で長い距離を移動しながらの撮影では、そもそも有線接続では不可能なカットも存在しますし、監督がモニターを持って移動しながら確認できるようになれば、コミュニケーションのスピードも変わってきます。

さらに最近のトランスミッターは飛距離も伸びており、クライアントを大きく移動させることなく、離れた場所から映像を確認してもらうことも可能になっています。広い会場での撮影や、移動を伴う取材撮影では特に効果を発揮します。

まとめると、ワイヤレス化のメリットは「現場のスピードアップ」「安全性の向上」「フレキシブルな動き」の3点に集約されます。

デメリット

一方で、ワイヤレス化には明確なデメリットもあります。

まず、機材の重量と体積が増えます。ミラーレスなど軽量運用を前提とする場合、この影響は無視できません。
送信機をリグに組み込むには、それなりのスペースとマウント方法を考える必要が出てきますし、接続ケーブルや電源も必要です。
ケーブルが増えれば、その分トラブルの発生箇所も増えることになります。「ワイヤレスにしてケーブルが減った」と思いきや、実は別の種類のケーブルが増えている、というのはよくあるパターンです。

さらに、電源管理の手間も増えます。送信機・受信機それぞれの電源を意識する必要があり、例えば撮影中に受信機の電池切れに気づかず、クライアント側から「映像が来ない」と言われれば、電池交換分の時間をロスする可能性もあります。
充電のタイミングや予備バッテリーの管理など、運用面での負荷は確実に増えます。

そして最も重要なのが、「接続が不安定になる可能性がある」という点です。

トランスミッターは電波を使って映像を伝送するため、環境によっては映像が途切れたり、ノイズが発生することがあります。

注意が必要なのが電波帯域です。多くのトランスミッターは2.4GHz帯や5GHz帯を使用しており、これらはWi-Fiなどと共通の帯域です。

そのため、

・都市部やイベント会場などの人口密集地
・多数のWi-Fiが稼働している場所

などでは電波が混み合い、不安定になることがあります。

さらに見落としがちなのが、他の無線機器との干渉です。
例えば現場では、

・ワイヤレスピンマイク
・Bluetoothによるカメラやジンバル制御

といった機器も同時に使用されることがあります。
これらも同じように電波を使用しているため、条件によっては互いに干渉する可能性があります。

実際に私の現場でも、トランスミッターとピンマイクの送信機を近い位置に取り付けていたことで、音声がうまく飛ばなくなったことがあります。この時は送信機同士を離すことで改善しましたが、こういった問題はケーブル接続では起きにくい、ワイヤレス特有のものです。

同様に、受信機の配置にも注意が必要です。同じ場所に機器が集中すると、それも不安定になる要因になります。この辺りについてはこのあとご説明します。

電波は現場の環境に大きく左右されるため、安定性という点では有線に及ばないことを念頭に置いておく必要があります。

小話:トランスミッターの熱問題

トランスミッターは、高画質な映像や音声をリアルタイムで飛ばす機器のため、本体の発熱はかなりのものになります。
私が5年以上愛用してきた機材は、高画質なのに遅延がほぼ無いものだったのですが、冷却ファンが内蔵されておらず、使用中は軽く火傷しそうなほど熱くなります。

最近ノイズや接続が不安定になりやすくなってきたので、修理に出したところ、原因は発熱による内部の経年劣化なので、新品への交換を勧められました。トランスミッターではこの熱問題はよくあることらしく、頻繁に使う場合はより劣化が早いということでした。

新しい機材は、冷却ファン搭載のものを購入したのですが、今度はファンの音がかなりのものでした。
幸い録画中はファンが大人しくなるモードが付いていたので、録音時には問題がありませんでしたが、それは内部の熱を逃せないというトレードオフの関係でもあります。

そこでふと思いつきで、古い方のトランスミッターに、スマホ用の冷却ファンを取り付けて使ってみたところ、発熱が大幅に抑えられ、長時間の運用でもノイズが出ず、普通に使えるようになりました。
もちろんその分の体積は大きくなり、電源も必要になるので出番は限られるのですが、トランスミッターの熱問題は、運用上考えていく必要のある項目であることがわかりました。

機材選びのポイント

ワイヤレストランスミッターは単純に映像を無線伝送するものではありますが、搭載される機能は実に様々です。
ここでは、その代表的な機能をご紹介しますので、自分の現場に合ったポイントから優先順位をつけて頂ければと思います。

  • 飛距離:どれくらいの距離まで安定して電波が届くか
  • 遅延:映像の伝送にどれくらいの遅れが生じるか
  • 再接続性:一度接続が切れたとき、自動で復帰できるか
  • 電源:給電方式や運用中のバッテリー管理
  • 入出力端子の種類:HDMIやSDIの搭載
  • 外観(端子・アンテナ)、大きさ、重量
  • 対応画質:FullHD専用と4K、対応フレームレート

飛距離

カタログスペックに記載されている伝送距離は、多くの場合、「遮蔽物や電波干渉のない、見通しの良い環境」での測定値です。そのため、実際の撮影現場では環境によって変動します。

製品によって、公称距離は150m程度のものから数kmに及ぶものまで幅がありますが、市街地での実使用では、長くても400〜500m程度と考えておくのが現実的です。
また、コンクリートの壁や人体などの遮蔽物があるだけでも、電波は大きく減衰します。特にビルの上下階や地下では、急激に通信状況が悪化することも珍しくありません。

飛ばした映像をそのまま使用するライブ配信や中継では、事前の十分な動作確認が必須です。

もちろん、伝送距離は長いに越したことはありません。
しかし、スタジオなどの屋内使用や、屋外撮影であっても100m以上離れて運用するケースは多くありません。そのため、スペック上の最大伝送距離を過度に重視する必要はないでしょう。

遅延

遅延に関しては、「ほぼゼロ遅延」を謳う高価格帯の機種と、数十〜100ms程度の遅延がある一般的な機種とに大きく分かれます。

スペック上では、ms(ミリ秒)で表記されることが多いです。

1000ms = 1秒ですので、例えば80msの遅延は0.08秒に相当します。
数値が小さいほど遅延が少ないということになります。

これだけ見ると大した遅れではないように思えますし、モニタリングメインの現場であれば特に問題はありません。しかしフォーカスがシビアな撮影では、この程度の遅れでもかなり影響が出てくるため、高価ですが遅延が限りなく少ない機種を選択することが好まれます。

再接続性

電源を切ったり、バッテリー切れなどで一度接続が切れたとき、どの程度の時間で映像が復帰するかが重要なポイントです。
復帰する速度は現場の流れに直結します。
これに関しては、カタログスペックにもあまり書かれていることはなく、環境によっても左右されるため、事前に機種ごとの特徴を掴んでおく、または復旧時の対策を考えておく必要があります。

ワイヤレスマイクと用途はほぼ一緒ですが、マイク部分が極小に作られていて、マイク本体が目立ちにくく、アクセサリも豊富にあるため、マイク自体を隠したりすることも容易にできます。
難点は同じく電波問題です。
免許無しで使用できるB帯タイプは、ロケ撮影では非常に便利ですが、施設や人の集まる会場などでは他のマイクとチャンネルが被ることがあり、事前確認が必須になります。
また、マイクを隠したり適切に設置するには少し知識や練習が必要です。

電源

オンカメラモニターと同じく、専用・汎用バッテリーを直接挿せるもの、USBで給電できるものや、外部バッテリーからDC入力できるものなど様々な方式があります。
また、給電方法が複数用意されているものが殆どなので、運用自体はモニターと同じように、カメラシステムに合った給電方式を選んで差し支えありません。

 外観(端子・アンテナ)、大きさ、重量

カメラシステムへ組み込む際は、端子構成や本体サイズも重要なポイントです。特にジンバルやハンドヘルドへの搭載時は、重量バランスやケーブルの取り回しに大きく影響します。

購入前に実機を確認できない場合は、製品写真をよく見て、どのような端子が採用されているか確認しておくことをお勧めします。

HDMI端子を備えた製品が最も多いですが、SDI端子を追加したモデルもあります。

さらに上位機種になると、入力・出力端子を複数備え、クロスコンバート機能やスルーアウト機能に対応したものも存在します。

アンテナ形状にもいくつか種類があります。アンテナ収納型はコンパクトで持ち運びやすい反面、交換はできません。一方、ネジ式で着脱できるタイプは、破損時に交換できるほか、高感度アンテナへ変更できる場合もあります。いわゆる「キノコ型アンテナ」に交換し、受信性能を向上させる運用もあります。

また、近年は送受信機をモニターに内蔵した、一体型モデルも増えています。

配線やセッティングがシンプルになるため、初心者には扱いやすいタイプと言えるでしょう。

対応画質

FullHD限定と4K対応のモデルがあります。
ただし、「4K対応」と表記されていても、実際にはHDMI入力限定であったり、4K 30pまでしか対応していなかったりする場合も少なくありません。
一方で、グリーンバック合成や商品撮影など、細部の確認が重要な現場では、4Kモニタリング対応は大きなメリットになります。
ただ、通常の撮影現場では、必ずしも高画質伝送が最優先とは限りません。
私自身はFull HDモニタリングをメインに運用しているため、画質よりも「伝送距離の長さ」や「接続の安定性・再接続の速さ」を重視しています。たとえFull HD限定であっても、通信が安定している機材の方が、実運用では扱いやすいと感じます。

これらの要素の他にも、スマホへ直接接続できるもの、ジンバルやカメラコントロールができるものなど、個別の機能が多くあります。
自分の現場に合わせて優先順位をつけていただき、事前に特徴を掴んでおくことが無線機選びでは重要になると思います。


現場での運用

機材を選んだあとに重要になるのが、現場での具体的な使い方です。ここでは特に「チャンネル設定」と「送受信機の設置場所」の2点を取り上げます。どちらも地味なテーマですが、安定した運用のためには外せない視点です。

チャンネル設定

前述の通り、多くのワイヤレストランスミッターは2.4GHz帯または5GHz帯を使用しています。これらはWi-FiやBluetooth機器と共通の周波数帯であるため、電波が混雑している環境では干渉を受けやすくなります。
そこで重要になるのが、チャンネル設定です。
多くの機種はデフォルトで自動チャンネル選択になっています。しかし、自動設定が常に最適とは限りません。特にイベント会場や展示会、都市部のビル内など、無線機器が多い環境では、手動でチャンネルを変更した方が安定する場合があります。
実際の現場では、接続が安定するチャンネルを順番に試しながら探していく運用になることも珍しくありません。
上位機種になると、Spectrum Analyzer(スペクトラムアナライザー)を搭載し、混雑しているチャンネルや空きチャンネルを可視化できるものもあります。こうした機能があると、トラブルシューティングの速度が大きく向上します。
また、2.4GHz帯と5GHz帯には、それぞれ特徴があります。

  • 2.4GHz帯
    障害物に比較的強く、飛距離を出しやすい反面、Wi-FiやBluetooth利用機器が多い  ため干渉を受けやすい。 
  • 5GHz帯
    通信速度や安定性に優れる一方で、障害物に弱く、距離が伸びにくい。

そのため、

  • 屋外や広い会場 → 2.4GHz帯
  • 比較的狭く、障害物の少ない環境 → 5GHz帯

という使い分けが、一つの目安になります。

さらに5GHz帯では、DFS(Dynamic Frequency Selection)対応の有無も重要です。DFSとは、気象レーダーや航空レーダーなどと干渉しないよう、自動でチャンネルを切り替える仕組みです。DFS対応チャンネルは比較的空いていることが多い反面、レーダー波を検知すると一時的に通信が停止する場合があります。機種によってはDFSチャンネルを使用するかどうか選択できるものもあります。

送受信機の設置場所

ワイヤレス運用で見落とされがちなのが、送受信機の設置場所です。

接続がうまくいかない状況では、設置位置だけでも通信安定性が大きく変わることがあります。

一つの目安として、アンテナは「人の頭より高い位置」に設置することが推奨されています。具体的には、150〜200cm程度の高さが理想です。

これは、人間の体の大部分が水分で構成されており、電波を吸収しやすいためです。特にイベント会場やライブ現場のような人が密集する環境では、顕著にその弊害が出るため、カメラマンが背中に送信機を背負ったりもします。

ただ、カメラに送信機を装着する場合、常に送信機を頭より高い位置に設置するのは現実的ではありません。そのため実際の現場では、受信機側をライトスタンドなどで高い位置に設置し、少しでも見通しを確保する工夫を行います。

また、地面に近い位置も注意が必要です。低い位置では、地面からの反射波と直接波が干渉し合い、電波が弱くなる「マルチパスフェージング」が発生しやすくなります。そのため、膝より低いローアングルに持っていくと、途端に電波が途切れる場合があります。

アンテナ角度も重要な要素です。可動式アンテナの場合、送信機と受信機の間に壁や障害物があるときは、アンテナの向きを調整することで受信状態が改善する場合があります。

さらに、複数の無線機器を密集させすぎないことも重要です。トランスミッターだけでなく、ワイヤレスマイクやインカムなども同じく無線機器であり、近距離に集中すると互いに干渉する場合があります。

特にカメラ周辺は機材が密集しやすいため、無線機同士はできるだけ距離を取ることが推奨されます。厳密な数値ではありませんが、30cm程度離すだけでも改善するケースは多く、上下方向に配置をずらすだけでも変化があります。

実際に、受信機をどの程度まで密集して設置できるか試したことがありますが、5台程度を超えたあたりから接続が不安定になり、それ以上は正常に通信できませんでした。

 受信機の設置場所は、現場によって事前に決め打ちできないことも少なくありません。しかし、

  • 見通しを確保する
  • できるだけ高い位置に設置する
  • 無線機器を集中させすぎない

この3点を意識しておくだけでも、現場でのトラブル対応速度は大きく変わります。

無線、有線の考え方

まとめとして、無線化する時の判断ポイントをおさらいします。

 最も安定する有線接続を基本として、ケーブルレス化は、

  • 現場のスピードや効率が上がる
  • 電源や電波の管理をする余裕(準備)がある
  • 足元の安全が確保できる

といった条件を満たす場合に大変有効です。

有線は、とにかく安定しています。
一度接続してしまえば、基本的に映像が途切れることはありませんし、電波環境に左右されず、バッテリー管理も不要ですし、トラブルの原因究明が容易です。

これはシンプルですが非常に大きな強みです。

一方ワイヤレスは、取り回しやスピードに優れていますが、不確実性を含みます。どれだけ良い機材を使っても、環境に依存するリスクはゼロにはなりません。
ですので、いつでも有線に切り替えられる用意をしておくことも大事です。

私自身も、無線機は頻繁に使用しますが、機材トラブルも付き物です。
カメラリハの時点では問題なく繋がっていたのに、本番になった途端に不安定になったこと、バッテリーチェンジの後、なぜか再接続されず現場を停滞させたこと、送信機をカメラにうまく装着するために、何時間も悪戦苦闘してきたことなど、枚挙に暇がありません。

このように状況に応じて判断する軸を持っておくことが大切です。
「便利だから使う」ではなく「条件で使い分ける」という考え方、ぜひ意識してみてください。

次回は、現場に出る前のあれこれ、「機材セッティングの考え方」についてです。

北下 弘市郎(KOICHIRO KITASHITA)

北下 弘市郎(KOICHIRO KITASHITA)

映像・写真カメラマン・撮影技術コーディネーター

1986年 大阪生まれ。大学では彫刻を学び、写真スタジオのアシスタントを経て独立。2020年 株式会社Magic Arms 設立。音楽・広告・ファッション・アートなどを中心に、ムービー・スチル撮影を行う。撮影現場の技術コーディネートや機材オペレーターなど、撮影現場に関する様々な相談に対応する。古巣の株式会社 六本木スタジオにて、映像撮影の講師にも従事。