MAGAZINE
Road to 24fps !! 第20回 機材セッティングの考え方 〜現場づくりのあれこれ〜
〜写真カメラマンから動画カメラマンを目指す〜
みなさんこんにちは。
Road to 24fps!! 第20回は、撮影現場を構築する上で欠かせない「機材セッティングの考え方」についてのお話です。
ここまでの連載では、カメラ・NDフィルター・モニター・電源・録音など、それぞれの機材ジャンルについて個別に解説してきました。
では、それらを実際の現場でどのように組み合わせていくのか。
動画用の機材は、アクセサリも含めると無数に存在します。
写真界隈で昔から言われる「レンズ沼」のように、動画機材にも似た構造があります。深掘りし始めると、お金も時間も想像以上に消費します。
そこで今回のテーマは、その“組み立て方”そのものではなく、
「どう考えてセッティングを決めているのか」という部分になります。
数多く存在する機材の中から
「どれを選ぶのか」「どこで線を引くのか」
という判断こそが、機材セッティングの本質です。
私が普段行っている機材選びのプロセスをベースに、考え方を整理していきます。
セッティングは撮影前に始まっている

機材セッティングというと、撮影前日や当日に必要な機材を準備する、組み立てる作業をイメージする方も多いと思います。
もちろんそれも当てはまりますが、機材量が写真より多い動画撮影では、その作業はもっと早い段階から始まっています。
では実際の撮影までの流れを整理してみましょう。
- 案件受注
- 概要ヒアリング
- 資料確認(コンテ・スケジュールなど)
- 打合せ・ロケハン
といった工程になります。
これは写真撮影と大きくは変わりませんが、動画の場合はこの概要をヒアリングした時点で全体の機材構成の検討が始まります。
難しい話ではなく、撮影内容を確認しながらどの機材を使っていこうかな?と想像しているということです。
カメラマン(撮影監督)の立場としては、
- 予算 → プロデューサー
- 内容 → 監督
- 実現方法 → カメラマン
という役割になることが多く、要はこの「実現方法」を具体化するのが機材セッティングです。
例えば同じインタビュー撮影でも、
- スタジオかロケか
- 移動の有無と距離
- セッティング時間
- ワンオペか複数人か
- 特機の有無
などの条件によって構成は大きく変わります。
写真カメラマンが動画を撮る上で、機材は“撮りたい画”だけで決まるものではなく、“撮影条件”から決まるものという意識を持つことはかなり重要です。
もちろん画作りも大事ですが、コンテ上のカメラワークを実現するには、大半が機材に依存している場合が多いため、内容と機材とのリンクを意識してできるだけ早い段階から準備を進めていくことになります。
機材選びは「用途ごとの必須」から考える
では実際にその現場で「何を揃えるべきか」という話に踏み込んでいきます。
機材が揃っていない状況で最初に悩むのは、もちろん「何を(何から)買えばいいのか」という点だと思います。
ここでまず参考にしていただきたいのが、機材には単純な優先順位とは別に、用途ごとの必須条件があるということです。
※照明や特機などは次の段階として、ここではカメラのセッティングを中心にご紹介します。
屋外撮影(ロケ)
バリアブルNDフィルター
これは屋外ではほぼ必須アイテムです。便利というレベルではなく、画作りが成立しなくなる危険性が高いためです。
こちらに関しては、第5回のNDフィルターの回でその重要性をしっかりと説明させていただきましたので、ご参考にしてください。
カメラとレンズを揃えたら、まずNDです!

ミラーレス運用(リグ前提)
カメラケージ
カメラの機材拡張にはほぼ必須です。
こちらも第10回 手持ち撮影と手ブレ補正・リグの話で詳しくお話ししていますが、考え方として、とにかく軽量にしたい場合を除き、オプションを付けるための取っ掛かりが、ミラーレスカメラにはほとんどないということです。
などの装着、ハンドルやサポートグッズもこれを基準としていることがほとんどです。
動画撮影においてミラーレスは“そのまま使う機材”ではなく“拡張して使う機材”と考えた方が実務的です。

音声収録
ワイヤレスピンマイク
ガンマイク
※第18回 録音の話 参照
インタビューなど録音が必要な現場では、この2つが基本になります。
カメラ本体の内蔵マイクは、編集時の使用に耐えうる録音はほぼできないと思っていただいて差し支えありません。
イメージが中心で、録音は二の次という場合はガンマイクだけでも手に入れておくと安心です。
ガンマイクは、フォンジャックタイプのマイク端子に直接装着できるタイプのものとXLRタイプのものがあり、
高品質な録音環境を求める場合は、XLRマイクアダプターを介して装着します。
SONY製カメラにはmiシューというホットシューに対応したマイクもあり、ケーブルレス化もできます。

三脚
※第11回 動画三脚のススメ 参照
撮影における基本機材です。
三脚はカメラワークを行う機材でもありますが、現場で安全に機材を組み立てるためのベースにもなってくれます。
ご自分の現場感と照らし合わせて、できるだけ良い三脚を購入することをおすすめします。

優先順位の考え方

私の経験上、写真カメラマンがよく陥る機材選びの落とし穴が、レンズやカメラにこだわり過ぎるということがあります。
もちろんクオリティや仕上がりに直接関わってくるので疎かにはできませんが、それらばかり持っていても現場の効率はあがりません。
また、スライダーやジンバルのような便利グッズも、ついつい「使ってみたい」欲求が強くて早々に手を出しがちな機材です。
それでしか撮れない画はありますが、必ずしも購入する必要はありません。
重要なのは、「費用対効果」です。
ただ、膨大な機材やアクセサリの中から、本当に必要なものを見極めるのは簡単ではありません。
そこで、上記の必須機材をおさえた上で、機材選定時の優先順位を考えていきます。
まず初めの前提として、機材を現場に持ち込む方法は、「購入する」と「レンタルする」の2パターンあることを押さえておきます。
機材購入予算も無限にあるわけではないので、優先順位から外れた機材はレンタルすれば良い、とお考えください。
その上で、以下のようなポイントが判断材料になってきます。
- 登場頻度が高いか
- レンタル品のラインナップにないか(もしくは数が少ない)
- 他の機材で代替可能か
- 現場効率がどのくらい上がるか
これらを基準に、予算に合わせて購入順を決めていただければと思います。
私の場合は、仕上がりのクオリティは現場の作業効率が大きく関係していると考えていますので、機材にかかる時間短縮をとても重視します。
また、購入金額と耐用年数、現場登場頻度を比較して、どのくらいの期間でペイできるかを考えます。
その際はレンタルの金額も参考にすることが多いです。
また金額も安く、レンタルするほどではないが、持っていて咄嗟に登場させることで有効な画が稼げる、という機材も購入することが多いです。
機材は「現場を止めないため」に増えていく
何度も言いますが、動画機材は「画を良くする」目的のみで増やすのではありません。
「現場効率を上げるため」「現場を止めないため」に増やすという観点を持っていただきたいと思います。
そしてそれは、そのままクオリティにも直結します。
これらは一度逃すと戻ってきません。
フィルター1枚の着脱、三脚の高さ調整、配線の取り回し。
その積み重ねが現場のスピードを決めます。
もちろん、最初から全て揃える必要はありませんし、むしろ無理に揃えようとすると、重量増加、セッティング遅延、トラブル増加、といった問題が出ます。
まずは画作りに必要な最低限の機材で現場に入り、
を振り返って書き出し、基準に照らして追加していく方が確実です。
失敗してカット数が逆に減るくらいなら、確実な方法で有効なカットを増やしていく方が編集者にも喜ばれる場合がほとんどです。
また、便利グッズをたくさん集めるという観点も少し危険です。
機材の広告では、一見とても使いやすそうに紹介されていたりしますが、実際の運用では、現場ごとに細かいところに違いが出てきますし、可動域や機能が多く付いている機材は、便利さと引き換えに、重量や剛性を犠牲にしている場合もあります。
可能であれば店舗などで、直接チェックすることもお勧めします。
買い物をする際の当たり前なことを言っているだけに聞こえるかもしれませんが、欲しい機材が手を出しやすい価格帯で売っていると、比較を忘れてあれもこれもと手を伸ばしたくなってしまうものです。
というか、私がそうなので、、、
そのため機材購入は「予算」だけではなく、自分の「現場感」を考えて少しずつ増やしていくようにしましょう。
ワンオペ最小構成の考え方
カメラセッティングの一例として、基本構成を挙げます。
- ミラーレスカメラ本体
- レンズ
- カメラケージ
- NDフィルター
- 三脚
- 外部モニター
- マジックアーム or モニターマウント (モニター固定用)
- ガンマイク or ピンマイク(カメラには受信機)

ワンオペ体制、屋外対応、録音など、最低限ではありますが必要なものを揃えた状態です。
手持ち撮影をするには、モニターの装着場所は工夫する必要があります。
機材選びに自信がない、あまり時間をかけたくない、という方はこちらを参考にしていただければと思います。
この状態をベースとし、他に必要な要素があれば随時拡張していく形になります。
現場毎におさえるポイントは違うと思いますし、構成は常に変化していくと思いますので、以下のような考え方を持っていただければと思います。
※写真はセッティングの一例です。
移動が多い、時間がない
簡略化・または大容量バッテリーでバッテリーチェンジの手間を省く。
大容量バッテリーでバッテリーチェンジの手間を省く。
不安定な装着方法の見直し、ケーブルや端子の保護など、トラブルや余計な手間になりそうな要素は徹底的に排除する。
小型軽量化を徹底するなら、小型バッテリーを多く持参し、こまめにチェンジをするという方法もあります。

運用時間が長い
大容量バッテリーまたは、AC電源でバッテリー残量確認の手間を省く。
(その場合はケーブルの処理に注意)

音が重要
音の品質強化やバックアップ体制の構築。イヤホンなどでしっかり音を聴く体制をつくる。

また、機材が増えてくると、足すだけではなく削る判断も必要になります。
機材が増えるほど、トラブル、重量、判断負荷も増えますので、慣れや経験値がより必要になってきます。
新しく導入した機材を、同じ現場で複数運用することは非常に危険です。
1つの機材を増やす毎に、一気にリスクが増加すると考えていただいても差し支えありません。
ですので新しい機材を持ち込むのは、できる限り1つか2つくらいまでにしておくことを強くお勧めします。
まとめ
今回は、カメラのセッティングと考え方を中心にご紹介しましたが、まだまだご紹介し切れていない機材はたくさんありますし、照明や特機選びに関してまでは言及できておりません。
ちなみに照明機材に関しては、次回のお話が参考になるかと思います。
特機は練習も必要ですので、無理せず徐々に取り入れていっていただければと思います。
カメラマンが撮影現場で考えないといけないことはたくさんあります。
その思考を、無駄な機材に振り回されて阻害されてしまうのは大変残念ですし、仕事を失う可能性まであります。
機材は増やすことより、選ぶことの方が難しい分野です。
経験を積みながら、少しずつ自分なりの最適解を見つけていってください。
次回は、やはりここは欠かせない話題「動画のライティング」についてです。
北下 弘市郎(KOICHIRO KITASHITA)
映像・写真カメラマン・撮影技術コーディネーター
1986年 大阪生まれ。大学では彫刻を学び、写真スタジオのアシスタントを経て独立。2020年 株式会社Magic Arms 設立。音楽・広告・ファッション・アートなどを中心に、ムービー・スチル撮影を行う。撮影現場の技術コーディネートや機材オペレーターなど、撮影現場に関する様々な相談に対応する。古巣の株式会社 六本木スタジオにて、映像撮影の講師にも従事。