Road to 24fps !! 第6回 収録メディア 〜これがないと撮れません〜
〜写真カメラマンから動画カメラマンを目指す〜
みなさんこんにちは。Road to 24fps!! 第6回は、必携アイテム第2弾、収録メディアについてです。
4Kや8Kと高画質化が進み続ける中で、収録メディア問題は常にそれと連動してきました。Logの項目でも書きましたが、動画は、写真よりデータ量がはるかに多いため、収録メディアはより多く持っておかないといけませんし、場合によっては一度の撮影で複数のメディアを扱わないといけないこともあります。RAWデータともなれば、さらに速い書き込みスピード・大容量のメディアが必要になってきます。
写真の世界でも、CF・SD・mini・micro・XD・メモリースティック….etc、とカメラが進化する度に数々のメディアが世に出ては対応するものを何枚も買い続ける日々が、カメラマンにとっての悩みの一つでした。私もたまに機材の整理していると、ケースの奥から500MBくらいの古いメディアが出てきたりします(笑)
残念ながら動画もそこは同じですが、最近は写真と動画で同じメディアが採用されてきています。ここでは、ミラーレス系を中心とした近年主流のメディアのご紹介と、バックアップの話も含めてお話していきます。
メディアの種類と書き込みスピード
動画の記録メディアは使用するカメラによって違います。ここでは代表的なメディアをご紹介します。
SD (microSD)
採用機器:ミラーレスカメラ・アクションカム・Blackmagic Design Video Assist など
スチルカメラマンにはお馴染みの、一番多く採用されているメディアです。発売からの期間も長く、様々なブランドから販売されていますが、規格が色々あって複雑です。私もよくわかっていなかったので、以下に簡単にまとめました。
まず容量によって名称が変わります。下の図をご参照ください。
次に、書き込み・読み出しの転送速度です。「90 MB/S」などと小さめに表記されているものです。数値が大きいほど転送速度が上がります。
最後に本体に表記されているスピードクラスの規格です。スピードクラスには「スピードクラス」「UHSスピードクラス」「ビデオスピードクラス」の3種類があります。撮影中は常時書き込みを続けなければならないメディアにとって、バッファサイズや書き込み速度に対する確実性が必要です。そこで、動画撮影のために画質毎に確実にビデオ録画ができるように規定したのがこのスピードクラスです。
詳しく知りたい方は引用元をご参照ください。
重要なのは、各カメラ・機器がどの規格に対応したものが必要かを知っておくことです。特に、4K・6K・8Kと高画質データを撮影するには、それ相応のスピードが必要です。一つでもランクが下の規格だと、書き込みできません。メディアを買う前には、機器の仕様書をよく確認しておきましょう。
参考・引用元: SDアソシエーション 価格.com
CFast
採用機器:Canon 1DX markⅡ、 Blackmagic PCC シリーズ
こちらも写真畑の人にはお馴染みのCFカードそっくりのメディアですが、次世代規格でより高速になりました。サイズはCFカードと同じですが、採用している端子の形が全く違うので互換性はありません。旧規格のCFast 1.0 と新規格のCFast 2.0とがあり、後者の方が転送速度が上がっています。後述のCFexpressが発表されてから、採用するカメラがそちらに移りつつあります。
画像引用元: DELLWA CO LTD 株式会社アドテック
XQD
採用機器:Nikon Zシリーズ、SONY FX9・その他4K対応ビデオカメラなど
こちらもSDカードやCFカードに形状が似ていますが、互換性はなく大きさも異なるメディアです。CFastとほぼ同時期の、2010年11月にサンディスク・ソニー・ニコンにより発表された、同じくCFカードの次世代規格で、CFカードよりもスピード・容量が多く、CFastと採用先を二分する形で、ハイアマチュアからプロ機の間である程度広まったメディアです。
こちらも、サイズや形状が同じでより高性能なCFexpress TypeBが2016年に発表されてからは、徐々に移行しつつあります。ソニーからH・S・N・M・Gシリーズが発売されていますが、現在ではGシリーズを残して全て生産終了となっています。
画像引用元:SONY
CFexpress Type A・B
採用機器:SONY αシリーズ、Nikon Zシリーズ、Panasonic S1/S1R、Canon C300 MarkⅢ・R5Cなど
画像引用元: DELKIN DEVICES デジカメwatch
ちなみに大型シネマカメラのメディアは、、、
- SONY VENICE 2 → S×S & AXS
- RED V-RAPTOR → RED認定 CFexpress TYPE B
- ARRI ALEXA35 → CODEXコンパクトドライブ
と、ほとんどが専用設計の耳慣れない名前のメディアばかりですね。これらは、本体でのRAW収録が当たり前で高価なカメラばかりなので、高品質で安全性が高く、高速で大容量のものがどうしても必要になってしまうようです。
外部収録のメリットとデメリット
映像記録は、カメラ内部メディアのみでしかできないわけではありません。外部収録モニター(ATMOS Ninja・Shogunシリーズ)などを使って、外付け SSDに直に書き込むこともできます。カメラのHDMI・SDI端子から有線でデータを送り、モニターで確認しつつ同時に高品質なデータ収録が可能になります。最近発売されたカメラでは、外部出力データの細かな設定が可能なものが多く、場合によってはカメラ本体で収録するより高画質なデータ(RAWデータ含む)を出力できます。外部収録のメリットは、ProRes形式など使いやすいデータに変換しながら収録できたり、モニター一体型ではより大画面でLutを当てながらのモニタリングなど、様々な拡張性を秘めているところです。逆にデメリットは、モニターとカメラを繋ぐケーブルがHDMIの場合は接続部分を気をつけて扱わないといけなかったり、小型軽量が売りのミラーレスなどは重くなる分機動力が落ちます。また、別でバッテリーを用意しないといけなかったりと、気を付ける項目が増えます。
私も大半の撮影では外部収録モニターを付けています。特にミラーレスでの撮影では、HDMI→SDIへのクロスコンバートができるため、モニター出しに重宝します。また、カメラの本体収録データがバックアップになるので、二重の収録体制がとれるので安心です。
※本体収録データをあとでProRes変換した場合でも、ほぼ品質は変わらないからです。
ProRes収録の場合は、変換作業が無くなるためディレクターから喜ばれることが多いです。ただデータ量も大幅に増えるので、バックアップ時間が長くなります。収録形式は、その辺りを天秤にかけて決めています。
※ProResコーデックに関しては、次回ご説明します。
バックアップについて
撮影後のバックアップの方法も、現場のクオリティを上げる重要な要素です。HDDとSSDのどちらにバックアップデータを記録するかで、撮影後の動きが変わります。さすがにHDDとSSDの違いはみなさんもご存知かと思いますので割愛しますが、ポイントはデータの安全性とスピードになると思います。
万が一データが消えてしまった場合、データ復旧などで救出できる可能性が高いのはHDDです。USB-Cが主流の現在では、スピードは圧倒的にSSDに軍配があがります。また外部収録機器を利用すれば、外部収録と本体収録でデータサイズが異なるため、データ量が多いProResやRAWデータを本データとして納品し、少ない方の本体収録の圧縮データを予備データとして別で保存しておくということもできます。こうすれば、最悪本データに問題があった時にも、予備データで対応できたりします。
これらを踏まえて、データのバックアップをどのように取るかを考えていきましょう。
小話 現場と帰ってからのバックアップ
私の場合、現場では制作部やディレクターが持ち込むメディアに、撮影後すぐにバックアップを取ります。バックアップ時間をできるだけ短くするために、相手方には極力SSDを持ってきてもらうように伝えています。この時、ベリファイ機能のついたソフトを使ってバックアップを取ると、データ破損の確認もできてより確実かと思います。ちなみにHDDを持って来られた場合は、撮影後に数時間バックアップ待ちの時間が発生するので、場合によってはこちらでHDDを持ち帰ってバックアップすることもあります。データの高画質化が進んでいるので、こればかりは仕方ありません。4K60p以上のRAWデータなどは、一現場で数TBのデータになることもあるので、バックアップの時間も結構馬鹿にならないからです。
現場でデータ納品が完了した後は、時間があればその場で自分のSSDにバックアップor事務所に戻ってから保存用HDDにバックアップ、のどちらかで記録します。
メディアをフォーマットする場合は、撮影データが必ず2つ以上バックアップが取れたことを確認してから行うようにしています。この辺りは、みなさんの現場によって違うと思いますので、リスクヘッジとスピードを考えて行っていただければ問題ないと思います。
次回は、カメラの記録設定はとりあえず高画質な方で、、、となんとなく設定していませんか?実は記録メディアの節約にもなる!データの記録方式についてです。
北下 弘市郎(KOICHIRO KITASHITA)
映像・写真カメラマン・撮影技術コーディネーター
1986年 大阪生まれ。大学では彫刻を学び、写真スタジオのアシスタントを経て独立。
2020年 株式会社Magic Arms 設立。
音楽・広告・ファッション・アートなどを中心に、ムービー・スチル撮影を行う。
撮影現場の技術コーディネートや機材オペレーターなど、撮影現場に関する様々な相談に対応する。
古巣の株式会社 六本木スタジオにて、映像撮影の講師にも従事。